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作品名:ミツバチの日記帳‐鏡像の系譜‐ 作者:サカキショーゴ

第18回 暗躍する闇達〜絶望と希望〜
 
「それで、首尾はどうだ?」
 1人の男が、隣に立つ男に訊ねた。
「ちゃんと、邪馬台国の鍵≠ヘ開きそうなのか?」
 男がさらに訊ねる。

 すると隣に立つ男はニヤリと笑みを浮かべながら、
「はい。すでに各地に私達の仲間を配備しています。
 あとは鍵穴≠ウえ見つかれば、いつでも解錠できるかと。
 しかし……」

「邪馬台国の最深部へと至る鍵、か」

 最初に訊ねた男が、相手の言葉にかぶせるように呟く。
 しかし相手は気分を害した様子も見せず「ええ、おっしゃる通りです」と告げた。
「邪馬台国の鍵≠ニして機能しそうな少女は2人。
 どちらもあの女≠フ関係者の子孫で、間違いないでしょう。
 しかし邪馬台国の鍵穴≠ヘ、1人の人間の■■によってでしか開きません。
 もしかすると片方の少女は、あの女狐≠ノよって作られたフェイクの血筋では?」
 相手の男が訊ねる。

 すると最初に訊ねた男が、突然「クックックッ」と不気味に嗤い出した。

「……陛下?」
 相手の男性が心配になり、思わず相手を通称で呼ぶ。
 すると最初に訊ねた男こと陛下は、
「なに。解錠に失敗すれば2度と開かない仕組みの扉ならまだしも、
 あの鍵穴≠ヘセキュリティのセの字もない時代のモノだ。
 何度でもやり直す事はできよう。気にする事でもない」
「……ッ!! はっ! その通りでございます!」
 相手の男が、頭を垂れた。
 それほどこの『陛下』なる者は大物なのだろう。

「……あ、それと陛下」
 陛下へと頭を垂れた男が、ふとある事を思い出した。
 陛下と呼ばれたものは眉をひそめ「なんだ」と訊いた。
「世界中の、我々とは関係のない様々な組織≠ェ、
かつて近畿地方と呼ばれたエリアに¥W結しています」

「……なんだと? いったいどういう事だ?」
 自分達とは全く関係のない組織が、自分達が関わった地域に集結している。
 全く持ってワケが分からん自体に、陛下なる者も本気で困惑した。
「分かりません。我々の諜報員が調査中ではあるのですが、
 未だに何が起こっているかの報告はございません」

「……まぁいい」
 陛下なる者は溜め息を吐いた。
 そして1度深呼吸をしつつ、
「誰が何を企てようと、我々の計画を止める事などできん」
 邪悪な笑みをこぼし、自信満々にそう言った。

「では、各地に散らばった我々の同胞に告げよ」
 そして改めて、彼は命令する。
「『解錠ヲ完了次第、速ヤカニコノ地<j集エ』とな」
「ははっ! 仰せのままに!」
 そして相手の男は、まるで陽炎の如く、その場から消えた。

「何度も何度も……何度も何度も何度も何度も何度も……我々の計画≠ヘ、様々な組織によって邪魔された」

 相手の男がいなくなるや否や。
『陛下』は遠い記憶に思いを馳せながら、呟いた。

「だが今回こそは、なんとしてでも成功させる」

 そして1度だけ目を閉じ、眼前に広がる光景を改めて目に焼き付けた。

「この星≠フ真の盟主が、我々であると証明するために」

 その瞳の中で、愛憎の炎を燃え上がらせながら……。

     ※

 目を覚ますと、少女は薄暗い空間の中で寝そべっていた。
 生暖かい床の上……いや、擦るだけで何かがボロボロとはがれるので、
 とても分厚い埃がかぶった床か、土なのかどうかさえ分からない。
 どちらにせよ、不衛生極まりない床。
 とにかく彼女はそんなモノの上で寝そべっていた。

「ここ……どこ……?」
 少女は、とにかく自分がどこにいるのかを知りたくて、その場で立とうとした。
 だがその瞬間、足首に重みを感じ、同時に「ジャラリ」という金属音を聞いた。
 いったい何だ、と思い、重い足元に手を添えると、そこには足枷があった。
 両足首に付けられている足枷は、それぞれ裏側から15cmほどの長さの鎖が伸びており、
 それぞれの鎖の先には、薄暗くてよく見えないが、重そうな鉄球らしき物の影があった。
 自分を拉致した者は、なにがなんでも自分達を必要としているらしい。

「……例えドアがあっても、これじゃ逃げ切れない」
 ここから逃げた後の事を考えて、少女は悔しげに顔を歪めた。
「昔見たスパイ映画では、敵に捕まったスパイは自分の体のどこかに隠した針金で脱出するものだけど、
 私は怖くてそんな事できなかったからなぁ。針金が通じる鍵穴である保証はないけど」
 拘束され、監禁され、これから自分はどうなるのかを考えて不安になりそうになるのを、
 どうでもいい事を思い出す事でなんとか食い止めようとする。

 でも、どうしても体の震えは止まらない。

 それどころか「ごっほっ! ごほっごほっ!」と喋り過ぎて埃を吸ってむせた。

「ケホッ……ふぅ……ふぅ……やっと落ち着いた」
 少女は吸い込む酸素の量を少なく調整しながら、小声で言う。
 とにかく喋らないと、怖くて心がどうにかなってしまいそうだった。

「とりあえず、枷の鍵穴の事は置いといて……この部屋の事をもっと詳しく調べないと……」
 少女は、改めて自分が監禁されている場所をグルリと見渡した。
 幸いにも、徐々に暗闇に目が慣れ始めたので、ある程度周りを確認できるようになっている。
 そして、自分の右斜め後方に目をやった時、

「……ん? 誰か、いるの?」

 何かがモゾモゾと、部屋の隅で動いているのを見た。
 まさか猛獣じゃないか、と一瞬思ったが、違った。
 相手は人間の女の子が着る、オシャレな服を着ていた。
 さらによく見ると、自分と同い年くらいの女の子だった。

「あなたも……閉じ込められてるの?」
 少女は、部屋の隅に居る少女に声をかけた。
 すると少女はビクッと体を震わせた。
「私もだよ。まったく、嫌になっちゃうわよね。
 そんなに私達が可愛かったのかしら。
 可愛いってのも、罪よねぇ」

 冗談めかして言う、先程むせた少女。
 しかし相手の少女はまだ部屋の隅で怯えて体を震わしている。

「え……えっとぉ……」
 なんだか、話していて虚しさを覚えた。
 だけど何か話さなくちゃ、不安と恐怖は自分を支配し始める。
 相手の少女から伝わってくる恐怖が、自分に伝染する。

 少女は、恐怖に屈するのだけは嫌だった。
 そして圧倒的な暴力によって、弱い者が虐げられる世界が、
 少女はさらに嫌いだった。

 だから少女は――相手の少女を、優しく抱き締めた。

 相手の少女は、一瞬緊張したものの、
 少女の温かさに触れ、少しずつ脱力していった。

「大丈夫よ。私が付いてる。それに……」

 そして少女は、まだ少々体を震わせながらも、
 相手の少女と、そして自分に言い聞かせるように、言った。

「私達を助けようとしている人達は、とてもとても、強い人達だから」


 次回、京都篇開幕!!
 


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