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作品名:ノンカカ国を滅ぼした月鏡の正体 作者:こみふい

第11回 11
リコアたちは祭壇がどこにあるか確かめると急いで自分たちの寝場所に戻った。あの銀箱の中に月鏡があると思うと恐ろしさと期待感が混ざりあった複雑な感情が体中を駆け巡る。彼らはひたすら夜の零時が過ぎるのを待った。


場所は変わってハラレニ国。暑さで寝苦しい夜が続く。街ではなかなか寝付けない男たちが居酒屋に繰り出していた。
そんな中、城では国王が執務室で頭を悩ませている。国王の目の前には国王が一番に信頼を寄せているレンド、ジャノ、そしてスラヌがいる。
「月族の村へ遣いを出したトラレとエコークはまだ戻らないのか。」
国王がいささか苛立ち気にレンドに尋ねた。
「はい、まだ戻ってきておりません。月族の者たちもまだ来てないようです。」
「ここを出発してからもう4日も経つからそろそろ月族たちを連れて戻ってきても良さそうなものだが何かあったのだろうか・・・。」
国王は不安を隠せないようだ。
実は4日前にトラレとエコークを月族の元へ遣いに出したのだ。もちろん雨乞いの儀式を依頼する為だ。国王もハラレニの雨季入りがひと月半も遅れていることを気にかけていた。農民たちが畑に巻く水に苦慮していることや川の水量が目に見えて減ってきていることを危惧した国王は部下を月族の元へ向かわせたのだが、二人はまだ戻ってこない。もちろん月族たちも来ていない。
「途中で道に迷ったか、何らかのアクシデントに巻き込まれたか・・・。やはりレンドを行かせるべきだった・・・。レンド、すまないが今から月族の村へ向かってはくれないか。」
「かしこまりました。すぐに出発の用意を致します。」
国王の突然の頼み事にもレンドは動じることはない。なんとも頼りになる男だ。国王は安心したように頷くと今度はジャノとスラヌの方に向き直った。
「ジャノ、スラヌ、お前たちはトラレとエコークを探して欲しい。我々が地上で探すよりジャノの翼で上から探した方が早いからな。急なことですまない。」
国王は申し訳なさげに依頼してきた。
「おまかせください、国王。僕の翼で必ずや二人を探し出してみせます。」
ジャノは期待に応えたるとばかりに力強く返答した。一方、スラヌは冷静な表情を崩さず
「国王、二人が通ったであろう道を教えてくれますか。そこを重点的に探してみます。」
「もちろんだ。そなたらに地図を渡そう。レンド、トラレ達が通りそうな道を書き記してやってくれ。」
命令されたレンドはすぐさま地図を取りに行った。
スラヌはニ年前にハラレニ国王の暗殺計画に加担した人物だ。しかしそれはスラヌのそれまでのあまりに過酷で壮絶な人生がさせたことだ。
現国王は、父である前国王がスラヌに対して想像を絶するような酷い仕打ちをしていたことに気づいていたが、当時はまだ子供だったので父の愚行を止めることは出来なかった。国王はそのことをずっと悔いていて罪悪感を抱いていた。
だからスラヌが自分のことを暗殺しようとしたと知っても寛大な処置を下した。通常なら処刑されるところだが、この城で自由に暮らせと言い渡しスラヌを許したのである。
スラヌは心から感謝し号泣した。それから自分が死ぬまで現国王に仕えようと心に決めたのだ。
この二年間スラヌはジャノと一緒にジャノの翼の研究に取り組んだ。世界では飛行機やハングライダーなど空を飛ぶ道具がたくさん発明され実用化されたが、それでもまだジャノの翼の需要はある。
空族のようにその場で自由に方向転換が出来、降りたいと思ったところに即着地出来るジャノの翼は重宝する。効率良く金充石をエネルギーに変える術を試行錯誤しながら日々研究を重ねているジャノ達。スラヌはジャノの指導を受けながら毎日のように飛行訓練を繰り返した。
おかげでスラヌの操縦術はだいぶ上手くなった。スラヌはこの二年間とても幸せで充実した暮らしを送って来た。
日々の生活の中でたくさんの匂いや香りに触れている内にハナ族の特色である嗅覚の鋭さは失われてしまい他の人々を同じくらいの嗅覚になってしまったがそれでもスラヌは幸せだ。いや、だからこそ幸せなのだ。あれほどまでに過酷で悲惨な日々は過去のものとなった。

レンドが地図を持ってきてトラレ達が通ったであろう道を記していく。
「ジャノ、スラヌ、お前たちにトラレ達のことは任せた。私は月族の村へ行く。」
レンドの言葉にジャノたちは力強く頷いた。
「三人とも頼んだぞ。気をつけて行け。」
国王が寄せる熱い信頼に応えるべく三人は城を旅立った。


その頃トラレとエコークは崖の下にいた。崖から誤って転落してしまったのだ。
ことの発端は二日前の夕刻のことだ。城を離れサンライズ国の国境を無事に越え月族の村へと先を急いでいた二人の目の前に立ちはだかる山。
月族の村へ向かうには山の麓を大回りしなければならない。しかし二人は一刻も早く月族の村へ行きたいと焦っていた。麓の道に沿って遠回りするより山道を登って行った方が早いと思ったのだ。
二人が乗っていた愛馬たちは山道を行くことを嫌がっていたが、二人はどうにか馬を宥めながら山道に入っていった。しばらくは険しい道をかき分けながら順調に進んでいたが突然、けたたましい獣の遠吠えが辺りに響き渡った。それに驚き怯えた馬たちは二人を振り落としどこかへ駆け去ってしまった。
狭い山道で突然振り落とされた二人は不幸なことに崖の下へ放り出されてしまった。崖を転がり落ちるトラレ達。だが転げ落ちたのが断崖絶壁ではなく土の地面で45度くらいの傾斜だった為、命拾いをした。
それでも崖の下まで転がり辿り着いたときは二人の体は傷だらけであった。不幸中の幸いで命を落とすことはなかったが二人とも脚を大怪我してしまった。二人とも骨折をしてしまったのである。
元々長旅の予定だったので十分な食料と水はある。幸運にもそれらも二人の元に転げ落ちてきた。それでしばらくは飢えと喉の渇きはしのげるが問題はここは山奥でたくさんの獣がいるということだ。
兵士である二人は闘いの心得はあるし剣も持っている。いざとなれば獣と立ち向かう気はあるが足を骨折しているので思うように動けない。何より痛みが酷いので眠れやしない。それでも二人は足に当て木をし、お互いを励まし合い、誰かが通りかかるのをひたすら待った。兵士として鍛えた屈強な体があったからこそこうして平常心を保てているのであろう。
「もう四日目か・・・。誰か通りかかってくれるといいのだが。このままでは俺たちは・・・。」
エコークが少々弱気になって呟いた。
「心配するな。イテテテ・・・。人は必ずいつか死ぬ。でもそれは今ではないさ。そうだろう?俺たちはしぶとい。」
トラレがやせ我慢しながらエコークを励ました。エコークはふっと笑った。
「そうだな。お前の言う通りだよ。俺たちはしぶとい。」
二人は顔を見合わせて笑い、そして寝転がって満天の星空を眺めた。冬だったら凍死していたが幸い今は夏だ。
「こんなことでもなかったらこんな風に夜空を見上げることもなかったな・・・。」
「あぁ・・・。月ってあんなに綺麗だったんだな。」
深い樹々の合間に覗く夜空に輝く月を見ながら二人は助けが来ることを願った。


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