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作品名:ノンカカ国を滅ぼした月鏡の正体 作者:こみふい

第37回 37
その頃、リコアたちは馬にまたがりハラレニの商店街を縫うように歩いていた。居酒屋でミンピと待ち合わせしているのでそこへ向かう。
ミンピと合流するとリコアはさっそくスルを紹介し、自分の後ろにミンピを乗せ計画通りにラパヌの屋敷へと向かった。
スルは道中落ち着きなくキョロキョロと周りを見渡している。スルの視界に様々な店の軒先が息つく暇もなく飛び込んでくるので目が離せない。
パン屋からは出来立てのパンの香りが、コーヒー店では挽きたての豆の香ばしい香りが漂ってきてスルたちを包みこむ。午前中にも関わらず魚屋も肉屋も野菜屋も皆活気に溢れていて通行人は元気な呼び込みにつられ店先を覗く。
「さすがハラレニ国は活気があるな・・・。」
スルが感心しながら呟いた。リコアも片眉を上げながらそれを認めた。
「そうだな、だからこの国を選んだ。この国は大富豪が多いからな。世界の裕福度で言えばパンジャ国が一位、ハラレニ国が二位といったところか。」
「それならなんでパンジャ国を狙わなかったんだ?一位の方が当然金持ちが多いだろう?」
「今パンジャ国は乾季に入っているからに決まっているだろう。今は雨が降らなくて当たり前なんだから雨乞いの儀式なんて必要ない。」
「あぁ、そういうことか。」
そこでリコアは急に険しい顔になり振り返ってミンピの耳元に囁く。
「それよりミンピ、手はずはいいな?」
「もちろんだ。ラパヌは俺の言うことならなんでも信じる。」
「だけどよぉ、俺たちが急に訪ねて月族だと名乗って信じてもらえるか?しかも300万シドも払うか?」
スルは疑心暗鬼だ。
「だから俺がいるんだろう。さっきも言った通り奴は俺の言うことなら疑うことはない。」
ミンピは自信満々に言い切った。その表情は実に悪辣なもので親友を騙すことになんら罪悪感を覚えていないようだ。
ミンピはリコア側に堕ちてしまった。

商店街を抜けたところに工場が立ち並ぶ大きな道がある。その道の先には大きな川が流れている。その川を挟むようにして田園風景がしばらく続く。あぜ道を30分ほど進み、見えてきた林の手前にある広大な土地がラパヌのものだ。そこまでは結構な距離がある。馬か馬車でないと移動は厳しい。
商店街を抜け、さぁこれからラパヌの元へと気合を入れた時だ。後ろを歩いている人たちの会話がふと耳に入って来た。
「おい、あれ見ろよ。西の方の雲が怪しくないか?」
「本当だ!あれは雨雲だ!ようやく雨が降ってくれるんだな!」
「あぁ良かった、これでほっとしたよ。畑はカラカラだったんだ。恵みの雨だ。」
喜びに溢れ弾む声に煽られたリコアたちは西の空を見上げた。驚愕し体を強張らせる三人。確かに西の空にどんよりとした黒い雨雲がある。
「なんということだ!!」
「雨が降ってきたら計画が台無しではないか!!」
リコアたちは激しく動揺する。これから金を騙し取ろうとする直前でひと月半ぶりに雨が降るなんてあまりに偶然過ぎる。
「とにかく雨が降らない内に屋敷に行こうぜ!」
ミンピが叫んだ。周りにいる人たちは何事かとミンピたちを見たがミンピたちは気にするどころではなかった。
「そうだな!」
三人は焦燥感に駆られながら必死で馬を走らせた。


30分後、リコアたちは水車がある小屋で雨宿りをしている。とうとう雨が降ってきてしまった。しかも本降りだ。
ザアアアアア・・・・。
久しく聞いていなかった雨音が辺りを包み込む。屋根や壁や道や草木が雨に濡れ、色彩を濃くしていく。乾ききっていた大地がおいしそうに雨を飲み込んでいく。それはもうごくりごくりと音を立てそうな勢いだ。
時折、バシャバシャと水が跳ねる音もする。傘も持たずに慌てて駆けて行く人が立てた音だ。ここのところの晴天続きで油断していたのであろう。
リコアたちは忌々し気に小窓から雨空を見上げていた。
「くそっ!あとちょっとだったのに!!」
スルは悔し気に地団駄を踏んだ。
「なんでこうなるんだよ!!金を奪い取る寸前で雨が降るなんてこれも神の仕業か。」
ミンピが頭を掻きむしりながら呟いた。それを聞いたリコアは突然苛立ったように声を荒げた。
「馬鹿言え!ただの偶然だ!」
「しかし・・・。」
こんな偶然などあるか?とミンピとスルは内心納得がいかなかったがそれを口に出すことはしなかった。
スルは悩んでいても仕方がないとすぐに考えを切り替えた。
「なぁリコアどうする?もうラパヌとかいう男の元にはいかないだろう?月鏡を売り飛ばすなら出来るだけ大富豪な方がいいしな。パンジャ国へ行こうぜ。」
「・・・・。」
だがリコアは黙ったままだ。スルの言葉に敏感に反応したのはミンピだ。
「ちょっと待て!ラパヌの所へ行かないなら俺はどうなるんだ!?月鏡を売り飛ばした分け前は貰えないのか!?」
ミンピが焦燥感を露わにしながら問えばスルは何を今さらと一瞥し鼻で笑った。
「当たり前だろう?お前は何もしていないんだから分け前なんてあるはずがないだろう。諦めるんだな。」
「そんな!!」
「そんなと言われてもな。じゃあラパヌは1億シドで月鏡を買うか?」
「1億シド!?そんな大金で月鏡を売り飛ばす気なのか!?無茶だ!」
「何が無茶だよ。月鏡を生で見たらそれぐらいの金を出す物好きはいるさ。なぁリコア。」
だがリコアは思案顔で雨空を見つめている。ミンピは諦めの境地でため息をつきながら
「・・・ラパヌにはそこまでの金は出せないと思う。第一、奴は月鏡を欲しがるような人間ではない。」
「じゃあ、この話は終わりだ。俺たちはパンジャ国に行ってこれを売り飛ばすことにするか。なぁ、リコア。」
スルは捕らぬ狸の皮算用でほくほく顔、それに対してミンピはすっかり生気を失った顔で落胆している。これで借金を返すあてがなくなってしまった。
だがリコアだけは他の二人とは違う考えを持っていた。意味ありげに口元を三角に吊り上げる。
「売り飛ばすのは簡単だがやはりその前に本当に俺たちが月族に見えるか試してみたい。」
「どういう意味だ?」
スルは不審気に聞き返した。ミンピもわけが分からずキョトンとしている。
「ミンピ、あんたは当初の計画どおりに俺たちをラパヌの元へ連れていってくれ。」
途端にミンピの表情が生気を取り戻す。
「もちろんだ!!」
これに焦ったのはスルで。
「ちょっと待ってくれよ!雨は降っちまったんだ。雨乞いの儀式なんて必要ないんだからいかに馬鹿でも300万シドも払わないって。」
「この雨を俺たちの手柄にすればいい。」
「・・・どういうことだ?」
スルとミンピにはまだ話の内容が見えない。


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