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作品名:掌にのせて 作者:alone

第4回 即興小説『(not) alone』
【お題:孤独な同情 必須要素:大学受験 制限時間:15分】


 今年もこの季節が終わった。毎年毎年飽きずに訪れる受験シーズン。俺はもう何度この季節をこうやって虚しく過ごしているのか。
 最初に浪人を決心したのは、行きたかった第一志望の大学に落ちた5年前。この悔しさを胸に絶対合格を今年度はもぎ取ってやる、と意気込んで浪人になった。
 しかし現実は、すぐにやる気を失い、大学生になった友人たちと遊んだりばかりしていた。
 結果、その年は不合格。俺は後悔ばかりを覚えた。なんてバカだったんだと悔いても悔い切れなかった。
 そして、翌年度も俺は浪人になった。
 けれど、何度浪人をしたって、俺は変わることはなかった。
 遊んでばかりで勉強は二の次。模擬試験の成績は見たことがないほどまで落ち切っていた。見たこともないような偏差値が並び、Eランクという表記が並んでいた。
 成績を見るたびに俺は一時的には焦ったが、俺は悪い意味で慣れてしまったせいか、次の日には何事もなかったかのように遊んでいた。

 変化が起きたのは、4年目の浪人が終わった時だった。
 中学・高校からの友人たちのほとんどは現役で受かっていたために、俺を残してみんなは社会人になっていた。みんなの話は立派に新社会人のものになっており、ここ4年間遊んでばかりいた俺には付いていくことのできない世界だった。
 俺は一人になった。みんなに置いて行かれた。
 ――――けれど、また俺は勉強を放り捨てて、遊んでばかりいた。

 今年もこの季節が終わった。もう6回目の大学受験だってのに、俺はなんの成長もしていない。
 俺はもう見慣れてしまった不合格通知をゴミ箱に捨てると、ひとり溜め息を零した。
「大丈夫! 大丈夫だって! 今度こそ受かるよ!」
 俺の隣でそいつは笑って語りかけてきた。
「そうかな……。俺、もうおかしくなっちまいそうだよ……」
 俺は弱音を漏らすが、そいつはすぐに言葉を重ねてきた。
「そんなこと言うなって! お前がおかしいんじゃなくて、この世界がおかしいんだって!」
「そ、そうかな……」
 そいつの言葉に俺の中で何かが崩れていった気がした。
「そ、そうだよな……」


 俺は包丁を握りしめ、一人孤独だった部屋を後にした。


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