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作品名:ノンカカ国を滅ぼした月鏡の正体 作者:こみふい

第40回 40
リコアたちは先ほど雨宿りに使った水車小屋に再び戻った。中に誰もいないか確認しながら用心深く足を踏み入れる。黒い合羽からしたたり落ちた水滴がポタリポタリと床に落ちていく。
ミンピは鞄を床に置いた。300万シドもの札束が入っているのでさすがに重く、置いた時にズシっと音がした。その音がミンピをますます高揚させる。早速リコアが鞄の蓋を開けると確かに大金があった。
「すげぇ!初めてこんなにたくさんの札束見たぜ!」
ミンピが感激している。リコアはそこから100万シドを抜き取りミンピに鞄ごと残りの200万シドを渡した。
「本当にこんなにもらっていいのかよ。」
「当たり前だ。始めからその約束だろう?それにあんたの働きがなかったらこの金は手に入らなかったからな。」
「恩に着るぜ。これさえあれば借金が返せる。それどころかお釣りがくるぜ。」
「・・・・。」
リコアとスルが冷徹非情な鋭い目でミンピを見ているが当の本人はすっかり舞い上がっていてそのことに気づかない。それどころか妙案を思いついた。
「なぁ俺をあんたらの仲間に加えてくれないか?」
「俺たちの仲間に?」
「あぁ。こんなに楽して大金が手に入るなんてこんなおいしいことはない。」
「・・・そうだな、仲間に加えてやるよ。」
「本当か!?」
ミンピは目を輝かせた。対してリコアの目はまるで底が見えない深い闇の色。
「ただし50年後だ。」
「50年後?」
ミンピがリコアの答えを不思議に思っているとリコアは懐から拳銃を取り出し、おもむろにミンピに銃口を向けた。
ミンピは全く想定外の出来事に衝撃を受け息を飲んだ。戦慄が津波のように体を飲み込む。血の気が引いていく。喉がカラカラなのに脂汗は次から次へと出てきて止まらない。
「なっ・・・なんの冗談だよ!」
「冗談ではない。先に地獄へ行って待っていろ。」
「ま・・・っ!」
しかし次の瞬間。
バーン!!
銃口が容赦なく火を噴いた。心臓を貫かれたミンピはその場に倒れこんだ。リコアが悪魔のような冷酷無慈悲な視線でミンピの遺体を見下ろす。ミンピの亡骸は鞄の上に落ちた。スルは血も涙もない凍り付くような冷たい目でミンピの体を蹴り上げ鞄からどかした。そして鞄を拾い上げる。
「計画通りだな。」
スルが言った。
「あぁ。さて行くぞ。」
リコアたちは始めからミンピを殺すつもりだったのだ。1シドたりとも渡すつもりはなかった。ラパヌから金を引き出すために利用しただけ。
「で、これから月鏡を売りにパンジャ国に行くのか?」
「そうだ。月鏡さえ持っていれば俺たちのことを月族だと信じるのが分かったからな。」
リコアたちは計画通りに水車小屋の木の床を強引に剥がすと、ミンピの遺体を床下に埋めた。そして剥がした床を元に戻し遺体の隠蔽を図った。リコアとスルは残忍な笑みを浮かべながら水車小屋を出た。


一方、その頃、ラパヌは窓から満足げに雨を見ていた。
ピンポーン・・・・。
チャイムが鳴った。ワットが玄関に出て客人と何やら話こんだ後、ラパヌの所へ戻ってきた。
「旦那様。城から兵士の方がいらっしゃっています。」
「兵士が?何の用だ?」
「なんでも国王の御触れが出たとのことです。月族の村から月鏡を盗んだ者がハラレニに入国した可能性があるので、もし月鏡を見たら直ちに国王か兵士に伝えるようにと。それと万が一、月鏡の売買を持ちかけられたら決して購入せずにただちに知らせるようにとのことです。怖いですねぇ、月鏡を盗むなんて無謀なことをする者がいるんでしょうか。・・・旦那様?」
ラパヌは額に汗を掻きながら動揺している。その表情は硬い。
「旦那様、どうかされましたか?」
「へ・・・・兵士はまだいるか!?」
「はい、玄関先にいます。」
それを聞いたラパヌは勢い余って転びそうになりながらも急いで玄関に向かった。尋常ではないラパヌの慌てように兵士は逆に驚く。
「ラパヌどうした。」
「ついさっき月鏡を見ました!!」
「なんだと!?」
兵士は身を乗り出した。
「ミンピが月族を連れてきて月鏡を見せてくれたのです!」
「それは月族ではない。なりすましだ。」
「でも月鏡に触れていたからてっきり・・・。」
「その者は直接月鏡に触れていたか?」
「いいえ、銀箱に入れてあるのを見せてくれただけです。」
「それなら月鏡に触れたとは言えないかもしれん。それか呪い祟りの類をまったく信じない者の仕業かもしれん。」
「でもミンピが連れてきてくれた人に限ってそんなことはないと思うのです。現に雨は降ってきましたし。」
「なんのことかさっぱり分からぬ。とにかく今すぐ一緒に城へ来て国王に詳しい説明をしてくれ。」
「分かりました!!」
兵士とラパヌは大慌てで城へと向かった。
あとほんの少し早くラパヌの元に兵士が来ていれば300万シドも奪われることはなかった。何よりミンピが死ぬこともなかっただろう。不運とはまさしくこのことである。


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