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作品名:落花生家族 作者:本条想子

最終回 1
「落花生家族」

  本 条 想 子


“結婚”という二文字は、女性として生まれてきた奈美にとって、憧れだった。奈美の両親は、美男美女のカップルで、奈美も人並み以上の器量良しであった。奈美は、家事を手伝うことが嫌いなわけでもなく、よく気がつく女の子であった。また、お人形の洋服を、布の切れ端で縫ったりとか毛糸で編んだりとかしていた。

「奈美ちゃんはお人形遊びが好きなのね。やはり女の子ね」
と、よく母から言われていた。
「奈美ちゃんは、お料理上手ね。いいお嫁さんになるわよ」
とも、母から言われていた。

女性は、物心が付いた頃からそんな事を言われ続け、より女性らしくなっていくのかもしれない。
腰掛けの就職で社会に出る。そして、結婚相手を見つけて永久就職で家庭に入る。そこからの女性は、男性と全く違う道を歩むことになる。男性は社会で仕事をして、女性は家庭で家事をする。これは昔ばなしと何ら変わらない。

『お爺さんは山に芝刈りに、お婆さんは川に洗濯に・・・』
と、何とものどかな光景だろうと思い、誰しもこの物語を読んだことだろう。

現代は何故かこのような光景がしっくりいかないように思えてならない。それは、若い夫婦に似つかわしい光景ではないからだろうか。奈美は、いつしか若くして花嫁になる願望が自分にないことに気付くのだった。
 それからの奈美は勉強で身を立てるというより、手に職を付けるという方向へ傾いて行った。『髪結いの亭主』というような女性の働きで養われている男性が欲しいわけではない。結婚が遠のくとは思えたが、手に職を付けるという選択をした。女性にとって強い味方になると思ったからだ。器用で、よく縫い物をしていたこともあり、洋裁の道へ行こうと決めた。

奈美は短大を卒業してから、洋裁専門校へ行って、2年間勉強した。それからの目標はブティックを開くことにあった。奈美は、自分でデザインした洋服が店に並ぶことを夢見ながら、高級ブティック店でデザイナーとして働いた。



奈美のデザインは思いの外、お客様に受け入れられていた。思い切って、高級ブティックを辞めて、自宅で注文を取るようになった。注文は次第に増え、人を雇えるまでになった。
そして、デザインにも経営にも自信が付いてきていた。30歳になって、当初の目標を実現する時が来た。一生を託すに十分な仕事だと信じて、実行へ移した。ブティックは小さいながらも吉祥寺に出店した。店は年ごとに順調な成長を遂げていった。

奈美の毎日は、髪を振り乱してというようなものでもなく、実に優雅に過ぎていった。こんな一生もまた楽しいものだと自画自賛するのだった。それは、独身貴族の女性版であり、独身をいかに謳歌できるかの挑戦だった。

「奈美先生のデザインって、優しいですよね。気取ったイメージがなく、それでいて高級感が味わえるといった不思議な魅力ですよ」
と、十数年ともに仕事をしてきたチーフデザイナーの水島裕子が言った。

「それにしても先生って、欲がないですね。庶民感覚で、それ以上を望まないという信念のもとに経営されていますからね。得意先からは増量要求があるのに、一つのデザインの数量を抑え気味ですよね。その分、得意先は高値でも販売できるというメリットもあるわけですから。そして、オーダーも安いですよ」
と言うのは、店長をしている田川信枝だった。

 裕子も信枝も大事な仕事を任されて、張りのある人生を歩んでいると、日ごろから奈美には感謝していた。もうすでに二人は、結婚もしているし、子供もいた。



 二人は、奈美の結婚観が気にかかった。
「『奈美先生は、男性が嫌いなのかしら』なんて、新入りの松宮さんに聞かれたわ」
と、信枝が裕子に言った。

「そんな事ないわ。私が知っているだけでも二三人の男性がいるわ。みんな素敵な紳士よ」
と、裕子は笑った。

「先生は美人だから、言い寄る男性は数多いでしょうね」

「この業界、仕事で会う男性って、独身が多いと思わない。先生が独身って分かると、男性の目の色が変わるのが面白いのよ」

「チーフ、そんな楽しみ方していたの」

「私だって、あれだけの魅力があれば、いつまでも独身でいたいと思うかもしれないわ」

「松宮さんは、チーフのように結婚して子供がいて、それでいて仕事もできるのが理想みたい」

「あら、店長だって、仕事が出来る主婦じゃない。素敵よ」

「私やチーフと先生の違うところは、家庭が見えないところかしら」

「最初、うちの主人は主婦の片手間の仕事だろうと思っていたらしく、『家事をおろそかにしてまで打ち込むな』と言っていたのが、今では全く違うの。家事を手伝うだけでなく、進んで家事をするようになったのには、驚いたわ。男性も変わるのね」

「あら、それは元々ご主人にその要素があったのよ。私の主人はいまだに、縦の物を横にもしないわよ。うちの主人は、女の本分と男の本分というものをはっきり区別しているのよ」

「時代の流れに乗ったのかしら。今は若い夫婦の共働きが多いから、家事を手伝う男性も多いと聞くわ」

「私が遅くなる時には、娘によく言って食事の支度をしてもらうのよ。私が用意してきても、箸も付けずに残っているの。頭にくるわ。その点、娘は鍛えられて、いいお嫁さんになると思うわ」
と、信枝は複雑な思いで微笑んだ。

「うちは息子二人だから、主人も甘えてはいられなかった事情もあったのね」
と言いながら、夫にはすまないという思いもあった。
しかし、裕子は主婦でありながら、重要な仕事を続けて来られたことに誇りを持ってる。また、それだけに大変だった事を思い起こしていた。

「私たちの結婚生活期間と、先生の仕事に情熱を注いできた期間とは、どんな違いがあるのかしら」
と、信枝は首を傾げた。

「大きな違いがあったはずよ。少なくとも、私たちには家族がいる。先生は独身で独り暮らし。でも、ご両親は東京で健在だし、たまに帰省するみたい。妹さんが結婚していて、子供もいるみたいだから、その点でご両親は口うるさくないようね」

「独身という事は、誰にも迷惑をかけなかったということかしら。私たちには頼れる夫や見守ってくれる子供たちがいる。その分、家族に気を使いながら、やすらぎの中で仕事をしてきたのね」

「以前、私が先生に『子供っていいですよ』と言ったら、『子供は欲しいわ。めちゃめちゃ可愛くて離れられなくなると思うわ』って言っていた事があった。あれって、先生が母性本能の強い証拠だと思う」
と、裕子が言った。

「女性の体って残酷ね。男性なら働いて財産を作ってから、子育てしようと思うと出来るのに、その出来る男性が子育てを嫌がるのだから皮肉よね」
と、信枝は真剣に言った。

 二人は奈美の独身について話しているうちに、社会問題を考えるようになっていた。信枝の夫も今の男性社会の典型みたいな考え方を持っていた。その考え方を受け入れなければ、夫婦の関係は保てないとあきらめている信枝だった。しかし、裕子の夫が変わったことを聞いて、子供たちが巣立っていって、夫婦だけになったときの今の夫の考え方に付いて行けるか疑問に思えてきた。そこで、信枝は少しずつでも、夫の考えを変えようと思い始めていた。

「私も家族には寂しい思いをさせているのかもしれないと思っているわ。それは、家族がいるからで、先生はそういう意味で家族がいない分、家族に迷惑をかけないし、かけたくないみたい。そうした事が、結婚に踏み切れない要因みたいなこと聞いたことがあるわ。『私、欲張りなのかしら』と言った言葉が印象に残っているの。誰も彼もが幸せを感じられる生き方。それが、独身なのか、専業主婦なのか、共稼ぎ夫婦なのか。それぞれ違うのでしょうね」
と、裕子は考え込んだ。

「先生は、その家族のいない寂しさを仕事に燃えることで解消できているのね。チーフの家族は恵まれていると思う。うちのような家庭なら私は我慢できても、先生なら無理があると思うわ。やはり、自由な世界で羽ばたいてこその奈美先生ね」

「私たちも仕事に生き甲斐を感じている反面、子供たちは寂しさを感じているかもしれないから、共稼ぎを分かってもらう努力をしなければね」
と、裕子は言った。



 奈美は、裕子や信枝が考えるような寂しい思いをしていなかった。45歳になるまでの人生は仕事と恋愛の日々であった。奈美の回りには独身貴族を謳歌している男性が何人もいた。妻帯者に興味がない。それだけ結婚というものを美化していた。

奈美は自分の心を偽ってまで結婚をしようとも思っていなかったので、他の人と結婚した真壁友典とは別れた。
「奈美が結婚してくれないから、僕は別の人と結婚する。でも、奈美とはずっと恋愛したいなぁ。男って女房がいないと駄目なんだよ。社会的な信用もあるし、忙しい僕には家事をしてくれる女性も欲しいし、子供も欲しいんだ。これは、未来永劫に変わらない男の習性だよ」
と、見事に言いにくい事を正直に披露した。


 恋愛の対象者の中には、独身主義者もいた。その男性は、木藤昭夫という。奈美は昭夫にとって理想の女性像であった。それは、男性に対して依存心がなく自立していることだった。また、男性の価値を収入や容姿で推し量ることをしない。仕事と恋愛に対して潔かったことで、心置きなく付き合えた。

 しかし、昭夫は頭で分かっていても奈美との交際が長くなるにつれ、独身主義に陰りがでてきた。
「奈美となら、上手くやっていけるような気がするよ。お互いを認め合い、あとは今まで通り自由にやれば問題はないのだから」
と、結婚を迫った。

「昭夫さんと上手くやっていけるかは分からないわ。まだ、私には妻の存在が分からないの」
と言って、昭夫の心変わりに驚いた。
 奈美はこの時、昭夫との間に隙間風を感じていた。昭夫が奈美のために考えを改めるとしても、どれだけお互い負担であるかを考えると、まだ二人には実を結ぶきっかけを見出せなかった。


 奈美の交際相手には、離婚を経験した中谷孝志がいる。若い時に離婚しているので子供はいない。孝志が言っていた。
「愛した人といつも一緒にいたいと思ったから結婚した。しかし、俺たちは25歳と22歳だったから、何年か働いて余裕が出来てから子供を産もうと、話し合っていた。
 最初はお互い仕事が終わると真っ直ぐ家へ帰って来て楽しい毎日だった。でも、そのうちにお互い仕事から帰って来る時間が遅くなって、先に帰って来た方が待つ寂しさを味わうことになった。つまり、すれ違いだね。
 それで、俺が子供を作ろうと言った。しかし、彼女はもう少し後にしょうと言う。それまで二人が家事を平等にやっていたことが、彼女にはとても気に入っていたらしい。子作りは受け入れられず、俺の方が不満を募らせ、離婚した」
と、淡々と語った。
 孝志は今、貿易商で成功していた。しかし、結婚へのわだかまりがまだあるらしく、再婚はしていない。孝志は優しいが、女性は弱い者という考えがあり、そこが奈美は気がかりだった。


 愛と生活って矛盾する。仕事をしなければ生活はできない。それで、仕事に熱中すると二人の愛に、隙間風が吹く。夫婦がお互い、家庭をそっちのけで仕事に向かいたくなる心理って何なのか。それは、家庭より社会に楽しみがいっぱいあるからなのか。愛にも勝るものが、あるのか。社会の建前と本音に振り回されている現状があるのか。だから、自由に生きる道が、独身でなければならないのか。
奈美が結婚するのなら、男女のこだわりを持たない男性を選び出すという至難のわざが必要だった。女性の自立が、男性の排除とは考えていなかった。むしろ、男性との交際の中でお互いの合致点を探っていた。
奈美は今まで自立という事を考えて45歳まで独身できた。しかし、これまでの人生で恋愛は沢山したが、結婚してもいいという男性に巡り逢う事が出来なかった。



奈美が休日を家でくつろいでいると携帯電話の着信音が鳴った。
「奈美さん、お久しぶり。私、理恵」

「あら、理恵さん」

「折り入って、話があるの。夕食でもどうかしら」
と、沈んだ声で言った。

「赤坂にでも行きましょうか」

「ええ」

「6時に銀座線の渋谷駅のホームで待っているわ」
と、理恵を心配しながらも、何も触れずに携帯電話を切った。

 理恵は藤原勝也と結婚して20年になる。勝也は、渋谷で高級家具店を経営し、羽振りが良かった。勝也は、親から受け継いだ店の業績を順調に伸ばしてきた。
 勝也は可愛らしい理恵をプレゼント攻勢で射止めた。理恵にはその時、勝也の積極性が頼もしく思えたのだった。



 結婚当時から帰宅時間が遅かったが、仕事が忙しいと言われればそのように信じなければならなかった。
理恵が勝也の浮気癖に気付くには、そう時間はかからなかった。だからといって、それを問いただしても、『もうしない』と言うぐらいで終わっていた。そんな事が何度かあるうちに、勝也も謝れば許してくれるという気になってきた。

勝也は、「理恵は所詮、自分から離れて暮せるわけがない」と思っていた。また、これだけの裕福な暮らしを捨てるようなことはないと高を括っている。

理恵にしても、二人の娘のためにと我慢もしてきた。これまで親にも兄弟にも友人にも愚痴ったことがなかった。それは、理恵の見栄というより自尊心からだった。しかし、ここへ来て奈美に相談したくなった。

奈美と理恵は店主と客という関係から、次第に友達付き合いをするようになっていった。それは、理恵が良いところの奥様という立場より、奈美の自由な生活に憧れを持ったからにほかならなかった。奈美は自由な中でもって仕事で成功もしている。二人は独身と主婦という違う立場でありながら、結構楽しく交際をしていた。
そんな奈美の自由な世界がうらやましくも思っていた理恵は、何か自分の決心を聞いてもらいたくなっていたのだ。
奈美と理恵は渋谷で待ち合わせて、電車に乗った。二人は楽しい会話をするだけで核心に触れずにいた。電車は赤坂見附に着き、そこからタクシーに乗ってお目当ての店に来た。そこはゆっくりと寛げる日本料理店であった。

理恵は極力明るく振る舞っていたが、次第に深刻になっていき、とつとつと話し始めた。
「奈美さんは、結婚というものを夢として捉えられる」
と、尋ねた。奈美はやはり、その問題で悩んでいるのかと思った。

「私は結婚というものを現実として意義深いものであってほしいと望んでいるわ」

「現実は、最初に描いたものと違ってくる。現実は思ったようにならない。つまり、結婚は難しい」

「私は、結婚というものが人間である限り、子供を産む手段として捉えたくないの。ましてや、男性の世話をするための手段に使われたくない。結婚は、夫婦のやすらぎであり、その中で子育てをしたいわ」
と、若者のように微笑みかけた。

「意外ね。もうとっくに結婚に失望しているとばかり思っていた。まるで、若い女性の夢物語を聞いているようね。
 私は結婚を20年も経験してきて、もう沢山という気持ちだけど、奈美さんはこれから結婚を考え、子育ても考えるのね。
 これから結婚するとしても40年以上の結婚生活を送るのね。私よりも長くなるわ」
と、興味深げに言った。

「理恵さんは離婚したいの」

「ええ、主人の浮気が一向に止まなくて、今度は相手に子供ができてしまったのよ。私の娘たちも『離婚したら一緒に行きたい』と言ってくれているのよ」
と、話した。

「お子さんは、お二人とも大学生よね」

「娘は『卒業したら、理恵さんのところで働きたい』と言っているのよ」

「あら、ファッションに興味があるのね。お子さんも離婚に賛成してくれるのなら、理恵さんの決心次第。これからの自由も良いかもしれないわ。正当な権利は、全て主張してね」



二人は食事も終わって、近くにある静かなスナックへ行った。

「私は専業主婦だけど、共働き家庭でも、子育ては女性がするのよね」

「チーフや店長の話を聞くと、優しくなったとか亭主関白だとか、違いはあるみたいよ。私だったら、夫婦で子育てを一緒にしたいわ。でも、この世の中、難しいわね」

「女性が、結婚を遅らせれば良いのか。そうだったのね、今初めて分かったわ。奈美さんは、それを目指しているのね。後は、同じ考え方の男性を探せば良いのよ。でも、いないわよね」

「そうね、いないわね。それで独身なのよ」
と、微笑んだ。

「奈美さん、まだ子供だって出来るわ。夢を捨てずに結婚してよ」
と言って、晴れ晴れした気持ちになっている事に気付いた。

 理恵はそんな話をしていると、自分の離婚話も忘れて、奈美の結婚を応援したい気持ちになっていた。そして、今までの自分の結婚生活とは全く違う薔薇色の家庭があるように思えてきた。



 その後、藤原夫妻は話し合い、離婚を正式に決めた。そして、夫の藤原勝也は友人の河野純一と会っていた。勝也は離婚といっても、全面的に自分に非があると思っていたので、話しやすい独身の男性を選んでいた。

「妻と離婚する事になりました。そこで、証人になってもらえませんか」
と、切り出した。

「それは構わないです。でも、奥さんににらまれるようなのは嫌ですよ。奥さんやお子さんたちが、困らないように考えているのでしょうね」
と、尋ねた。

「河野さんは、優しい人だから、証人をお願いしたいんです。時々、河野さんの言われた事を妻に話すと、その度に良い人だと言うんです。妻も安心すると思いますよ。
 河野さんぐらいなら、いくらでも愛人を囲えられるのに、結婚はしないんですか」

「私は、そんな事、しませんよ。でも、本当に愛する女性が現れたら、結婚しますよ。そして、良い夫でもって、良い父親にも成りたいと思っています」
と、微笑んだ。

「結婚って、大変ですよ。僕の愛人に子供ができたのが許せないと言って、子供たちも妻に付いて行くみたいです。
今まで育ててきた事が、まるで水の泡になってしまうのですから、男って損ですよね」



河野は藤原という男性の考え方に頷けなかった。愛と遊びは違うと思った。遊びを優先して愛を忘れてしまっているように思われて仕方なかった。
また、河野は女性側にもシンデレラ願望があり過ぎると思った。その点で、河野は自立する女性が好きだった。頼られる喜びよりも、対等に付き合う関係が良かった。
そんな考え方は木藤昭夫と似ていた。しかし、違っていることがあった。それは、愛する女性が出来た時の河野の考えが決まっていることであった。河野は愛する女性が出来たら仕事を譲って、結婚しょうとずっと考えていた。
河野は愛するなら、片時も離れられないと思っていた。また、そう思える夫婦でありたいと考えているのだ。
しかし、そのことは今まで誰にも話したことがなかった。話をしても、そんな女性が現れなかったらどうしょうもないと思ったからだ。河野は男性だったので、そんな夢をいつまでも見られるのかもしれない。

河野は藤原のように、親から受け継いだ財産はなかった。しかし、一代で今の貴金属店を持つに至った。経営の手腕もあり、年毎に業績を伸ばしてきた。河野は社長で、弟に専務を任せ、いつでも退ける体制だった。弟は兄の信頼に答えて確りと仕事をしていた。ただ、弟は兄が結婚しない事に、首を傾げている。



河野は、藤原の頼みで離婚の証人になり、藤原の妻の理恵の頼みで奈美も離婚の証人になっていた。奈美は離婚届の証人の欄に署名捺印するときに、河野純一の氏名を覚えていた。しかし、河野は奈美が証人になった事は知る由もない。
そうして、藤原夫婦は離婚した。娘たちは母親の理恵と一緒に暮らす事となった。夫の勝也は理恵に2億円を渡して離婚したのだった。

理恵は奈美の近くのマンションを買って引っ越してきた。二人の娘は大学を卒業したら三人で何か仕事をしようと話し合っている。一先ず、三人でのんびり将来を考えようと明るかった。
理恵は45歳で、二人の娘は姉が20歳で妹が18歳だった。二人娘は父親を見て来て、女性が男性に頼る関係がいやだった。理恵もまだ若いのでやり直しをしたいと思っているところに、娘たちの応援があって離婚を決心したのだった。

勝也は妻子が家を出た後、愛人と息子を家に入れた。勝也は、息子を可愛がる一方で、女遊びを止める気配がない。
愛人は分かり切っていることと、養ってもらっているだけありがたいという具合だった。勝也はますます、女性関係がルーズになっていった。
愛人は勝也の家に入ったが、息子の認知だけで、正妻にはなれなかった。この女性は息子のためと、囲われの身の道を選ぶのだった。前妻と全く違わない生活をしていながら、勝也の気紛れで、いつ追い出されるか分からない身の上だった。



奈美はデザインの最新作を昨日、自宅で仕上げて気分よくしていた。軽い朝食を取って、はずんで店へ出掛けた。
店には先に店長の信枝が来ていた。信枝が仕入の既成品を陳列台に並べている。
「先生、おはようございます」
と、信枝が挨拶した。

「おはようございます」
奥へ行こうとすると、信枝が声を掛けてきた。

「先生、ファッション村山からの仕入で、付属品が壊れている洋服二着ありました」

「そう、持って来てください」
と言って、奈美は自室へ向かった。

「これなんですが」
と言って、奈美に渡した。

 それを見ると付属品のアクセサリーは明らかに仕損じ品であった。これはどう考えても仕入先で傷付いたというよりは、元々アクセサリーを製造した所のミスのように思えた。しかし、一応は仕入先に苦情を言うより仕方がないと思った。
「店長、私から村山の方に注意しておきます。不良品はまとめてこちらに持ってきてください」
と言うと、信枝は返事をして出て行った。

 それから、ファッション村山へ電話を掛けて苦情を申し立てた。相手側は平謝りで、代わりの品を持って来ると言った。
「申し訳ありませんでした。もし、店頭にでも出ていたならビロード様に大変なご迷惑をお掛けするところでした。早速、代わりの品をお持ちしたいと思いますので、よろしくお願いいたします」
と担当の課長から言われ、電話を切った。

午前中に、ファッション村山の課長ともう一人の男性がビロードを訪ねて来た。もう一人の男性は、名刺を出して丁寧にお辞儀をした。この男性はアクセサリー河野の社長で河野純一と言った。奈美は名刺を見て、何故、二人で来たかという疑問が解けた。
「この度は誠に申し訳ありませんでした」
と、課長は深々と頭を下げて謝った。

「この商品の付属品は私共で製造したものでございます。誠に申し訳ございませんでした」
と、今度は河野が頭を下げた。
 河野は制作の途中で仕損じに気付いてはじいてあったものが、間違って製品に混入してしまったと説明した。

奈美は河野の謝り方に好感を持った。とかくこうした問題で、第三者的にファッション村山をかばおうとする馬鹿者がいる中で、河野はそうしなかった。たとえば、『私共の全面的なミスで、ファッション村山様には何の落ち度もございません』ときた時だ。人を馬鹿にするのもいい加減にしてと、言いたくなると奈美は思った。
もし、仮にビロードがお客様にこの不良品を売ってしまった時に、ファッション村山やアクセサリー河野がお客様に、『ビロードには、落ち度や責任はありません』というようなものだと思った。それでは、お客様に対して失礼だと思った。落ち度のない者に対して文句を言ったお客様の立場がなくなるからであった。奈美は、お客様に仕入先からのチェックを怠った事を反省し、謝る事しか考えられなかった。
それは、ファッション村山もアクセサリー河野も分かっているようで、謝り方に注意を払っているように感じた。

河野はそうした、相手側の気持ちを逆なでするような言い方を決してしなかった。河野は紳士的に只々謝っていた。詫びを入れた後、奈美をランチに誘った。奈美は河野純一という名前が気掛かりだったので、河野の誘いを受けた。
河野はショッピングアーケードを抜けて、落ち着いた雰囲気のレストランへ入った。ここは奈美もよく来るが、昼食より夕食が多かった。河野は近くに何軒かの得意先があるらしく、ここへ来るとこのレストランを気に入って寄るようだった。



奈美は先程から気になっていたことを河野に尋ねた。
「もしかして、河野社長は藤原勝也さんのお知合いですか」

「はい、友人です。初対面とばかり思っていましたが、何処かでお目にかかっておりますか」
と、尋ねた。

「いいえ。藤原夫婦の離婚の証人になられていませんか」
と、単刀直入に尋ねた。

「ええ、成りました」
と、不思議そうに奈美を見た。

「私も離婚の証人に成りました」
と、微笑んだ。

「そうでしたか。私は森下先生が証人として署名する前だったので、知りませんでした。でもよく覚えておられましたね」
と、感心した。

「字は違いますが、学友に同姓同名の人がいました。順番の順ですが」
と、理由を話した。

「奥さんやお子さんたちが安心して暮らせるのが一番ですから、そこを言いました」
と、やさしい目をした。

「不思議な縁ですね。でも、河野さんで良かったと思います」
と、笑みを浮かべた。

「離婚というのは大変なエネルギーが必要なんでしょうね。私は独身だから、経験ありませんが」
と、河野は言った。

「今では、三組に一組が離婚していますよね。因みに、私も独身ですが」
と、奈美は照れ笑いをした。

「でも、独身は正解かもしれませんね。女性が結婚して幸せを感じられるかと考えていると、この年になってしまいました」
と、神妙な顔をした。

「女性の心理を読み取っているんですね」

「いいえ、分からないから独身なのでしょうね。話しが別な方向になってしまい申し訳ありませんでした」
と、恐縮した。

「いいえ、もう気にしないで忘れてください。別な話になったのは私のせいですから。でも、改めて仕事のお話がありましたらおいで下さい」
と、奈美はやさしく言った。

「もし、よろしかったら仕事だけでなく、改めてお逢いしたいです」
と、真面目に河野は言った。

奈美は今日が初めての河野に好感を持っていたので、やさしく頷くのであった。それから二人は親しく交際するようになっていった。純一は交際を深めて行く間に自分が夢見て来た生活が奈美となら出来るような気持ちになって来た。
奈美は今までになく、恋に落ちている自分を感じているのであった。そして、今まで以上に純一といる時間を大切にしたいと思っていることに気付いていた。いつしか、このままずうっと一緒にいたいという気持ちにかられるのだった。しかし、まだ奈美は自分の感情の欲する意味を理解できないでいる。
そんな時、奈美は初めて妊娠に気付くのだった。今までなら、避妊には神経を使って、間違っても妊娠するようなことはなかった。しかし、奈美は一番妊娠しやすい日に、避妊を怠った。45歳になり、出来る事なら純一との子供であれば、欲しいという気持ちが芽生えていたのだった。
 


奈美は、産婦人科へ行って、正式に妊娠を確かめた。その後、純一に連絡を取って、奈美のマンションへ来てもらった。
「純一さん、妊娠したのよ」
と、嬉しそう言った。

「本当、それは良かった。でも、奈美さんの体が心配だよ。その点、大丈夫なの」
と言って、気遣った。
 奈美自身も分からなかった。今のところはまだ何も問題はなかった。ただ、医師からは、何事にもくれぐれも注意するように言われて来ていた。また、何かあったらすぐに飛んでくるようにも言われていた。
 
 純一は、出来上がって来た婚約指輪を内ポケットから取り出し、奈美に言った。
「奈美さん、僕と結婚してください。出会った時から予感があり、交際が深まれば深まるほど、結婚するなら奈美さんしかいないと思ってきた。
 僕は長年夢見て来た生活がある。それが今、奈美さんとなら実現できると思う」
と、婚約指輪を差し出した。

「私は子供を一人でも育てていけると思ってもみたけど、純一さんから求婚されて嬉しい。でも、今から二人で上手くやって行かれるかしら」
と、心細げに言った。

「もし、奈美さんが僕のプロポーズを受け入れてくれるなら、僕は仕事を辞めるよ。そして、奈美さんにも仕事を辞めてもらいたい。僕が夢見ていた生活というのは、落花生のような家族なんだ」
と、純一は言って微笑んだ。

「あのピーナッツ」
と、首を傾げた。

「落花生は、夏に黄色い花が開く。その花が枯れた後には、めしべの一部の子房が地中へ伸びて実を結び。そして、あの落花生ができる。
 僕は今まで仕事に打ち込んで、やるだけのことを十分やってきたつもりだ。もう思い残すことはない。だから今、奈美さんと花を咲かせた後は、都会から離れて広々とした大地で子育てを二人でやりたい。
 奈美さんの子房が落花生となり、それを僕が窒素化合物を供給する根瘤となって守る。何事も二人で協力してやり遂げよう」
と、奈美のわだかまりをほぐすように言った。

「家庭に入る事が、自立を阻むように思え、抵抗感があった。でも、純一さんの考えって、40代や50代の子育てで、孫の面倒ではない熟年の子育てって良いと思うわ。
 私も純一さんとなら、仕事を捨てて第二の人生にかけられる。これからは、子育てを通して、豊かな人生を営んで行きましょう」
と、奈美も決心を固めた。



 純一は弟の浩二に仕事を譲り、奈美は藤原理恵に仕事を譲って結婚することにした。浩二は最初、冗談と思って信じられなかった。しかし、純一が真剣に言っている事に気付いて、真面目に話を聞き始めた。

「浩二、俺も結婚することにしたよ」
と、照れながら言った。

「兄さんも年貢の納め時が来たね。おめでとう。ビロードの森下先生だろ」

「ああ、もちろん」

「でも、ビロードはどうなるの」

「お互い、仕事は辞めるよ」

「ええっ、兄さんも辞めるってどういうこと。説明してくれよ」

「会社は浩二に譲るよ」

「兄さん、冗談だろう」

「俺は真面目だ」

「兄さんは、森下先生にのめり込み過ぎだよ。男が仕事を捨てて何をするんだ。一時の気の迷いだ。確りしてくれよ。兄さんは、これからじゃないか」
と、呆れ顔で言った。

「浩二、俺は社会から成功して立派だと言われるより、妻子に立派な夫や親だと言われたいし、それがひいては自分の幸福につながると信じている。
 若いうちから家庭に憧れてマイホームパパになりたかったわけでもない。それは、男女とも無理があるように思う。20や30でやりたいことを済ますわけにはいかないからだと思う。俺は、50までに自分に出来る最大の事をやってきたと思う。これは、彼女も同じ事が言えると思うよ。

 しかし、二人にはやり残した事がある。それが、結婚であり、子育てだ。彼女に子供ができた。俺は自分の子供と片時も離れないで見守っていたい。子供と正面切ってぶつかって、育て上げたい。子供はある程度育ったら巣立っていくだろ。でも、夫婦はいつまでも一緒。
今の時代と逆行しているように思えるだろうが、今の時代の方が、夫婦のきずなが薄いんじゃないか。俺は、愛した彼女と子供とで自分の信じた道を歩むつもりだ」

「兄さんがそこまで考えていたとは知らなかった。俺も心から祝福するよ。そして、会社の事は任せてくれ、立派に受け継いでいく。
 俺も家内を大事にしなければならないかな。夫の仕事の満足が必ずしも、妻や子供の幸せと一致するとは限らないわけだ。養うために仕方ないと言っても、兄さんみたいな男が増えたら、そんな言い訳も通用しなくなるか」
と、理解を示した。



 一方、奈美は理恵に女心を分かってもらえて、万事上手く進んだ。ビロードのチーフデザイナーの水島裕子も店長の田川信枝も心から喜んでくれた。奈美は裕子にウエディングドレスを託した。
 理恵は、夫婦が一つの心で事を成し遂げようということは素晴らしいと言った。裕子は、何事も全力で打ち込むのが奈美らしいと言った。信枝は、真実の愛を貫くのが羨ましいと言った。
 奈美の周囲はみんなが自分の事のように喜んでくれた。まるで、若い娘が恋い焦がれてお嫁入りするようだとからかわれる奈美だった。純一と奈美の結婚式は豪華というものではなかったが、大勢の友人、知人、親類から祝福された。

 そして、『落花生家族』なる愛情物語を友人代表から明かされた時には、満場の招待客から拍手喝采を浴びた。
 招待客の間では改めて夫婦の在り方を問う光景があちらこちらで見られた。二人の結婚は、偶然の出来事と言えるだろうか。こうした生き方は、現代の結婚生活があまりにも不自然だからではないのか。
会話のない夫婦、帰宅の遅い夫、すれ違いの夫婦、養ってやる式の傲慢な夫、不貞や暴力のある家庭、身勝手な生活をしている夫婦、男尊女卑が横行している夫婦、仕事優先で家庭を顧みない夫、子供中心で夫を顧みない妻、隙間風が吹く夫婦など様々に乱れ切った家庭が浮き彫りになっている。
 ただこれが問題になっているのは、今まで発言権のなかった女性や若者が口を開き、行動に移してきている現実があるからだろう。でも、いったい誰に対して耐えているのだろうか。男性も女性もみな幸福になりたい、意義深い人生を送りたいと望んでいるのに。
 結婚式は、招待客の中にさわやかな風を送り込んだ。招待客を見送る二人に、絶え間なく祝福の言葉が贈られていた。



 新居は、田舎の趣のある古民家を探し、再生することにした。広い畑も付いているので楽しみにしていた。結婚後は奈美のマンションに住み子供が生まれるのと新居が出来上がるのを待った。
 純一は身重の奈美の体を心配しながら、甲斐甲斐しく世話をするのだった。奈美のお腹がみるみる大きくなり、奈美が苦しそうにしているのを見るとやはり、高齢出産なのが気がかりだった。
奈美は、つわりが始まり、横断歩道を急ぐと乳房が揺れて痛いことや重いものを持つとお腹が石のように固くなること、大きいお腹から足や手が押し上げられてくることなど、初めての経験を味わっていた。
朝は7時に目を覚まし、二人で朝食の用意をする。二人で向かい合って会話をしながら食事をする。そして、二人で会話をしながら、後片付けをする。これは、女性のよくするお喋りとなんらかわりはしない。
これが、子供が生まれたら、子供の世話を交代でしながら行うのだ。これを、女性だけでしている現状の方が大変だ。

しかし、一人で出掛ける事もあるし、器用な二人は家で得意な手作りにいそしむ事もあった。それをお互いが覗き見したりしている。田舎暮らしでは、地域の人々と自然に帰ろうと話しているのだった。



奈美は朝方、妙にお腹が張り痛みを覚えた。まだ予定日に二週間前だったので、気楽に構えていた。それから、おしるしがあって出産が近いことを知った。
「純一さん、もしかしたら今日生まれるかもしれないわ」
と、嬉しそうに言った。

「無事生まれてくれるといいね」
と、やさしく言った。

「陣痛が始まったわ。間違いなく生まれるわよ」

「じゃ、病院に電話しょう」

「ええ」
と言って、病院に連絡を入れた。

 高齢出産なので、病院では陣痛の間隔が15分になったらもう来るように言われた。奈美は陣痛が始まるたびに呼吸を整えながら痛みに対応していた。そして、全ての準備を済ませて、純一の運転で病院へ向かった。
 病院に着いてからは、陣痛の間隔が狭まり、純一の励ます声が遠のいて行くことに気付かなかった。しかし、握り返す純一の手の力は奈美の不安を和らげていた。純一も奈美の手から唯一伝わってくる生命誕生の力強さを感じて胸が熱くなっている。純一には出産の神聖さがひしひしと伝わって来た。そして、この思いを分かち合える親子の関係がいとおしかった。
 奈美は看護師に付き添われて、分娩室へ向かった。陣痛の痛みに耐えかねていたが、“すぐに忘れる”そして次を生みたくなると妹から聞いた事を思い出していた。後は、助産師と医者の言葉に従うしかなかった。
「おぎゃあ、おぎゃあ」
と、産声が聞こえた。

「男のお子さんです」
と、助産師が言って、息子をお腹に乗せられた。

 奈美はほっと一息つくと同時に感動が伝わって来た。助産師の赤ちゃんの世話を見ながら、眠りについた。
 純一にも男子誕生が伝えられた。純一は、しばし待たされて、奈美と息子に会うことができた。
「頑張ったね。元気な赤ちゃんだよ」

「ええ、無事生まれて良かったわ。純一さんがいてくれて心強かった」
と、微笑みかけた。

 息子の名前は恒星と名付けられた。

 二人は、この喜びの瞬間を決して忘れないと心に誓うのだった。これから愛の結晶を二人で育てて行く生活が始まる。
 その生活は、家族で永遠に回り続けるものだろうと思えた。そして、純一は五十年以上もの時間があろうとも、奈美とのこの暮らしを続けて行けると確信するのだった。
 


1975年から出生率の下降が始まり、年金を支えるために少子化が問題になっている。そのため、年金支給開始年齢を引き上げる事ばかり議論になってきた。55歳まで働けば年金暮らしが出来ると思っていたサラリーマンは、今となっては夢のまた夢。人生100年時代が来る昨今、いつまで働かなければならないのか。それに、松下幸之助さんが、「年金は破綻する」と言った。それは、「私のような人にまで年金をだすなんて」と。

しかし、多産多死による、発展途上国の人口増加は止まっていない。また、多産少死から少産少死に移り変わろうとしている現在も人口増加は止まっていない。
人口爆発による地球温暖化は止まらない。世界人口約76億人の欲求を満足させるための経済発展は、許容量を超えて地球規模の破壊をもたらしている。だが、“すぐに忘れる”のが人間だ。
積極的に老若男女問わず働けば、晩婚化や未婚化が進むのは当然の結果。結婚をして子育てをしようとしても、日本の社会システムのもとで婚姻は、出産の安定的な機能を果たしていない。日本の出産の約98パーセントは、法律婚夫婦からだ。つまり、日本の婚外子は約2パーセントであり、世界とはかけ離れている。近年、婚外子はフランス・スェーデン・イギリスでは50パーセント前後、スペイン・オーストリア・アメリカでは約40パーセント、ドイツ・オーストラリア・カナダでは約30パーセントと割合が多い。

一人で食べられなくても、二人でなら食べられると言われていた時代があった。
しかし、現代は結婚できないほど生活が苦しい若者たち。結婚しなくても楽しく生活ができる若者たち。結婚で自由が奪われたくない若者たち。世間体で結婚しなくても良くなった若者たち。恋愛下手になった若者たち。これらの若者たちにも社会保障があり、結婚には不安定要素があり過ぎる。

 晩婚化は、自然界つまりは地球が欲しているのだろう。熟年に子育てをすると、人口爆発にも歯止めがかかる。先進国の人口減は、売るための人口増や人手不足のための人口増ではなく、みんなが幸せになるための地球規模の適切な人口という事のために、自然の摂理が具現化しているのだろう。

将来、世界はAI(人工知能)により40パーセントの労働力が奪われると言われている。そんな中、グローバル化により先進国が必要以上の食糧や製品を生産するため、それを担っている発展途上国に森林伐採や労働者確保の形で、地球規模の破壊を増進させている。そして、発展途上国などが飢餓にあえいでいるのをよそに、先進国では食物が廃棄されている。こんな事を永遠に続けている地球でいいのか。

 近年の三種の神器と言われている全自動乾燥機・食器洗い機・ロボット掃除機をどれも持っているという人が、10パーセンにも満たないと言われている。1950年代の冷蔵庫・洗濯機・白黒テレビは、豊かさの象徴だった。1960年代のカラーテレビ・クーラー・自動車は高度成長時代の象徴だったかもしれない。
しかし、近年は、車はいらない、家はいらないなど、モノ離れや消費離れが加速している。また、恋人もいらないという人たちまで現れてきている。


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