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作品名:ノンカカ国を滅ぼした月鏡の正体 作者:こみふい

第14回 14
リコアは宿に戻りトンネルを掘れるような道具はないかと部屋中を探した。しかしそのようなものはない。
「ちっ!」
忌々し気に舌打ちすると外に出て辺りを探し回った。真夜中とはいえ月光が辺りを照らして明るいので何があるか見えやすい。だがそれでも見つからない。
諦めかけたその時、案内された風呂場でスコップらしきものを見かけたのを思い出した。あれは使えると思ったリコアは大急ぎで風呂場へと駆けて行った。
案の定、風呂場近くにある物置小屋の壁に大きなスコップが立てかけてあった。風呂場を作った時に使ったものか、湯加減を調整する為に使っているものかは分からないがこれは重宝する。
「あったぞ!」
リコアは大喜びでスコップを手にし宿の裏手に回った。そしてさっそく塀の下の土を掘り始めた。

一方、スルは祭壇を目の前にして立ちすくんでいた。いくら護符を持っているとはいえ月鏡に触れるのは怖い。体中が恐怖で震えている。でもやるしかない、後戻りはできないのだ。大金は欲しいし、何より月鏡を持って行かなかったらリコアに何をされるか分からない。スルは覚悟を決めた。
一歩一歩恐る恐る祭壇に近づく。月鏡が眠る銀箱を目の前に拳を握りしめた。やたら喉が渇くのでごくんと唾を飲みこむ。
時折生温かい夜風が吹いてきては絹のカーテンを揺らす。それが自分の愚行を止めようとしているように思えてきてスルは怖気づいた。
だがいつまでこうしていても埒は開かない。それにいつ月族に勘付かれるか分からない。スルは体中に脂汗を掻きながら震える手で銀箱に触れた。
「!!」
触れた瞬間、体を強張らせたが何も変化は起こらない。体のどこにも異変は起こらないし、辺りを見渡しても静寂を保ったままだ。かがり火が一瞬激しく燃え上がったような気もしたがそれは風に煽られただけのようにも思えた。
とりあえずスルは安堵のため息をついた。急いで銀箱を自分の懐に収めた。そして一目散にリコアがいる場所に向かって駆けだしたその時だ。
焦ったあまりに祭壇の石畳に躓いてしまった。
「あっ!!」
スルは転倒した。懐から堕ちた銀箱が地面に当たって蓋が外れた。中から月鏡が零れた。
「!!!」
スルは声にならない悲鳴を上げた。虹色に輝く月鏡を見て恐怖のあまり体が硬直する。下心がない者が月鏡を見たらその美しさに感嘆するばかりだがスルはこれから盗もうとしているのだ。この世のものとは思えない虹色の鏡はスルに恐怖しか与えなかった。体中の血の気が引いていく。
しかしここで怯んで盗むことを諦めたらリコアからどんな仕打ちをされるか分からない。何より大金が欲しい。スルは冷や汗をびっしょり掻きながら震える手で月鏡を拾った。そして急いで銀箱に収めた。
だがこの時、月鏡の欠片の一つを拾い損ねてしまった。それに気づかず慌てて銀箱を懐にしまい急いでリコアの元に向かった。

リコアは一心不乱で穴を掘っていた。その姿を見つけたスルは
「リコアやったぞ!」
「馬鹿!!大声を出す・・・!」
リコアは叱りかけて息を飲んだ。スルの懐に月鏡があるからだ。
「お前、なんともないか?」
リコアは恐る恐る尋ねた。
「見ての通りなんともない、体もどこもおかしくないぞ。」
スルは得意げに答えた。
「それは良かったな。護符が効いているのだろう。とりあえず月鏡はずっとお前が持っていろ。」
「えっ!?」
スルは面食らった表情でリコアを見つめた。
「ずっと俺が持っているのか?」
「そうだ。俺はトンネルを掘るので忙しいし、何よりお前は護符が効いているようでなはいか。護符にも持つ者との相性があるんだ。誰にも効き目があるとは限らない。幸いお前と護符は相性が良いみたいだ。お前が持っていた方が安全だ。」
リコアは口八丁手八丁でスルを月鏡の運び役にしようとしている。スルは護符との相性なんて聞いたことないが現にこうして何事もないのだから大丈夫かもしれないとすっかりリコアに言いくるめられてしまった。
「分かった・・・俺が持っている。」
「頼むぞ。それが大金に化けるんだから絶対になくすなよ。」
「あぁ・・・。」
スルは月鏡を大切そうに自分の鞄の中にしまった。リコアはそれを見てにやりと口元を歪める。
「お前は誰かこないか辺りを見張っていろ。」
「分かった。」
リコアに命令されるままスルは辺りを見張り始めた。リコアは無我夢中でトンネルを掘った。
それから一時間ぐらい経った頃だ。
「出来た!」
リコアは汗だくの額を拭いながら密かに歓声を上げた。スルはどれどれとトンネルを覗く。大人一人だけ通れる深さと大きさだ。
「行くぞ。」
リコアが合図を送った。スルは深く頷いた。始めにリコアがトンネルに体をもぐらせくぐり抜け、次にスルがくぐった。
体は塀の外だ。月族の村から見事脱出出来た。
二人の顔も服も土まみれだが満面の笑みを浮かべている。あふれ出る喜びを押し殺しながら月族の村のすぐ近くにある林へと向かった。そこの木に自分たちがここまで乗って来た馬を繋いでいるのだ。馬たちはリコアたちの姿を見るとヒヒヒーンといなないた。
「しー!!鳴くな!」
リコアとスルは慌てて馬の傍に駆け寄った。
「頼むから静かにしてくれ。」
木から手綱をほどき二人は馬に飛び乗った。馬の腹を蹴り「行け」と合図を送る。馬は勢いよく走り出した。
リコアたちはまんまと月鏡を盗んだのだ。
その時である。突然強い風が吹いて櫓にいる月族たちの服を揺らした。
「おっ、なんだ。」
見張り役の一人、ルンダは瞼を閉じ風から顔をそむけた。そむけた先でなにげなく瞼を開くと何かが走り去るような影を見たような気がした。ルンダは驚いてもう一人の見張りであるリョウの袖を引っ張った。そして影が動いた方を指さしながら
「おい、お前あれ・・・。」
「なんだ?なにか見えたのか?」
リョウも目を凝らして指が差された方を見るが特に何も見えない。木々の枝が風に揺れているだけだ。
「何も見えないが。野犬かなにかではないか?」
「あぁ・・・。そうかもな。」
ルンダもそれ以上深く目で追うこともなく門の方に向き直った。


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