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作品名:時空流離譚 作者:ススム

第4回 零石零鳥 テーマ【他山の石】
 せいぜいつまらない男共を取り合ってなさい、私のために。
 レイコは婚活パーティの輪から一人外れ、遠巻きから参加者たちの歓談を観察していた。
 彼女は必死で媚売る女たちを冷ややかな目で見つめ、それに浮かれる男たちにも同様の視線を送る。
 今回も大した男はいないわね。
 小一時間もそうして観察を続けると、レイコは誰とも言葉一つ交わさずにその場から立ち去った。
 前回の婚活でも、前々回の婚活でも彼女は傍観に徹していた。
 参加名簿だけを見れば人一倍婚活に熱心に思えるが、実際のレイコは対極と言っていいほどに消極的である。
 果たしてレイコは何のために婚活パーティに来ているのか?
 ただ単に引っ込み思案で輪に入れないというのならばよくある話だし、また可愛げもあるのだがどうもそういうわけでもない。
 レイコに気を遣って何人かの男が話しかけたり、パーティの役員が会話に加われるように促したりしても彼女はつっけんどんに口を尖らせる。
 邪魔をしないで――と。
 一体何の邪魔だ、婚活に来ていて交流以上に優先することがあるのか?
 そう問い質してみれば大仰にため息をついたが最後レイコは何も答えない。
 結局、話しかけてきた男たちも彼女を置いて輪に戻っていくしかなかった。
 一人になってレイコは再び参加者たちの様子をつぶさに観察し始めた。
 レイコは結婚願望がないわけではない。
 だが相手が誰でもいいというわけではなかった。
 くだらない男に引っ掛かって今後の人生を棒に振る気などさらさらない。
 自分の一生を捧げるにふさわしい相手かどうか、しっかりと見定める必要があるのだ。
 玉石混合の中から玉を選び取れるかどうかですべてが決まる。
 ここにはそれが分かっていない馬鹿な女ばかり。
 私はあいつらとは違う。
 せいぜいその馬鹿な行動を利用させてもらおう。
 あなたたちは私の輝かしい未来のための布石。
 男の価値を量るための試金石。
 私の糧となって使い潰される捨て石よ。
  

「ねえ、あの女また来てるわよ」
「あんなおばさん誰も相手にするわけないのにね〜。年下の男相手に必死に媚売って恥ずかしくないのかしら」
「ほんと。石に齧りついてでもって感じ? ああはなりたくないわ」
「まあ、あれのおかげで私たちが引き立つんならいいんじゃない?」
「そうかもね。彼女みたいな引き立て役に転落しないように、やっぱり若いうちに勝負をかけないと」
 

 輪の中心でレイコは独り痛感していた。
 石橋を叩き過ぎて壊してしまったこと。  
 そして、苔生した石に寄ってくる男などいるはずもないことを。


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