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作品名:ディス・ユートピア 作者:alone

第10回 dys utopia i
   ―― dys utopia ――

 愛する《神様》に尽くすこと。それが僕たちの生き甲斐であり、使命だ。
 尽くす方法は大きく分けて三つあり、それらを基に中央司令塔も三つの部署に分かれている。
 まずは《技術局》。ある特定の分野――特に《拡張感覚》における一分野――で秀でた才を認められた者が《ユートピア》の管理などを任されている。基本的には非戦闘の部署であるけれど、《ユートピア》の防衛という側面も担っており、《視覚》による監視網や《抵抗覚》による防御壁という防衛システムを作り上げている。そのため高度な能力や技術が必要とされるので、僕たちのような未熟者には出番なんてない。
 次は《生産局》。特別な能力が求められるわけではないけれど、《ユートピア》を維持するうえではとても重要だ。生産局という名前が示すように、作り出すこと全般を担っている。特に重要なのが子供生産。つまり次世代を生み出すことだ。《神様》から《拡張感覚》という力を与えてもらっても、《神様》とは違って、僕らは死という運命から逃れられない。だから《ユートピア》を維持し続けるためにも新たな世代を生み出す必要がある。けれど子供生産を認められるのは十五歳からだ。まだ僕たちにはできない。
 最後は《軍事局》。ここの仕事内容はとてもシンプルだ。《悪魔》を殺すこと。ただそれだけ。でもそれだけと言っても《悪魔》の数は圧倒的で、僕たち人類では比べものにならない。一体どこから湧いて出てきたのかと呆れてしまうほど多く、今この瞬間にも増え続けている。ただ、数が多すぎるあまり、中には使い物にならない雑魚もいる。いわゆる下位の《悪魔》だ。おかげで僕たちのような未熟者にも《神様》に尽くすチャンスがある。
 そう、僕たちが《神様》に尽くすことのできる唯一の方法は《悪魔狩り》。下位ではあるけど《悪魔》を殺して、少しでも《悪魔》の数を減らすことだ。
 そして今日、遂にその番が僕たちに回ってきた。
 《ユートピア》では教育に関して少数制を取っており、五人前後の子供に対し一人の担当指導者をつけて一つの班としている。《悪魔狩り》はその班ごとで行くことになっているが、僕たちのような未熟者の相手がそう易々と見つかるわけがない。なぜなら下位の《悪魔》だけで構成されているようなコミュニティを見つけなくてはいけないからだ。だから必然的に順番が生じてしまうわけだけど、ようやく僕たち三班にその順番が回ってきた。
 初の《悪魔狩り》。それは同時に、初めての『外』を表してもいる。
 生まれて以来十数年間、ずっと《ユートピア》の中で暮らしてきた。旧時代に城塞都市と呼ばれていた場所をもとに作られた《ユートピア》では、三メートルを優に超える壁が周囲を取り囲んでいる。そのため外の景色を見ることさえ叶わない。見ることができるのは空だけ。空だけが外の世界との唯一の接点だった。
 よく澄んだ青い空の下、今日は珍しく屋外での集合だ。三班のいつもの面子が揃ったのを認めると、サディアス先生が説明に入る。
「今日はお前たちにとって初の《悪魔狩り》だ。興奮していたり緊張していたり様々だとは思うが、まあ、そんなに気を張る必要はない。相手は《悪魔》の中でも下位の連中だ。事前調査でも何の問題もなかった。それに俺も付いているしな。もしもの時は守ってやるさ」そこでサディアス先生は笑った。そんな心配は端から必要ないという感じに。「さて、それじゃあ《悪魔狩り》に行くとするか。皆これに乗ってくれ」
 そう言ってサディアス先生が指差したのは大きな球体だった。透明な素材で出来ており、透き通って中が見える。中には内壁に沿って円形に椅子が設置されていた。僕たち全員が入るには十分な大きさをしている。
 壁の一部が開き、全員が中に乗り込む。入口を閉じると、サディアス先生は座っている僕たち全員の顔を見渡し、言った。
「では、初めての《悪魔狩り》に出発だ」
 そして僕たちの乗った大きな球体は、空へと浮かび上がった。


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