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作品名:ノンカカ国を滅ぼした月鏡の正体 作者:こみふい

第13回 13
時計の針は23時を回っている。リコアたちはとっくに食事を終えていた。ソシアナが皿を下げに来た。スルはルナが来ないのかと内心がっかりしたがソシアナが去るのを見届けてからリコアと共に身の回りの物を整理して宿を出た。
身を隠しながら祭壇へと向かう。祭壇では月族たちが正座をしながら月鏡に向かって祈りを捧げていた。
夜中の零時を迎えようとした時だ。突然長老がすくっと立ち上がった。
「今宵の祈りはここまでだ。ご苦労であった。明日の祈りに備えて今夜はゆっくり休んでおくれ。」
「はい、長老。」
「ではまた明日。」
皆がゆっくりと立ち上がりそれぞれの家へと戻って行った。365日毎晩この繰り返しだ。
「では月鏡をお戻しします。」
ライトルはそう言うと長老は深く頷いた。ライトルは慎重な手つきで銀箱の蓋を閉めた。そしてライトルと長老もそれぞれ自分たちの家へと戻っていった。
今、祭壇の周りには誰もいない。かがり火だけが灯されているだけだ。その様子を木の陰から盗み見していたリコアは怪訝そうに呟いた。
「おかしいな・・・。祭壇には見張りがついているという噂だったが誰もいないぞ。これは何かの罠か?」
「でも見張りがいないなら好都合ではないか。眠り薬を盛る手間が省けて良かったじゃないか。」
「それはそうだが。」
リコアは後ろを振り返って櫓の方を気にしながら
「祭壇に見張りがいなかったとしてもあの櫓に見張りが二人いる。あいつらの目を盗んでどうやってこの村から出るかが問題だ。」
「そんなの簡単だ。櫓の下にそっと近づいて櫓の足元に火を放ってしまえばいい。そうすれば奴らは降りてこられないだろう?火あぶりになるだけだ。」
スルが物騒で残酷なことをさらっと言ってのけた。一方、リコアはこの男はなんて頭が悪いんだと呆れる。
「火をつけたら大騒ぎになって他の月族たちが集まってきてしまうだろう。そんなことになったら俺たちはどうやってここから抜け出すんだよ。そんなことも分からないのか。」
「言われてみればそうだな。」
スルは困り果てている。リコアはスルを一瞥し
「お前は頭は悪いが視力だけは良いんだったな。見張りがどこを見ているかちょっと見てくれ。あくまでもこちらに気づかれないようにな。」
「了解!」
スルは隠れている木から体を離し、低い姿勢とりながら櫓の方を見つめた。
「奴らはこちらは見ていないぞ。門の方ばかりを見てやがる。」
「そうか・・・。やはり村に侵入してくる猛獣に注意しているんだな。となると他の場所にはさほど気を配っていないということか。」
リコアは考えた。このまま見張りが眠りに入るのを待つか?でもいつ眠る?そもそも寝たら見張りにならないではないか。見張りというものは交代制でやるものだ。そのタイミングを見計らって脱出するか。
しかしそのタイミングを待っていたらいつになるか分からない。夜が明けて月族が祭壇に行き月鏡をないことを知ったら大騒ぎになる。その前にここから脱出したい。この村の周りは高い塀で囲まれている。あの川を潜って逃げるか?リコアはふと地面を見た。土だ。そこで思いついた。
「穴を掘るぞ。」
「穴?」
「あぁ、塀の下の土を掘ってトンネルを作る。大人一人が通れるくらいの大きさでいい。そこを通って外にでる。」
「!!なるほど!さすがはリコア!」
スルは感心しているがこんなことは誰だって思いつくことだ。こんなことで感心されてもちっとも嬉しくない。リコアは鬱陶しそうに眉を顰めスルに思いもよらぬ命令を下した。
「いいから、お前は月鏡を盗んで来い。」
「え?俺が?」
スルの表情が一転し、気の毒なくらいに青ざめていく。
「そうだ、お前が月鏡を盗んでいる間に俺はトンネルを掘る。」
「俺一人で月鏡を盗むのか!?月鏡の呪いを俺一人で受けろというのか!!」
スルはかなり憤慨している。
「心配するな、護符を持っているだろう?それがあれば大丈夫だ。」
「でも・・・。」
躊躇するスルに対してリコアは段々腹が立ってきた。そして切れた。
「お前さっきハラレニに行くと口を滑らせただろう!俺がフォローしなければこの計画は台無しになったんだぞ!汚点を挽回しろよ!それともなにか!金が欲しくないか!」
リコアは恐ろしい形相で恫喝した。
「わ・・・分かったよ、やるよ・・・。」
スルは渋々了承した。
「トンネルを掘る場所は俺たちがいた宿の裏手だ。月鏡を取ってきたらすぐに来い。分かったな?」
「あぁ・・・。」
「よし。」
心細げにうなだれるスルを尻目にリコアはさっさと行ってしまった。スルは祭壇の方に向き直った。月光を浴びて怪しく光る銀箱がとんでもない怪物に見えてくる。スルの足が震えた。
一方、リコアは嫌らしく口元を三角に吊り上げながら来た道を引き返している。
始めからスル一人に月鏡の盗みをやらせるつもりだったのだ。月鏡の呪いをスルにすべて押し付けるつもりだ。むろんスルの傍にいるだけで自分にも呪いの影響はあるかもしれないとは覚悟している。だから護符を手に入れた。
この護符は偽物ではなく本物だ。本物といっても効力を試したことはないから本物という証はないが護符を渡した者が本物だと言った以上、それを信じるしかない。騙されているという考えは頭の片隅にはあった。かといって月鏡を諦めるという選択肢はない。これは大金を生み出す打ち出の小づちだ。
例えラパヌを騙せなかったとしても世界のどこかには月鏡にまつわる噂をものともせずに自分の物にしたがる物好きな大金持ちはいるものだ。そいつに法外な値段で売りつける、これこそがリコアの真の目的。その後で金持ちがどうなろうがしったことでない。
護符の効力を疑いながらも計画を実行出来たのはスルに直接手を汚させるため。リコア自身はこの先も一切月鏡に触れるつもりはない。スルを人柱にして自分は大金をせしめるつもりだ。


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