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作品名:魔法使いは星月夜を抱く 作者:alone

第5回 1−5
 一体……何が……?
 ルリレラの顔には困惑の色が浮かんでいた。あれほど警防隊員の誰の手にも負えなかったはずの男が、今まさに目の前で取り押さえられていたのだ。それも取り押さえているのは応援に駆け付けた別の警防隊員などではなく、全身黒装束という見慣れぬ恰好の人間だった。
 修道服を思わせるような足首まで長さのある黒の外衣に身を包み、外衣に付属している頭巾型の被りものを深々と被っている。皮革製の手袋と靴を身に着け、異様なほどに肌を見せておらず性別すら判断が難しい。顔立ちを知ろうにも被っている布で影がかかっていることに加え、顔の下半分から首を覆う面頬(めんぼお)を着けており見ることは叶わない。
 見るからに怪しいという言葉がふさわしい姿であったが、状況が状況だっただけにルリレラは無視して、暴れていた男の方を優先する。黒衣の人が押さえつけているもとに駆け寄り、懐から手錠を取りだした。
「ご協力感謝いたします。拘束したいのですが、よろしいですか?」
 あれだけ暴れていた男を抑えた相手だ。変に刺激しないよう丁寧な言葉づかいを意識する。
 ルリレラの言葉に黒衣の人が頭をあげた。顔にかかる薄暗い影のなかに二つの目が光っている。ルリレラはその目を見て、心臓が大きく跳ね上がった。
 とても無機的な目。無感情で冷え切っている。心の奥底まで見透かされているようでありながら、他方どこか遠くを眺めているように無関心。
 何かされるのではと身構えたルリレラだったが、意外にも黒衣の人は何もせずに身を退いた。ルリレラは道に倒されて小さく呻き声を漏らす男に近づき、後ろ手にして手錠を掛けようとする。が、突如男が暴れだした。
 逃がすわけにはいかない、とルリレラが押さえつけようとすると、傍らから腕が伸びてきて男の頭を掴んだ。黒衣の人だ。
「……操られてるか」
 ぼそりと漏らされた独り言。その声質で黒衣の人は男性なのだとルリレラには初めて分かった。けれど気に留まったのは性別よりも発せられた言葉の意味の方だった。
 暴れていた男の力が急激に弱まっていく。これならいけるとルリレラは男の両手を後ろ手に抑えつけ、今度こそ手錠を掛けることに成功した。手錠にも簡単な魔法がかけられている。これでそう簡単に逃げられることはないだろう。
 さっきの一言の意味を訊きだすべく、ルリレラは黒衣の男に話しかける。
「さっきのは一体どういう――」
 だがその場に黒衣の男の姿はすでになかった。周囲を見回すがそれらしき人影すらも見つからない。徐々に騒がしさが近づいてくる気配がして、見ると他の警防隊員たちが駆けつけてくるところだった。
 一体あの人は何者なんだろう……それに「操られてる」って…………?


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