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作品名:ずいっぽいの 作者:雪平

第1回 深夜のコンビニ 〜初めは鯖が食いたかったんです〜
ん? なんやこんな時間にまた外出てんのかぇ?
おみゃあさんも夜中に外出るの好きやねぇ。
いや外出してんのはこっちも同(おんな)じやけどね、おみゃあさの場合は特に理由が無くても表に出てるっしょ?
夏場はともかく冬の深夜に表出ると寒かねぇかね? こっちはドテラ着込んでモコモコの手袋付けてる言うのに……。
――あぁ、これ? これはさっきコンビニ行って来たかんね。何か急に鯖が食いたくなったんよ。
つっても鯖缶は買ってないんやけどね。

いやね、本当は鯖缶一個だけのつもりやったんよ。
夜中に物書きしてたら急に「なんか鯖食いたいなぁ〜」って気分になって、「んでも今月苦しいしなぁ〜。やっぱ我慢した方が良(え)ぇかなぁ〜」とか考えてたんよ。
けれども気ぃ付いたらホラ、こうして外出支度済ませて自宅の玄関出てたんや。
なんつぅかね、もうギャングに居てもおかしくないよね。ウチ。
思った時には既に行動は終わって……いや行動は終わってないけど体は動き始めとってん。
やっぱ人間直感が大事よ。鯖が食いたいって思ったら変に欲望に逆らわず買いに行きゃ良(え)ぇのよ。

それで何で鯖缶を買わんかったのかって?

そりゃあウチも最初は鯖缶だけ買(こ)うてすぐに帰ろうとしたよ。
でもそこのコンビニでな、鯖缶売り場を見たら微妙に値段が高かったんよね。
うん、一番安いのでも百五十円ぐらいの奴でな、個人的に鯖缶は税別百円迄に抑えたいわけよ。
それなのに百五十円じゃあ懐の寂しい内は躊躇するでしょう? そもそもコンビニで鯖缶買(こ)うた事なんて一度も無かったから、直接見るまでは税別百円で売ってると信じてたんよ。
だから鯖缶を諦めてPB(プライベートブランド)のスナック菓子に変更しようとしたわけ。
これやこれ。スティックポテト。
これ美味しいよ。ワンコイン価格で味も量も良いし、袋が小さくてゴミの嵩(かさ)も控え目。
本当にスティックポテト万歳やね。味別で二種類とも買っちゃいましたわ。

あぁ……何やその可哀想な人を見る目は?
まさかアレか? ウチが鯖缶一個買うだけで無駄にアレコレ考える貧乏人に思えたか? ならそれは間違いやで。
ほれ、スティックポテト以外にもオニギリ二つと珈琲も入っとる。トドメの一撃とばかりになめこ汁まで有るんやで。
いやぁ、やっぱり深夜のコンビニは魔物やね。ついつい余計な物を買(こ)うてまうわ。
何しろスティックポテト二つ手に取ってすぐさまレジに向かおうとしたら、途中で味噌汁売り場が目に付いたんよ。
それで「あぁ、最近なめこ汁飲んでねぇな〜。なめこ汁飲みてぇなぁ〜」とか考えちまったわけですよ。ほい。
でもでも節約の意識もちゃんと持ってましたかんね、鯖缶と同等金額のなめこ汁の購入は流石に考えましたわ。
ほら、コンビニのなめこ汁言(ゆ)うたら『手軽に食える!』が売りでしょう? でも市販のなめこ使って自分で作っている方がダンチで安上がりな上に、おかわり出来てなめこの量が倍ぐらい多くなるんよ。
そして何よりも美味い! そりゃあ悩むでしょう?
何しろ行きつけのスーパーならなめこなんて平値(へいね)で五十円ぐらいやし、使用する味噌と出汁袋の値段を考慮しても味的に絶対コスパで勝る。そして量は三倍以上上や。
せやけど「今すぐ食べたい! ウチはどうしても今、なめこ汁を食べたいんや!」な気持ちの時は流石にコスパの劣るコンビニさんのインスタントに頼る事もやぶさかでなくなる。
よってウチは湯を入れたカップ麺が出来上がるぐらいの時間考えて、最終的に「今夜はなめこ汁で決めよう」ってなったのよ。
そしたらな! 今度は味噌汁に合うご飯が欲しくなって来る! 米や米! そして食後の珈琲も欲しいなぁってなって、色々と欲望が溢れ出して来るんよ。
せやから止む無く非PBの割高ボトルコーヒーを一本を手に取って、オニギリコーナーも覗いてみたの。
―――ん? 弁当? アレはブルジョワな人たちが食べる嗜好品です。ウチのステータスはあくまで中の下。非貧乏人のカテゴリに含まれつつも平民としての地位を保つのがちょい難しいぐらいのポジションなんや。
それよりも見ぃやこのオニギリ! ここに書いてある文字を読んでみんしゃいな!
ちゃんと『さばみりん』って書いてあるやろ!? まさかの新商品で『さばみりん』が発売されてたんよ!
こりゃもう運命やね。鯖缶求めてたけど値段に負けたウチがさばみりんを発見する。
もうこの子見っけた時にウチはそう確信したで。これは運命やてな。
ほんでさっそくこれ一個手に取ってレジ行こうとしたら『本日限定! 100円以上150以下のオニギリ全品100円!』とか書かれたポップ見つけてな、「んじゃもう一個追加で〜」って気分になったんですわ。ほい。
そんでレジの人に千円札渡して、釣り貰ってウチはホクホク顔で退店。こうして帰宅途中に偶然外出てたおみゃあさんとご対面したってわけよ。

あぁ……んん……あぁ、せやな……んん。

あぁ、解っとんよ……。おみゃあさのその目はウチが貧富どうこうやなく、世の中にはどうしようもなく阿呆な人間が居るんやなって意味で憐れんどんのやろう?
ウチも店出るまではホクホク顔やったよ。せやけど今ちょっとだけ後悔してるわ……。
何でこんなに夜食買い込んでもうたんやろ……。ウチは腹減ってんのと違(ちご)てただ鯖が食いたかっただけやったのに……。
はぁ、何か憂鬱やわぁ……。せやけどこの気持ちを一人で味わわんかったのは運が良かったかも知れんね。
あぁ、やっぱり今月は厳しいかんね。これから三日ほどは昼食と夜食を抜かんといかんねぇ……。
とは言え、言(ゆ)うても毎月半分ぐらいは一日二食で過ごしとるし、何とかなるっしょ。多分。

ほなな〜。


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