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作品名:ノンカカ国を滅ぼした月鏡の正体 作者:こみふい

第32回 32
サウロがウソルーを殺害した理由が分かった。
サウロは三日前に最愛の妻を亡くしたのだ。
サウロの妻は病弱で医者にかかっていた。だがノンカカ国で内乱が起き医師たちは財布だけでなく命まで奪われそうになった。これ以上ここにいたら危険だと察した医師たちはこぞって他国へと移住をしたのだ。
それでもサウロの妻の担当医師は妻を見捨てずここに留まっていてくれたがとうとう暴徒の魔の手がその医師にも及んだ。医師はこれ以上この国にはいられないと決心しサウロに事情を説明してサウロ夫妻の元から去っていった。
「自分はそれでも妻を見捨てた医師を恨む気になれませんでした。だってこのままこの国にいても医師は殺されてしまうでしょう?逃げたくなるのは当然だ。妻は治療を受けられず死んでしまったけど悪いのはすべてウソルーですから。だから自分はウソルーを処刑しました。妻の仇をとったんです。」
サウロはそう告白して泣いた。
ピアたちはサウロを責める気にはなれなかった。ウソルーを処刑したい気持ちは自分も同じだったからだ。アカディが言っていたようにサウロがやらなかったら自分がやっていただろうと思った。
すると国王は突然高笑いをし始めた。
「これは愉快だ!奴を処刑する手間が省けた。これで神の怒りも治まるだろう。皆にウソルーが死んだことを伝えろ。少しは気が晴れて暴動も治まるだろう。」
まるで他人事のように国王は言う。ウソルーが死ねばすべては元通りになると思い込んでいるかのようだ。
ピアはこれ以上この国王についていけないと思った。もう限界を超えた。
「この長引く干ばつもモリア石があんなことになってしまったのも神の怒りのせいではありません。」
「・・・なんだお前、我に意見するつもりか。」
「はい。」
「なに!?」
国王の顔色が不穏なものに変わった。
「ピアよせ!」
他の側近たちがピアを止めようとするがピアは国王に斬られることは覚悟の上で自分の思いを吐露する。
「例え干ばつが起こり飢餓に襲われようと隣国がこの国に救いの手を伸ばしてくれたらこれほどの惨事はま逃れたかもしれません。」
「・・・。」
「しかし我らは隣国を蹂躙し力づくで全てのものを奪った。恨みをかうのは当然です。自分たちから全てを奪った者に救いの手を差し伸べたいと思うはずがない。」
「・・・何が言いたいのじゃ。」
国王の目が寒気がするほど鋭く据わる。
「自業自得です。」
「貴様!!」
国王は憤慨しピアの胸倉を掴んだ。ピアは国王の逆鱗に触れたのだ。しかしピアは動じない。
「私を始末したければすればいい。それで国王の気が済むのならどうぞ。しかし私を殺したところでノンカカ国は復活しません。」
「ぐっ・・・!」
「我々はあまりにも欲張り過ぎた。あまりにも他国から奪いすぎた。そのせいでノンカカ国が窮地に陥ってもどこの国も援助の声を上げなかった。もちろんそれぞれの国の政治、内政に色々な事情を抱えており他国のことまで気を回すことは出来ないという事実もあります。国王が他国に援助を求めなかったのはそれが分かっていたからですよね。」
「援助を求めなかったのではない!援助を拒まれたのだ!」
「戦争によって家族や恋人や友人を殺され生き残った者たちは他国へと命からがら逃げだしました。その人たちは援助を要請されても断るでしょう。その周りにいる人たちも。」
「だからなんだのだ!この世は弱肉強食だ!弱き者が駆逐され強き者が生き残る!それがこの世の理だ!綺麗ごとだけでは国は繁栄出来ない!お前も戦果の恩恵を受けていただろう!我を責める資格などない!」
「そうですね。この世は弱肉強食、私もそのことに異論は唱えません。だから我々は弱き者だから滅びるだけ、他国は強き者だから生き残る。それだけです。」
覚悟を決めた怯えのない真っすぐな眼差しで国王を見据える。
ピアの胸倉を掴む国王の手から力が抜けた。そして脱力するように椅子に崩れ落ちる。
「我が弱き者だと・・・。そんなはずがない・・・!」
国王は頭を抱えた。ピアたちが初めて見る国王の弱き姿。

国王に意見したピアは処刑されることはなかった。もはや国王の言うことを聞く者などいないからだ。側近も兵士ももうすでにノンカカ国を諦め国王を見捨てていた。
ピアは国王の命令により国外追放になった。だがピアはそのことをこれっぽっちも残念がる気持ちはない。ノンカカ国に未練などないのだ。それどころか国王から受けた屈辱の日々から解放さえて今は心がすっきりしている。こうしてピアは他国で第二の人生を送ることになった。

ノンカカ国はもはや虫の息。国民の他国への流失は止まらずどんどん人口を減らしていく。畑を手入れする者はいなくなり畑は荒廃し、街から人の気配が消えた。暴徒化した国民たちも母国の再建を諦め移住したのだ。人が住まなくなった家は荒れ果て朽ちていく。
それでも国王は自国を諦めきれずに数少ない側近たちと城に留まっている。ハラレニ国からの同盟の返事を待っているのだ。今やハラレニだけが最後の命綱。逆に言えばハラレニと同盟を組めることが出来れば起死回生の機会はある。

その頃ハラレニ国王は家臣の報告を待ちかねていた。ノンカカ国に関しての報告ではない、空族に関しての報告だ。
「ええい!まったく空族はどこに雲隠れしているのじゃ!なぜ見つからぬ!」
「半年前に空族の血を手に入れましたがまだ国王の背に翼の気配はありませんか。」
「ない!まったく翼は生えてこないぞ。いったいどれだけの空族の血を飲めば翼を手に入れることが出来るんだ!」
ハラレニ国王の苛立ちは募るばかりだ。焦った家臣は話を逸らすように
「ところで国王、ノンカカ国との同盟はいかがいたしましょう?」
「ノンカカ国との同盟?なんだそれは。」
国王は空族のことで頭がいっぱいでノンカカ国のことはすっかり忘れていた。
「一年前にノンカカ国からウソルーと他2名の者が同盟の申し出の親書を持ってやってきたではありませんか。その返事の期日が一週間後です。」
「あぁ・・・そんなことあったな。まぁノンカカ国がどうなろうと知ったことではない。どうせもうあの国は崩壊している。国民たちは他国へ逃げ出し国中が荒れ果てそこかしこで閑古鳥が鳴いているらしいな。」
ハラレニ国王は愉快そうに笑いながら言った。
「事の始まりがあのウソルーとかいう者が月鏡を壊したからだそうです。」
「その話は我も聞いた。今や世界中がその話を知っているぞ。月鏡を壊すなど愚かなことをしたものだ。この我さえ恐ろしくて月鏡には手を出さぬとうものを・・・。」
ハラレニ国王は身震いした。
「元凶であるウソルーは死んだようですがいまだにノンカカ国の干ばつは続いているようです。このままだと砂漠化するのは時間の問題、それに側近や城に仕えていた者たち、兵士たちもノンカカ国王に嫌気が差して次から次へと国から脱出しているようです。もはや国王の元に残っているのは二、三名の側近だけと聞きました。」
「そのような話は興味ない。」
「はい?」
「ノンカカ国が滅びようとどうでもいいと言っているのだ。どうせあの国は終わりだ。終わりなら終わらせておけばいい。むしろ渡りに船ではないか。元からあの国は目障りだったしな。はなから同盟を組む気などさらさらなかった。」
そう言い放つとハラレニ国王は顔の前をうろうろするハエを追い払うかのような鬱陶しげな仕草で家臣を呼び寄せ
「筆を持ってこい。親書を送る。」
「なんと返すのですか。」
「『同盟の件はお断り致す。ノンカカ国は国としての呈をなしてないようだし同盟を結ぶことにこちらは何一つメリットを感じられない。』とでも書いていくか。」
国王は狡猾な笑みを浮かべながら筆を滑らせた。


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