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作品名:ノンカカ国を滅ぼした月鏡の正体 作者:こみふい

第15回 15
オレンジ色の鈴のような丸い太陽が東の空を桃色に染め上げ、小鳥たちは生まれたての新鮮な朝の香りをついばむ。この日の朝もいつもと同じように始まるはずだった。
しかし今日はいつもの朝とは違った。
「きゃああああ!!」
突如、朝の空気を引き裂く悲鳴が月族の村に響いた。悲鳴はライトル夫妻やルナ、長老、月族たちを無理やり叩き起こした。
「なんだ!?」
「何があったの!!」
ライトルとソシアナは顔を見合わせ、急いで布団から飛び出て外出着に着替えた。
「見てくる!」
「私も行くわ!」
「先に行くぞ。」
「分かった。」
ライトルは外へ飛び出した。悲鳴があがったのは祭壇の方だ。他の村人たちも次々と家から飛び出して不安気に祭壇の方を見ている。
「ライトルも悲鳴を聞いたか?」
「あぁ、祭壇の方からだ。行こう!」
「あぁ!!」
月族たちが集い慌てて駆けていく。辿り着いた先で見たのは祭壇で膝をついてうなだれているミーシャの姿だった。
「どうしたミーシャ!何があった!」
ミーシャは泣きじゃくりながら震える指で天蓋の中を指さした。
「!!?」
指先に導かれるようにその先を見た皆は目を見開いた。驚愕のあまり声も出せない。
あるはずの月鏡がない。
「なんてこと!!」
「月鏡はどうした!?」
顔面蒼白になり、膝から崩れ落ちる者、呆然自失する者、絶望のあまり気絶しそうになり隣にいた人に体を支えられている者、様々だ。そこへ長老がやってきた。
「何事じゃ。」
「長老、月鏡がありません。」
ライトルは焦る自身を落ち着かせるかのような抑制を効かせた冷静な声で答えた。
「なんと・・・!!」
長老の表情も驚愕のあまり硬直してしまった。
「月鏡がないなどありえぬ。誰かに盗まれたか。」
「月鏡を盗むなど恐れ多い。そんな罰あたりなこと出来ません!」
ソシアナが憔悴しながら答えた。だがライトルはふと何かに思い至ったようだ。
「あいつら!!」
ライトルは突然走り出した。それを見た他の者は何事かとライトルの背中に声を掛ける。
「おいライトル!どこに行く!」
「俺たちも後を追おう!」
「そうだな!」
ライトルはリコアたちが寝泊まりしているはずの宿に飛び込んだ。しかしそこはものけのからだ。
「やっぱり!!」
ライトルは悔しそうに拳を握りしめ自分の太ももを叩いた。念のためにと家中を探し回った。3部屋とリビングとトイレしかない平屋だ、そうそう隠れることが出来る場所なんてない。そこへ追いついた他の者たちも飛び込んでくる。
「どうしたライトル。ここはソラピアダ村から来た者が泊っているは・・・まさか!」
皆気づいたようだ。
「ペラダとトランの仕業だ。奴らが月鏡を盗んだ。」
ライトルが怒りを滲ませた低い声で答えた。
「なんだと!?でも何のためにそいつらは月鏡を盗んだんだ?月族でない者が月鏡に触れるとどうなるか知らないのか?」
「知っていたら盗もうなんて大それたことをするはずがない!」
「神の怒りをかってただで済むはずがない。ノンカカ国の二の舞だぞ!」
皆が恐れを抱き不安を口にした。
「まだこの村のどこかに隠れているかもしれない。皆で手分けして探そう。だが相手がどんな反撃をしてくるか分からない。一人で行動しないで必ず誰かと組むように。女性と子供たちにはソシアナの所に集まるように伝えてくれ。」
「分かった。」
男性陣は手分けして村中を捜索する。女性陣は万が一の為にとソシアナの元へ集められた。
ソシアナは月族の出身者ではない。他国出身の女性だがライトルと出会い恋に落ち月族の村へ嫁いできた。
なので体には月族である証の月形のあざはない。だが武道家の元に生まれ幼い頃から武道を叩きこまれたので女性ながら相当腕が立つ。だからもしリコアたちがまだこの村にいたとして女性たちを人質にして逃亡を図らないようにソシアナの元へ集めたのだ。

だがどれだけ村中を探してもリコアたちは見つからなかった。その時だ。
「ライトル!皆!これを見てくれ!!」
リョウの大声が村中に響き渡った。皆は何事かとリョウの方へ集まっていく。リョウは塀の下を指さした。塀の下に大人一人通れるくらいの穴が開いていて外へとつながっている。皆が絶望し諦めの境地でため息をついた。
「奴らはここから外へ逃げたのか・・・。」
「ではもう村にはいないということだな。」
「もう終わりだ・・・。」
嘆きの声がそこかしこから上がる。その顔にはどれも生気がない。だがその内の一人が突然、荒々しく声を上げた。
「ルンダ!リョウ!昨晩の見張りはお前たちの番だったよな。奴らに気が付かなかったのか!」
ルンダはそれに反論する。
「そんなこと言ったって俺らが見張っているのは獰猛な獣たちの村への侵入を防ぐためであって、中から外へ行く人間なんて注意して見ていないよ!それにここは櫓から死角に入っているから見えないし。皆もそうだろう!」
「それはそうだが・・・」
そこでライトルが間に割って入った。
「ルンダとリョウを責めるのはやめてくれ。元はと言えばペラダとトランの正体に気づけなかった僕の責任だ。許してくれ。」
「ライトル、あんたの責任でもない。ルンダとリョウの責任でもない。雨乞いの儀式を依頼しに来た者がまさか月鏡を盗みに来たなんて誰も考えやしないさ。」
「そうだな・・・。ルンダ、リョウすまなかった。」
責めた者が謝った。ルンダとリョウは「いや、いいよ。」と責めた者の肩をぽんと叩いた。
皆は失意のまま力ない足取りでソシアナたちがいる場所へと向かった。


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