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作品名:時空流離譚 作者:ススム

第10回 一宿折犯 テーマ【同棲】
 よお、どうした相棒。暗い顔して。
 分かってるって。何か言いにくいことがあるんだろ?
 他の連中に内緒で俺とサシで話すときはいつもそうだもんな。
 ほら、とっとと言っちまえよ。俺たちの間で隠し事なんて水臭え上に馬鹿馬鹿しいだろ。
 何!? また拾ってきただって?
 おいおい、つい先週新しいのを棲ませたばかりだってのに、そいつが落ち着かない内から次の奴か?
 行き場がなくて困ってた? 可哀想で見てられなかった? いつもそういってその辺をふらふらしてるのを引っ張ってくるが、もう何回目だよ?
 ああ、まあ分かっちゃいるぜ。相棒がそういう野郎だってことは。
 俺だって相棒に拾ってもらわなけりゃ未だにそのへんをふらふら漂って、場合によっちゃもうこの世にはいなかったかもしれねえ。
 そういう意味じゃあんまり強く言えたクチじゃねえし、そもそもこの宿の主はあんただ。そのあんたが決めた以上はそれに従う他ねえが。
 だけどな、これ以上はいくら相棒でも身が持たねえぞ。
 俺たちの面倒を見てくれることは感謝してもしつくせねえし、返せる恩も高が知れてるが、だからこそ少しは自分の体の心配ってのもして欲しいもんだ。
 相棒に倒れられたら、それこそ俺たち全員また路頭を彷徨うことになっちまうんだからよ。
 それともう一つ。これも俺が言えたことじゃないんだが、漂っているような奴はそうなるべくしてなった奴がほとんどだ。
 お人好しも結構だが、受け入れるなら受け入れるでしっかりと目を光らせとかねえと何するか分からねえぞ。新しい奴にここのルールをきちんと飲み込ませておけよ。
 ……分かったって? なら、いいけどよ。
 行っちまいやがった。本当に分かったのかね、ったく。
 まあ何度も言うように借りてる立場からじゃこれ以上はどうしようもできねえか。
 しかし相棒とは長い付き合いだがどれだけ経っても変わらねえな、ああいうところは。
 こっちにシワ寄せが来て……くれりゃまだ安心できるんだけどよ。全部背負い込まねえといいが……。

                 ◆

 だから言わんこっちゃねえ!!
 あの女には気を付けとけって散々言っといただろうが。
 あ〜あ〜、今更謝ったってどうしようもねえっての。
 稀代の天才霊能者だか何だかしらねえが、目についた浮遊霊を片っ端から取り込むなんて馬鹿げたことした報いだ、これが。
 借り賃も受け取らねえで体を貸してりゃ性質の悪い輩が寄ってくるなんてのは分かってたことだろうに。
 せっかくの才能もその性格の前じゃ毒以外の何物でもねえな。
 あの女が悪霊だってことは分かってた? 更生できると思ってたって? つくづく甘ちゃんだな。
 これからどうなるかって? 俺や他の霊魂たちのおかげで何とか未遂に終わったが、仕出かそうとした事が事だからな。実刑は免れんだろうよ。
 もっとも、体の主を俺たちに譲り渡して多重人格障害を装えばまだ無罪の芽はあるだろうが。
 俺たちをそんな風に利用したくはないって? はっ、相棒ならそう言うと思っていたよ。
 ……ん、だから今更謝ったってよ……ああ、俺のことでか。息子に会わせることができなくなって悪いって。
 別に気にすることねえよ。本来ならとっくの昔に見納めだった息子の成長を、嫁さんもらって孫ができるまで見させてもらえたんだから。
 俺としてはもう十分だ。守護霊の座はあのクソババアが一向に譲り渡す気配はねえしよ。
 もう未練がなくなったのなら体から出て成仏した方がいい?
 おいおい、おいおいおい、何を言ってんだ。俺が相棒をこのまま残して成仏なんてできるわけねえだろ。
 俺にとってあんたは相棒であると同時にもう第二の息子みたいなもんなんだ。
 一人前に育ったあいつと違って、こっちの息子はまだまだ心配で目が離せねえよ。
 俺だけじゃねえ。他の奴らも今更相棒を見放す気はないってよ。
 何だかんだ相棒のお人好しが体を通じて俺たちに伝染っちまったかな。
 そう考えれば、あの女も手のかかるじゃじゃ馬娘みてえなもんだ。
 相棒一人じゃ手に負えないだろ。あの女の更生とやらにもじっくり付き合ってやるよ。
 な〜に、一つの宿に一緒に棲む家族なんだ。この程度は何でもねえ。
 だから謝るなって。礼もいらないっての。
 家族の親切なんてもんはな、その場では悪態吐いて後になってから身に沁みておけばいいのさ。


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