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作品名:ずいっぽいの 作者:雪平

第3回 朝の散歩 〜理由は日替わりで〜
ふわあ〜ぁ……。眠いのう……。
まだ外は真っ暗で朝日も出とらんし、ウチが寝始めるには早いんやけどなぁ。何でか今日は妙に眠い……。
あぁ、せやで。このまままたいつもの散歩に行くところや。
今ちょっとこじれてる所があってな、気分転換したい思とってん。
せやせや、いつもの物書きが詰まってて……と言いたい気持ちも山々なんですが、実際はこっち。ゲームの方や。
ホンマに腹の立つ話でな、ウチがどんなに頭使(つこ)ても思い通りに行かんのよ。
――んん、そうそう。あのミッションクリア形式のTPS(Third Person Shooting・三人称視点で操作する射撃ゲーム)。
あのゲームは大雑把に言うたら最初から自分でやる事を決めといて、それを一度もミスする事なくこなしてったらえぇもんなんや。
それで一つ一つミッションをクリアして行く。そういう感じのゲームなんやけどなぁ。
ウチの立てた作戦がアカンのか、はたまたウチの技量が不足しとんのか、なんぼやってもあるミッションがクリア出来ひん……。
少なくともネットの動画を見る限りやと、ウチと同じ作戦を練った人は居(お)らんみたいでなぁ。攻略wikiにも載ってへんから余計に火が点いてもうたんよ。
何(なん)せ誰もやった事のない攻略法に挑戦してるかも知れへんのやで? そんなん絶対燃えるやん? ゲーム好きの人間ならなぁ?
たかがテレビゲーム、されどテレビゲーム――。熱中しとったらゲームもスポーツも同(おんな)じでな、ウチも可能な限り自分の限界に挑戦し続けたいんよ。
あとはまぁ、アレやな。実は前にも同じような状況に陥(おちい)ってな、wikiに載っとる方法が真似出来ひんかったから独自の攻略法見つけてクリアした事が在ったんよ。
あん時はホンマに心躍ったでぇ……。勢いの余りwikiに書き込んだろかとか、ホンマに攻略法として成立してんのか検証すんのに何度かリトライしよかとか思たぐらいでなぁ。
あの手のゲームはそう言う楽しみがあるさかい、ハマると中々ヤメ時が見つからんのやわ。

んあ〜ぁぁぁ……。ほれにしてもやっぱりまだ眠いわ……。
まぁ、いつもみたいに物書きが詰まってやのうて、ゲームで詰まっとるからなぁ。動機が違うからか、散歩も少しリズムが狂とるかも知れん。
そう言や、さっきからおみゃあさは何でウチにくっついて来とん?
はぁ? 面白いから? ウチの話を聴いとんのがか?
相変わらず変な趣味しとんなぁ。人間観察が趣味なんか知らんが、おみゃあさもウチに負けず劣らず変人やね。
まぁ、一緒に歩きたい言うんなら一緒に歩きましょか。因みにウチは歩くのそんなに速(はよ)うないからじれったいかも知れんで。

 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

さて、ほなら今日は何(なん)にしようかねぇ――。
いっつも散歩に出た時はここらへんの自販機で飲み物(もん)買(こ)うとんのよ。
何しろここを過ぎると堤防に出よるやろ? そんでそこから上の道を長ぁ〜く歩いて、国道まで辿り着いたら折り返す。
これがウチの散歩コースや。距離にしたら6kmぐらいになるんやろうかね? せやからどうしても飲み物(もん)が欲(ほ)しゅうなんのよ。
基本的にいつもはキャップの付いたボトル系の物(もん)を買(こ)うとるなぁ。飲み易うて持ち運び易いやろ。
あと甘い物は苦手やし、お茶と水の鉄板振りが半端ないわな。偶に珈琲買(こ)うて飲む事もあるけど、それは大概戻って来た時ぐらいやわ。
アレは飲むと尿が近くなるしなぁ。途中で仮設トイレみたいな場所もあるんやけど、その辺は割と神経質になったりするえ。

 ―◇―◇―◇―◇―

ん〜ん、周りが少し見えんようなって来たな。もうすぐ夜明けか。
こないして一旦周りが見え難(にく)うなって来ると、そこから一気に景色が白みだす。
空が青白くなって来てなぁ、雲とかの影がはっきり見えるようになってくんねん。
その光景を見るのがウチは好きなんよ。こうして頭空っぽ気味に外の景色を眺めて散歩する。それだけで心の中がフラットになるんやわ。
おみゃあさも今後は散歩とかしてみたらどうや? 人気のない道やったらウチみたいな出不精でもふと歩いてみたくなる時があるんやで?
おみゃあさが人気の多い方が好きか少ない方が好きかは知らんけど、散歩はとかく心身の健康に良(え)ぇ感じがして、ウチは好きやねぇ。

 ―◇―◇―◇―◇―

さてさてこっからが堤防やね。この道も今はアスファルトやけど、途中から砂利道(じゃりみち)に……なってたんも今は昔やな。
そうそう、四・五年前くらいやったかなぁ? 昔は1km程進んだら砂利道で、正直バイクもよう通らんような道になっとんたんやけどな、今は国道までずっと舗装されとんよ。
お蔭で歩き易くはなったんやけど、ウチは砂利の方が好きやったなぁ。土の匂いがよう鼻と肌に触れる感じがして、アスファルトよりも好ましかったんやわ。
おみゃあさはどっちが好きや? 昔ながらの砂利道と、今風の綺麗なアスファルトの道?
――んあっと? 今日は珍しく大きいの連れとるなぁ……。
あぁそや。あの前から来る爺さんな。側にゴツイ犬連れて歩いとるやろ。
まぁ流石にこんなええ道やったらそりゃ犬の散歩に来る人もおるやろ。空も段々明るうなって来たし、そろそろジョギングしてる人とかにもすれ違うで。
これも砂利道から終始アスファルトに変わったお蔭か、朝に此処を歩く人が増えた気がするわぁ。正直ウチとしては何とも言えん感じやな。

 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

さて、国道に到着したし、ここから少し国道沿いに歩いて田圃道(たんぼみち)に行くえ。
おっ? さてはさっきの堤防の上を戻ると思とったみたいやな。ならウチとしてはシメシメ、おみゃあさの不意を突けて「よっしゃ!」やわ。
ウチの散歩コースは国道に出たら一旦ズレて田圃の方に向かうんよ。ほんでこの田圃道を歩いて元の町まで戻る。
田圃の方からやとロクな建物がないからよう住んでる所が見えるやろ。
途中にあるのは農家の人が立てた小屋と土方の資材置き場だけ。ゆっくり歩いて稲穂や草木が風に揺れるのを眺めんのもオツなもんやで。
季節によっては虫が鳴く。蛙も鳴いて、蛇も出る。歩いとったら目の前をバッタが横切んなんてしょっちゅうやわ。
側を流れとる川からも稀に鯉が跳ねたり亀が飛び込んだりしよるさかいなぁ。ウチはその音を聴くんも大好きなんよ。
ほんでも一番好きなんはアレやな――。

ほら、アレやアレ。緑の稲が一斉に波みたいに揺れとるやろ。
ほんで津波が段々こっちに近付いて来とる。それでホラ――な? 解るか、稲が揺れると今どこに風が吹いてるかが見えるんよ。
それが自分の方に向かって来て、「突き抜ける!」っと思った瞬間全身で風を感じて後ろの方へ流れてく。
振り返ったらまた後ろの稲が揺れててなぁ……。この感覚はホンマたまらんわ。
最初にコレを見っけたのはバイトで他店に出張しとった時やったなぁ。あん時はこことは違う田圃道を歩いとったんよ。
んでまぁ、何(なん)でか知らんが初めて稲の揺れで風の位置を見っけた時、「凄ェ……」って思って感動したもんやわ。
ほんで風がこっちに来て吹き抜けてった瞬間、「ヤベェ……」ってなって、しばらくそこに棒立ちで突っ立っとたりしたなぁ。
緑の稲からは何かしら体にエェ成分も出とるやろうし、ホンマこの田圃道歩くんは好きやわぁ。

 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

さて、田圃道も終わって見慣れた道路に出ましたな。
ほならこの辺でおみゃあさともお別れしますか。
んんん、なんやか今日はも少し歩きたい気分なんよ。
いや、ウチ一人でやな。別におみゃあさんの事が鬱陶しいって訳やないんやけど、やっぱり散歩は一人で居たい時と連れが居(お)った方が良(え)ぇ時があるからな。
歩いているウチになんやか心変わりしたんやろうなぁ。一人で歩きとうなったんやわ。
んん、悪いな。ほならウチはこっちの道に行くさかい。

ほなな〜。


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