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作品名:時空流離譚 作者:ススム

第6回 land cell テーマ【失恋】
「あなたはいつも自分自分自分……自分のことばっかり! そんなに自分が好きなら自分と結婚すれば!?」
 何度目かも分からない妻のお決まりのヒステリーを受けて、島はほとほと愛想が尽きた。
 売り言葉に買い言葉とばかりに気のない返答をする。
「そうだな。君なんかよりも俺自身と結婚した方がまだ有意義な人生が送れそうだ」
 この言葉で妻の中に残っていたわずかばかりの愛情もすっかり覚めたのだろう、それからすぐに二人は破局した。
 バツイチとなった島はこのままずっと独り身なのもバツが悪いと思った。
 しかし、あの元妻でさえ釣り合いの取れなかった自分と、添い遂げられる女などそうそういるとも思えない。
 そこで元妻の定番だった文句を思い出した。
「そうだ。俺をもう一人作って、そいつと結婚すればいいんだ」
 島は研究を重ね自分の細胞をベースとしながらも、遺伝的にも法的にも結婚・出産共に可能な女性クローンを作り上げた。
 早速彼女との婚姻届けを提出した島は、これから訪れるだろう素晴らしい結婚生活に思いをはせていた。

 十五年後――。
「まったくお前というやつはどこまで自分勝手なんだ! そんなに自分が可愛いけりゃ自分と結婚してろ!!」
 島は怒りの言葉を離婚届と一緒に投げつけた。
 あんな女のことは忘れて次だ次。次こそは――。
 島は今度こそ理想のクローンを作ろうと自分の髪の毛を抜いて驚いた。
 白い。
 思えばあれから十五年。
 最初のクローンとの間にもうけた子は、もう小学校を卒業しようとしている。
 その成長に比べて自分はどうだ?
 同じことをひたすらに繰り返し、今回で一体バツいくつだ?
 何一つ学んでいない自分に、島はとうとう愛想が尽きた。


 そんな彼をよそに『島細胞』は町中、国中に広がり続ける。
 今日も日本列島のどこかで声が上がる。

「「「そんなに自分が好きなら自分と結婚しろ!!」」」

 『自分』に向かって吠え続ける。


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