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作品名:ノンカカ国を滅ぼした月鏡の正体 作者:こみふい

第19回 19
レンドの不安は長老にも手に取るように伝わる。
「レンド殿、不安がることはない。神をそう恐れなくてもよい。もちろん神への畏敬の念は失ってはならぬ。だが神は懐の深い存在じゃ。むやみやたらと恐れ過ぎては神も悲しむぞ。」
「しかしお言葉ながらノンカカ国が辿った結末からして月鏡を破壊したウソルーとかいう男だけに罰があたったとは到底思えません。」
「ノンカカ国の場合、ウソルーだけでなく国王も多くの国民たちもウソルーと同じ思想の持主だったようだ。隣国に攻め入っては略奪と恐怖による支配を繰り返す。国王の愚行を止めるどころかそれを良しとしていた国民たち。もっとも国民からしてみれば自分たちに膨大な富をもたらす国王は英雄だったのかもしれぬ。それが例え隣国から略奪した富だとしても富に名前はついておらぬからな。ノンカカ国で穏やかであったのは農民だけじゃった。その農民たちが一番被害を被ったのは残念だった。当時我ら月族はノンカカ国の農民たち、そしてノンカカ国にもいるであろう善良な市民の為に必死で雨が降るように祈ったものだが力及ばずでとうとう雨は降らなかった。それがあのような結末になるとは・・・。」
長老は生で経験したのでその時のことが昨日のことのように脳裏に浮かびあがり苦渋の面持ちになった。心苦しそうだ。
「ではなおさらハラレニの国民のことが心配です。月鏡を盗んだたった二人の愚か者の為にハラレニが滅ぶなどあってはならない・・・!」
レンドは胸の内に立ち上った怒りの炎を滲ませながら呟いた。
「ウソルーは悪意を持ってわざと月鏡を破壊した。しかしペラダとトランは盗んだだけだ。何よりハラレニの国民たちに何の落ち度もないし皆穏やかじゃ。神はハラレニ国を滅ぼすことはないと私は信じている。」
「長老は盗んだだけとおっしゃいますがそれでもとても愚かなことですよ。」
ライトルは長老に苦言を呈した。
「そうじゃな、すまぬ。私が言いたいのは他人の信仰を無下に踏みにじるなということじゃ。信じるのも自由、信じないのも自由。だがウソルーのように他人の信仰を軽蔑し壊すことだけは絶対にしてはならぬ。ノンカカ国があのようなことになったのは他人の信仰を踏みにじったからだ。そこが今回の件とは違うところだ。」
「長老にとって月鏡が奪われたことは信仰を踏みにじられたも同然ということにはならないのですか?」
レンドは長老の言葉に救われながらもふと疑問に思ったことを尋ねてみた。
「信仰を踏みにじられたか・・・。分からぬ。そうかもしれないしそうでないかもしれぬ。ただ一つだけ言えることは月鏡がなくとも我らは祈り続けるということだけじゃ。我らが月鏡を取り戻したいと思うのは先祖代々受け継がれてきた大切なものを次の時代にも受け継ぎたいからじゃ。月鏡にどれほどの恐ろしい伝説があろうと我ら月族にとっては先祖が大切に守り続けたお守りのようなもの。そのお守りに一国を滅ぼすような力があるのかどうかは分からぬが少なくとも私は神は寛大であると信じておる。」
長老はハラレニ国が滅ぶようなことはないと言いたいのであろう。それはレンドにも伝わった。幾分遠回しな言い方であるが。
シュンケはレンドと長老の会話を聞いている内にその月鏡というものの正体が知りたくなった。長老に問う。
「長老、その月鏡というものは一体どのようなものなのですか。」
「月鏡とは祭壇に祀られている鏡じゃ。我らの祈りを神に届ける役目を担っている。先祖代々受け継がれている大切な鏡。」
「そのような大切な鏡を盗まれてしまったというわけですか。」
「そうじゃ。それでこれからライトルとルナに月鏡を取り戻しにハラレニ国へ行ってもらうことになっておる。」
レンドは今までの流れを知り、なんとしても月鏡を月族の村へ戻したいと思った。
「ですが長老、我が国はとても広い。二人だけで探すのは困難でしょう。私も捜索に協力させてください。犯人たちの人相を教えていただければそれを国王にも伝え、国中で警戒にあたり我ら兵士も捜索に加わります。」
「おぉ!!」
月族の間に歓声があがった。感激の声だ。ハラレニ国中が月鏡を探すことに協力してくれることになれば鬼に金棒、百人力だ。長老もその申し出を快諾した。
「それはありがたい。感謝する。我々は月鏡を使って探し出す。そなたらは犯人の人相を頼りに捜索しておくれ。」
「月鏡を使って?ですが月鏡は盗まれたはずではないのですか?月鏡は二つあるのですか?」
「いや、月鏡は一つしかない、だがその破片が手元にある。ルナ、月鏡をお二人に見せてあげなさい。」
「はい。」
「え!?」
ルナは驚くレンドたちの目の前に月鏡の欠片を差し出した。
「これが月鏡・・・。」
レンドとシュンケは感激して言葉を失った。虹色の輝きが憂いを帯びながら揺らめいてる。
「これでも普段の輝きからしてみれば半減しているのじゃ。」
「これで半減!?」
レンドは驚きの声を上げた。こんなにも美しいのに普段はこの倍は輝いているというのか。本来はどれほどの輝きなのかそれを想像すると身震いがした。得体の知れなさに恐ろしさを感じる。するとルナが説明しはじめた。
「この欠片はペラダたちが謝って落としていったものと思われます。祭壇の所に落ちていました。」
「欠片ということは犯人たちは月鏡を落として壊してしまったのだな。なんと罰当たりなことをしたものだ。」
何も知らないシュンケが憤った。
「いいえ、月鏡はわけあって50年前から割れています。これはその欠片です。」
「そうなのか。そういえば先ほどウソルーという者が破壊したとか言っていたな。」
「はい。」
ルナの頬はシュンケと会話するにつれどんどん赤くなっていく。そこでライトルは提案した。
「長老、シュンケ殿に月鏡のことを詳しく話してみてはいかかでしょう?ノンカカ国の悲劇のことも。」
「うむ。そうしたいところだが話せば長くなる。今は月鏡を取り戻すことが先決。話すのはその後でもいいではないか。とにかく早く月鏡を探しだそう。」
「そうですね、失礼しました。」
ライトルはすぐに納得した。
シュンケはもっと月鏡のことを知りたくなったしノンカカ国の事も知りたいが確かに今はそれどころではないようだと諦めた。レンドは月鏡の破片をまじまじと見つめながら
「その破片を使ってどのように探し出すのですか。」
「共鳴を利用するのじゃ。」
「共鳴?」
そこで月鏡の共鳴についてレンドたちに詳しく説明した。
「そんな現象が起きるとはなんという奇跡。まさしく神のなせる技!」
レンドは感激続きだ。だがレンドがそうなるのも無理はない。これぞまさしく神が成せる業。人間には到底作り出すことが出来ない奇跡の賜物。
「共鳴し合えるのは半径1kmか・・・。」
シュンケは呟いた。
長老は何気なくシュンケの翼を見た。山のように大きくて白鳥のように白く美しい翼。地上だけでなく上からも探せば何倍も効率が跳ね上がるだろうなと考えた。地上には障害物が多いが空から探せばダイレクトに共鳴が届く。そして思いついた。


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