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作品名:ミツバチの日記帳‐鏡像の系譜‐ 作者:サカキショーゴ

第19回 京都迷宮の乱@〜爆走する鉄機〜
 午後19時4分

 とある高速道路の上を、7つの光が疾走している。
 光が当たった箇所は、まるで昼間であるかのように錯覚させるほど明るい。
 故にその明るさは、光を放つ者同士さえも照らし合い、
 その高貴にして鋼機なる正体を露にした。

 その姿は、まるで鋼鉄の鎧をまとった馬のようであった。
 鋼鉄の馬達は、耳の鼓膜どころか魂さえも震え上がらせる、
 まるで天使と悪魔の絶叫の如き凄まじい爆音を放っていた。

 そんな馬の正体は、京都州にて行われる侠技にて、鹿児島組側に付いた、
 滋賀州に拠点を構える極道一家『滋賀組』の所有物。
 昔懐かしの二輪駆動車の殻を被った怪物バイク≠フ大群だ。

「ねぇユーリ!」
 高速道路を爆走する、そんなバイクの中の1台に乗りながら、
 美羽瑠は両手で、自分の前に座る運転手の腰をしっかり抱き、
 絶叫に近い大きな声で親友を呼んだ。
「そもそもどうしてコヒメちゃんとヒメカちゃんが!
 私達が今から相手しようとしている人達が間違えるくらい!
 顔が似ていたと思う!?」

 少しでも気を抜けば、身体……いやそれが無事でも、
 意識が遥か後方へと吹き飛びかねない慣性や遠心力。
 さらには凶暴な向かい風が襲い掛かる中で発せられたその声は、
 悲しい事に小声程度の声量しか、優梨に届かない。

 それでも優梨は、なんとか親友の声を聞き取り、
「もしかして! 実は2人は! 生き別れの双子の姉妹だった! とかじゃない!?」
 となぜか美羽瑠以上にハイテンションな大声で返した。
 現在進行形で美羽瑠と自分に襲い掛かる、意識を持って行かれかねないほどの慣性と遠心力、
 さらには暴風の暴威が、彼女の好きな絶叫マシンの迫力にどこか通じる所があるからだろう。

 ……だが、

「……え、ゴメン!! 全然聞こえないからもう1回!!」
「…………だ!! か!! ら!!」
 爆音のせいで全く届いていなかった事実を知り、数瞬だけ唖然とする優梨。
 そして再び大声の応酬が始まる……かと思いきや、

『おい! ヘルメットに無線付いてるからそっち使えよ!』
『つうか高速移動中のバイクの運転中に会話できるか!!』

 2人がそれぞれ腰を抱いている相手から、ヘルメットの無線越しにツッコミを入れられた。
 無論相手のライダーは、女性である。

 いやそれ以前に、男性だったらミツバチヒロインのファンのみんなから大ブーイングである!!

 それはそうと。
 バイク軍団はそれぞれ2人乗りで、黒幕の本拠地へと向かっていた。
 目的はもちろん、今回の事件の黒幕であろう極道組織の誘いに乗じ、
 隙を見て、今回の事件の重要人物である2人の少女を奪還するため。

 それならば別に車で移動してもいいんじゃないかと、最初美羽瑠と優梨は思ったが、どうもバイクは、
 今回2人が向かう事になった『京都組』が今回執り行うと思われる名物侠技に必要なモノらしく、
 どうせだったらバイクを車で運ぶよりも直接バイクで行った方がてっとり早い、という提案を、
 現在2人がそれぞれ乗るバイクを運転している極道一家『滋賀組』の女性組員達からされたので、
 2人はこうして、それぞれ2人乗りでバイクに乗っているのである。

 いや、正確には彼女達だけではない。

『す、スゲー! まさか伝説のハナサキの「ブレス1200」に乗れるとは!!』
『しかもその改造版だろ!? マジスゲー! 生きててよかった!!』

 美羽瑠と優梨が乗るバイクの後方を、エンジン部分がむき出しの1台のバイクが走っている。
 今回の事件で敵対した組織の組員によって拉致されたと思われる、友人の母親を取り戻すために、
 かつて近畿と呼ばれていた地にまで、被害者である友人達と1日かけてやってきた、
 琉奈の後輩である、兵藤卓弥と坂元裕士の2人が乗るバイクだ。
 ちなみに運転はバイク好きなヤンキー系少年こと坂元裕士が担当している。

『というか、いいんス……いいんですか? 俺達こんなスゲー伝説級バイク貸してもらって』
 相手が極道であるが故に、恐縮して言葉遣いを変える裕士。
『へ、下手をするとこの侠技とかいうので……オシャカになるかもしれないですよ?』
『おいユージ、そんな不吉な事を言うな!! こっちまで気落ちするじゃねぇか!!』
 しまいには、バイクを壊した後の心配をするという、らしくない事まで言う裕士。
 思わず卓弥が、バイクで爆走している自分達に容赦なく襲い掛かる、
 慣性と遠心力、そして暴風が無ければ、親友の後頭部を引っ叩いて、
 気合いを入れてやりたいと思ったほどだ。

 戦いに行く前に負けた場合の事を考えて気落ちしてしまえば、勝てる戦いも勝てない。
 さらに、自分達が気落ちするのは、自分達のシマで狼藉を働いた身内への引け目を感じているから、
 という理由も勿論あるだろうが、その身内の狼藉のオトシマエをつけるのに協力している自分達に、
 わざわざレトロな伝説級バイクを貸してくれた、極道一家『滋賀組』の好意を裏切る行為だ。
 卓弥はそれらを、伝説級バイクを運転している事で有頂天になっている裕士よりは理解していた。

 するとそんな2人の会話を無線で聞いていた、バイク軍団の先頭のバイクにて2人乗りをしている者達の内の、
 荷台側に座っている『滋賀組』の若者頭は、無線越しに『ハハハ』と笑い声を上げると、
『まぁ……普通は貸さねぇけどよ』
 と切り出し、途中からドスのきいた声色に変えながら言った。
『ウチの身内がやらかした事件の被害者様が、その解決に協力してくれるってんだ。
 それでこっちがいろいろ出し惜しみ無しで協力しねぇと……申し訳が立たねぇよ』

『『……あ、あはははは』』
 本気で、裏切った身内に対して怒っている。
 その事が誰にでも分かる声色を聞き、裕士と卓弥は苦笑するしかなかった。
 同時に、その怒りが、もしバイクを壊した場合に……自分達に向けられませんようにと、
 2人同時に、心中で滝汗をダラダラ流しながら思った。

『というか2人とも』
 ふいに、若者頭が乗るバイクを運転している若者頭補佐が話しかけてきた。
『今回の侠技について……巧壱くんに聞いていますよね?』
『?? あ、はい。一応一通りは聞いてます』
 裕士が、運転に集中しながら答えた。

     ※

 数時間前

「まず京都州へだが……」
『鹿児島組』の若頭である東郷幹也から、自身も所属する極道連合『極道四十七曾』が、
 仲間内で抗争せずに揉め事を解決できるよう作った決闘法、通称『侠技』について教えられ、
 それぞれの敵対組織の本拠地に向かわせるベストなメンバーを、悩みに悩んで決めた巧壱は、
 1度眉間を右手で揉み解すと、ついにその選抜メンバーを発表した。

「白鳥と菅原……それと、飛び入りではあるが……琉奈の後輩である……え〜……っと?」
「あ、俺は兵藤卓弥っていいます」
「俺は坂元裕士っす」
 あまり面識が無かったがために、名前をよく覚えていない後輩は改めて名乗った。

「……兵藤と、坂元だな。2人も京都に行ってほしい」
「ところで須桜くん」
 裕士と卓弥の返事が出る前に、優梨が質問した。
「私達が選ばれた理由を知りたいのですが」

「あ、それあたしも気になる!」
 優梨の言葉に美羽瑠も同調した。
「いや、それ言ったら俺達も訊きたいですよ!」
「そうっスよ須桜先輩!」
 ついでに裕士と卓弥も同調した。
 確かに誰もが答えを知りたい疑問ではあるが、
 立て続けに質問された巧壱の気持ちも考慮すべきだろう。

「……それは今から説明するから、菅原以外落ち着け」
 案の定、巧壱はげんなりしながら3人を注意した。
「それで、みんなが選ばれた理由だが……京都でおこなわれる侠技は、
 バイクと武器が必要不可欠なヤツだったからだ」
「「「「バイクと……武器?」」」」
 4人は頭上に疑問符を浮かべた。
 まさかヤンキーの間で100年ほど前に流行った『チキンレース』の類だろうか、
 と4人は同時に、偶然にも同じ事を思った。

「侠技の名前は『黒須路宇怒騎輪愚(クロスロードキリング)』だ」
 巧壱は説明した。
「幹也さんによれば、大昔の京都にて、陰陽師によって行われていた、
 退魔の儀式がルーツとされている侠技……なんだと」
「な、なんだか投げやりな言い方やな、巧壱」
 巧壱の話を黙って聞いていた櫂が、苦笑しながら口を挟んだ。

「そりゃあ、投げやりにもなるよ」
 巧壱はその場で溜め息をついた。
「ネットにも情報が載っていないような、あまりにぶっ飛んだ内容の……デスゲーム、
 とまではいかないが、それなりに危険なゲームなんだから。
 説明を聞いただけで頭痛がしたよ」
 あ、なんだか疲れているような感じだったのはそのせいか。
 巧壱の説明を聞いて、さっきまでの彼の言動に対しみんな納得した。

「あ、でもそれ大地先輩が書いた『暴走歴女!!』の巻末の用語集に書いてありますよ」

 だがその空気は、宇宙の一言によって驚愕のソレへと変貌し、
 みんな一斉に「はぁ!?」と声を上げて目を見開いた。
「巻末にはこう書いてあります。え〜っと、なになに」
 しかしみんなの反応よりも、ライトノベルの巻末の方が気になるのか。
 自分がやっとの思いで手に入れた捜査資料のページをパラパラめくり、
 問題のページを探し出すと、宇宙はその内容の音読を始めた。

     ※

【黒須路宇怒騎輪愚】

 世界にまだ魔術という神秘が残っていた平安時代において、
 その神秘を御せる術を持つ陰陽師の一派が考案したという退魔儀式。
 道教より伝わりし呪術『禹歩(うほ)』を基礎として生み出されており、
 まるで碁盤の目の如く張り巡らされた京都の、決まった経路を馬に乗って縦横無尽に移動し、
 京都の外より来たりし災厄やそれを起こす妖魔を都の外へと退ける結界を構築する大規模儀式である。
 しかしその大掛かりな儀式故に、最後までやり遂げようとする陰陽師がほとんどおらず、
 さらにはのちに最強の陰陽師となる安倍晴明が考案した、より単純な退魔儀式の登場により、
 平安時代後期にはその存在は完全に忘れ去られた。
 しかし昭和時代に入ってから、京都を拠点に活動していたとある暴走族の、
 陰陽師を先祖に持つ総長により、チキンレースとして、
 ルールを多少変更した上で復活したという。

 相田太一著 イグニッション・カンパニー刊『暴走歴女!!』巻末用語集より

     ※

「な、なるほど……なかなか興味深い内容ですね」
「「「「「「「「いや、絶対ウソ(でしょ)だろ!?」」」」」」」」
「つうかなんでそんな内容がラノベに載っとんねん!?」
 とても神妙な面持ちで、しかも冷や汗を一筋流しながらの宇宙の発言に、
 さすがに巧壱以外のメンバーがツッコミを入れた。
 ちなみに巧壱はまたしても頭痛を覚え、頭を押さえた。

 というか、昔こういう漫画≠ェ存在しなかっただろうか……?

「……コホン。まぁとにかく」
 頭痛に耐えながら、巧壱は話を戻した。
「その侠技は、今では馬の代わりにバイクを使っているらしい」
「ま、今の日本国の道路で馬を走らせるのはいろいろ無理あるしな」
「法律上は走らせてもいいらしいけど……ハズいわなぁ」
 龍斗と櫂がコメントした。

 みんな、内容が内容だけに苦笑した。
 確かに馬で移動する者など存在しないこの世界で、
 そんな時代錯誤な移動手段を使う者は凄まじく浮く事になるだろう。

「……そしてその内容だが」
 再び巧壱は話を戻した。
「まずこの侠技は、1チームにつき16名ずつのチーム戦。
 侠技参加チームは、開催者の本拠地である京都御所の前で相手チームと顔合わせし、
 スタート地点を決めてそこに向かい、発車の合図と共にバイクを走らせる。
 そして縦横無尽に京都州中を回りながら、敵機のバイクへと攻撃し、転倒させ、
 最終的に、救護要員以外の敵機を全滅させた組が勝利となる。
 なお侠技中は、敵機の操縦者及び攻撃役の者に危害を加える事と、
 急停車、及び走行中のUターンは禁止……と、こんなだった」

「巧壱……またしても投げなりやな」
 巧壱の心中を察し、櫂は苦笑するしかなかった。

「でも、どうして……それの選手にあたし達が選ばれたの?」
 美羽瑠が質問した。
「まず始めに、坂元と兵藤はバイクに慣れている。
 巻き込まれた形ではあるが……協力してくれたら心強い」
 心強い、と言われて裕士と卓弥はへへっと照れ笑いを浮かべた。
 正直言って、どれほど危険か理解しているのかわからない笑みだ。

「そして白鳥と菅原だが……まず白鳥」
「ん? あたし?」
 美羽瑠は自分を指差しながら訊ねた。
「白鳥は紅一点な立場が嫌いだよな」
「ええ、嫌い!」
 巧壱の確認に、美羽瑠は即答した。

「まぁ幹也さん達が女性メンバーを選抜してくれる可能性もあるが、
 それでも見知った女性メンバーがいた方が心強い……そうだろ?」
「まぁね」
 またしても即答する美羽瑠。

「だが琉奈は別の場所での侠技で必要だ」
「え、そうなんですか?」
 優梨が質問した。
「ああ。相手の本拠地の関係でな」
「「????」」
 美羽瑠と優梨は顔を見合わせ、疑問符を浮かべた。

「それに菅原は、ボウガンが得意だ」
「それが……侠技となんの関係が……?」
 巧壱の発言の意味が解らず優梨は訊いた。
 すると巧壱はフッと笑みを浮かべ、
「飛び道具なら、相手が遠くに居ても先手を打てる……というか撃てる」
「ああ! なるほど」
 優梨はようやく納得した。

「で、あたしは?」
 美羽瑠が腕を組みながら訊いた。
「残ったから、なんて答えじゃないでしょーね?」
「もちろんだ」
 巧壱は頷いてから答えた。
「基本的に侠技には、救護を担当とする者が必ず参加しなければいけないらしい。
 まぁ内容が内容だから、救護班は絶対に必要なんだろうけど……。
 で、白鳥にはその役目を担当してほしい」

「なるほどね」
 美羽瑠は選抜の理由に納得すると、優梨の方を向いた。
「ユーリ、ケガをしたらあたしに任せて!」
「心強いわ。ありがとう」
 優梨は微笑んで答えた。

「あと、こっちが白鳥の役割の本命なんだが」
「……え? まだやる事あるの?」
 美羽瑠は眉をひそめて訊いた。
「ああ。まぁ……余裕があれば、でいいんだが……」
 そして巧壱は、美羽瑠がすべき本命の役割を説明した……。

     ※

 現在

『……それならどれだけ危険か、ある程度理解しているとは思いますが?』
 滋賀組の若者頭補佐の男性が、裕士達に訊いた。
 自分達がカタギと比べて、どれだけ危険な集団かを理解しているからこそ。
 そしてそんな自分達と対峙する事になったカタギを心配しているからこその質問である。
 聞きようによってはカタギを見下しているようにも聞こえる質問だったが、
 裕士と卓弥の2人はそこに気付かなかったのか、

『正直言って、我々の身内との戦いに……勝算あります?』

『『あるわけ無いです!』』

 と2人同時に即答した。

『けど、俺達の友人の親が拉致られたんだ!』
『勝つ事はできなくても、少しは役に立ちたいんですよ!』
 そして2人はそれぞれ、本音を……なぜか大声でシャウトした。
 もしかすると、2人はこれからおこなう戦いに恐怖を覚え、
 それを紛らわすために叫んだのかもしれない。

『そ、それにさ!』
 裕士は、誰が聞いても空元気であると分かる声で話し出した。
『極道相手の決闘に対して、午後中に何も用意しなかった俺達じゃないです!  なぁ!?』
『お、おおおおおおおおうっ!』
 そしていきなり話を振られ、キョドってしまう卓弥。

『『????』』
 何の事やら、そして何故にキョドるのか想像もつかず、
 若者頭とその補佐は、同時に疑問符を頭上に浮かべた。

     ※

『ところでさっきの質問なんだけどぉ』
 一方美羽瑠は、優梨に無線越しに話を再開した。
『小姫ちゃんと姫花ちゃんの話?』
 優梨が訊ねると、美羽瑠は『そうそう!』と嬉しそうに答えてから訊ねた。
『どうして2人は顔が似ていたと思う!?』
『だから、生き別れの双子の姉妹とかじゃないの?』
 先ほどの回答を再び告げる優梨。

 すると美羽瑠は怪訝な顔をし、
『でもそれだと、なんかおかしくない?』
『おかしい?』
『うん』
 美羽瑠はそう返答すると、少し間を開けて続きを話した。

『もしそうなら、ダイチさんが鹿児島組から、
 養子としてコヒメちゃんを預かったなら、どうしてコヒメちゃんは、
 ケンジさんとヒカルさんしか知らない情報を知ってたのかな?』

『……それもそうね』
 親友の指摘に、優梨はポーズを変えずに考え込んだ。
 確かに優梨が提唱した『姉妹説』が真実ならば、なぜ羽佐間家だけが知る情報を知っていたのかが謎になる。
 実は羽佐間夫婦と鹿児島組が知り合いだった、という仮説だけでは説明がつかない謎だ。

『それに、実子を養子としたなら……鹿児島組の他の組員にその事が、
 組長さんの口から伝えられるんじゃないかなぁ?』
『……確かに』
 そしてさらなる親友の指摘に、もう優梨は反論する事ができなかった。
 実子を養子に出すという行為は、家族のこれからに関する重要な知らせである。

 武田信玄のように、敵を欺くために自らの死を家臣達に知らせない……などの知らせは例外だが、
 さすがに実子を養子に出す事は、カタギだろうが極道だろうが、周りの者に知らせた方がいい知らせだ。
 にも拘らず、鹿児島組の組長は『姫花と双子の姉妹である小姫を養子に出した』などと、
 組員達に知らせた節が、少なくとも組員達の会話からは感じ取れない。
 という事はすなわち、小姫と姫花は、双子ではない可能性が高い。

『もしかして、亡くなった小姫ちゃんの生まれ変わり……とか?』
 血が繋がってないにも拘らず、家族としての情報を持っている事を説明できる仮説は、
 もう優梨の中ではこれしか存在しなかった。
『あー、なるほど』
 美羽瑠はすぐに納得……しかけたが、そのすぐ後に『ん?』と首を捻り、

『でも世界中から、そんなすぐに捜し出せるのかな?
 それに、その説じゃ顔が似ている事の説明がつかないと思う』
 と質問を返した。

 確かに、転生する胎児をあらかじめ指定していたのならばともかく、
 不慮の事故で死んだ娘の転生先など、分かるモノではあるまい。
 いやそれ以前に、この世界に於ける死後の選択肢の中に
『転生』が含まれているのかどうか疑問ではあるが。
 さらに言えば、確かにそれだと顔が似ているワケが説明できない。
 というか美羽瑠、訊ねてばかりいないで自分でも考えたらどうだろう。

『……難しい、わね』
 美羽瑠の指摘に、優梨はまた考え込んだ。
『でも、記憶を覚えている理由と言ったら……それしか考えられないわ』
『それも事実よねー。ああもう、いったいコヒメちゃんは……何者なのかしら?』
 美羽瑠は遠い目をしながら呟いた。

『何者かって言ったら』
 するとここで、優梨はある事を思い出した。
『出発前に宇宙さんから送られてきた「ムーチューブ」のあの映像に映ってたの……あの人≠謔ヒ?』
 例の、邪馬台国論争を終わらせた考古学者が映っている動画を頭の中で再生させながら、
 優梨は美羽瑠に、自分の見間違いであってほしいと願いつつ確認をとった。

『ええ、絶対アイツ≠諱I! 1度見たら忘れられないわ!!』
 だが優梨の願いも虚しく、美羽瑠は急に怒りを覚えて声を荒らげた。
 どうやら残念な事に、見間違いではないらしい。
『でもなんであの人≠ェ……あの映像に映っていたのかしら?』
『まぁアイツ≠燗チ殊能力者なんだし、興味本位に参加したんじゃない!!?』

 美羽瑠をあそこまで怒らせるアイツ≠ニは誰なのか。

 それについては、また別のお話である。
 


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