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作品名:ミツバチの日記帳‐鏡像の系譜‐ 作者:サカキショーゴ

第14回 謎の考古学者@〜大地先輩の青春と苦悩〜
 
 この幕間の物語は、僕こと天ヶ崎宇宙が記憶している大地先輩との大学時代の思い出と、
 大地先輩が執筆した自伝的ライトノベルの内容、
 そして翔哉さんが、巧壱くんとは別ルートで偶然発見したらしい、
 出版社に託されていたというネタ帳の内容を合わせ、まとめたモノです。
 中には誇張した表現があったり、美化した思い出があるかもしれません。
 その点を考慮した上で、この物語を読んでいただく事をお勧め致します。

     ※

 それは……桜舞う、4月上旬のある日の事。

 目が覚めると、あと30分くらいで講義が始まってしまうほどの遅い時間だった。
「いっけない! 遅刻だ!」
 その事実を頭の中で完全に認識をした瞬間、私はベッドの上から跳ね起きた。
 すぐに着替え、髪を整え、カバンを持ち、そして朝食のパンにバターを塗って通学する。

「い、いってきまふぅ〜〜〜!!」
 父は既に職場に向かっていたので、母に向かってそう言うと、
 私はパンをモグモグ食べながら全力で通学路を走った。

「おや宙子(そらこ)ちゃん、今日はずいぶんと遅いんだね」
「あらあら。まるで大昔の少女漫画のようだねぇ」
 私の家の近所のおじさんおばさんが、私を見かけるなり、
 私に言っているのか独り言で言っているのか分からない台詞を吐く。

「お、おはようございますぅ〜〜!!」
 パンを食べ終えると同時、私は、私に向けられた台詞かどうかはさておいて挨拶をした。
 挨拶は1日の始まりであり、そして人との絆を繋ぐ大切な習慣だから!!
 私が挨拶をすると、近所の人達の挨拶をしてくれる。

 同年代の人達は、居ない。

 なぜならば、その人達はもう登校してしまっているのだから!!

「ああもう! こんな事なら友達がハマゾンで入手したっていう昔懐かしの映画を徹夜で観るんじゃなかった!!」
 昨日の自分をぶん殴ってでも眠らせたい思いに駆られながら、
 私は昨日の事を、後悔しながら思い出す……。

     ※

 事の始まりは2日前。

 大学の友達がネット通販サイト『ハマゾン』であるモノを入手したと、休み時間に私に言ってきた。
「それはいったい」と私が訊ねると、その友達――私が通う大学の留学生であるハンナ・レーティスはこう言った。
「それは……コレですわよ宙子氏!!」
「な、なにぃ!? それはまさか……!?!?」

 ハンナが見せてきたのは、1枚の写真。
 そしてその写真に写っているのは、50年くらい前に仏国で制作・上映されたが、
 作中にて判明した真相を隠そうとする秘密機関にでも目をつけられたのか、
 あまりにも不自然なタイミングで、政府主導でほぼ全ての、この手の映画の上映が禁止されたため、
 劇場で不正な撮影をしたヤツが横流しした、不正な映画を売る闇DVDショップに今も置かれているかどうかも不明な
 ドキュメンタリー映画『異界は実在した!! 今明かされるジェヴォーダンの獣の真実』のDVD!!

「宙子氏、こういう世界の謎的なヤツ好きでしょう? 1週間前にネットサーフィンしている時、偶然見つけましたの」
 ハンナは、生来の金色の長い髪を、強調するようにかき上げながらそう言った。
「好き好き! 是非ともこのDVD貸して!」
「もちろん貸しますわ。ただ……」
「ただ?」

「どうやって私が入手した事を知ったのか、昨日、私達と同じように、古代遺跡などの世界の不思議に
 興味を持たれている方が現れて、貸してくださいと懇願されまして……しぶしぶ貸しているのですよ。
 その方が返却するまで、もう少し待っていただけませんか?」
「う、うぅぅ……分かった。待つわ」

 そんな事があり、ようやく昨日、私はそのDVDを借りる事ができたんだけど……。

 あまりにも面白かったから、朝まで徹夜しました、まる。

 ちなみにその映画、6時間もの長い内容でした、まる。
 
     ※

 そして現在、そのせいで私は遅刻寸前なのですまるぅぅうううううううぅぅぅぅーーーーーーーーーーっっっっ!!!!!!

 走る、走る、走る、走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る
 走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る
 走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る
 走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る
 走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る
 走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る
 走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る
 走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る
 走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る
 走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る走る!!!!

 見慣れた道を、自分でも驚くほどの速さで駆け抜ける。
 だけど時間が残酷にも過ぎていく。
 その事に、偶然視界に入った腕時計のせいで自覚し、もうダメだと、諦めかけた……その時、
 ドカッと、私は誰かにぶつかり、その反動で後ろに倒れた。

「い、いった〜〜〜〜!」
「い、たたたた……だ……大丈夫ですか?」
 私よりもすぐにリカバリーしたのか、相手はすぐに私に手を差し伸べてきた。
 だけど、これで遅刻は確定である。
 私の心は、相手への怒り一色に染まってしまった。

「ちょっと! どうしてくれるんですか!? 遅刻してしまうじゃないですか!?」
 寝不足のせいか、なぜかイライラしてしま……うん。絶対寝不足のせいだ。
 ああ、どうしよう。相手のせいじゃない。私自身のせいだというのに、私は相手に八つ当たりしてしまう。
 文句を吐いた直後、すぐに、心をきつく締め付ける罪悪感を覚えた。
 すぐに謝ろうと思い、私は顔を上げ、

 そして……。

「ごめんなさい。私も遅刻しそうだったから」

 ………………その人と、出会った……。

 左目の下の泣きボクロ。
 茶色いボブカットヘア。
 透き通るような白い肌。

 そして中性的な……整った顔立ち。

 同じ人間とは思えないほど、とても綺麗な人。
 その人が、桜の花びらが舞う中、私に手を差し伸べている。
 まるで天使と対面しているかのような神秘性を、私は覚えた。

 これが、私こと天ヶ崎宙子の……土屋チカ先輩との出会い。

 そして私の運命は……チカ先輩と共に、大きく動き出す……。

     ※

 げ、ゲフンゲフンゲフォッ!? オェ、ゲホゲホケホケホッ……ふぅ。
 すみません、間違えました。
 これは先輩が執筆した自伝的ライトノベル『暴走歴女!!』作中の、僕サイドの内容でした。
 それにしても、巧壱くんが仕入れた情報だと、
 このライトノベルはいわゆる『TSモノ』というジャンルらしいけど……TSって、何の略だろう?

 まぁそれはともかく。改めまして。

 今回の事件で、重要じゃないかと思うシーンのみを選出いたししまして。

 いよいよ土屋大地先輩の物語の、始まりです……。

 もちろん、性別は修正してありますよ〜♪

     ※

 夢を、見ていた。
 初めて宇宙くんと出会った時の夢だ。
 あの時は激突した直後に口論になったりしましたが、
 今では和解して、かけがえの無い親友に……。
 肉体言語を交わしてはいませんが、これはこれで少年漫画のよう。

「大地先輩、そろそろ次の教室に行きましょう」
 机の上で今まで眠っていた僕に、その宇宙くんが声をかけてきた。
 いろいろしていたせいで僕が留年し、彼と同期になって早1週間。
 にも拘らず、僕の事を慕って『先輩』と呼んでくれるとは……嬉しいと同時に、少々お恥ずかしい。

「っていうか大地先輩、どうしたんですか? 凄いクマですよ?」
 宇宙くんが僕の顔を覗き込みながら心配してくれる。
 昨日は家庭教師のバイト先で、そのバイト先の敵勢力が押しかけてきたので撃退に協力したり、
 海内外の遺跡発掘の仕事のスケジュールを立てたり、必要な道具を揃えたり、
 現地で変な事件に巻き込まれにくくするための、現地で起こった事件の事前調査などをしましたので、
 寝不足なのも仕方ないかもしれません。

「ええ、今ちょっとアルバイトの方が忙しくて」
「大地先輩、無理だけはしないでくださいね? 過労で死んでしまったらどうするんですか?」
「……確かに、そうだね」
「でしょう? 最近、過労気味の社会人を狙ったドラッグが流行っているみたいですから」
「あ、そっち?」

「どっちにしても、先輩には死んでほしくはありませんので、無理はしないでください」
「……分かったよ、宇宙くん」
 こんなにも僕の事を思ってくれる後輩が出来て、僕は幸せ者だ。
 こんな僕を慕ってくれる宇宙くんなら……もしくは……。
 そんな事を思いながら、僕は席を立ち、宇宙くんと共に教室を移動した。

     ※

「大地先輩、また徹夜ですか?」
 おっといけない。僕を慕ってくれる後輩はもう1人いた。
 それが彼。この大学に留学してきた、英国貴族でもあるハイド・レーティス君だ。
「ええ。さっき宇宙くんにも言いましたが、アルバイトの方が忙しくて」
「過労で死なないでくださいよ。大地先輩の荒唐無稽な話を聞けなくなるのはつまらないですから」
「え、君にとっての僕の価値ってその程度?」

「冗談です。とても寂しいし悲しいです」
 ハイド君はそう言いながら悲しそうな顔をすると、教室の机の上から身を乗り出して言った。
 彼の特徴的な、綺麗な金髪がサラサラ揺れる。
「それはそうと、今日はその荒唐無稽な話はしてくださらないのですか?」
「ハイドくん、大地先輩にそんな無茶振りは――」
「いや、いいよ。話すよ」
 宇宙くんの言葉を遮り、僕は1度深呼吸する。

 宇宙くんは一瞬心配そうな顔をしたが、それでも僕の、何度も宇宙くんにも聞かせていた冒険譚に興味があるのか、
 ハイド君の座っている椅子の隣の椅子に座り、僕の目を見ながら沈黙した。
 僕はそれを、冒険譚を話す事への了解と捉えると、
 寝不足なせいでうまく回らない脳に酸素を送り込み、改めて話し出す。

 だって、自分が体験したワクワクの冒険譚(ハイド君は嘘だと思っているけど)というモノは、
 体験してすぐに家族や友達に、聞かせたいモノじゃないか。

「ええと、今度はいつの話がいいかなぁ?」
「そういえば先輩、ヒマラヤで遭難して死に掛けたって噂聞きましたけど、本当ですか?」
 いつの冒険譚を話そうか、改めて考えていたところへ、宇宙くんがそんな質問をしてきた。
「よかったら、その時の事を話してくださいませんか?」
 まだ完全に脳がうまく回らなかったため、僕はすぐにその事を話す事を決めた。
「そうだね。じゃあそうしよう。アレは、僕がこの大学に入りたての頃の事だ」

 そして話している間……話す内容の裏側≠ナあった事を、ふと思った。

     ※

 あの頃の僕は、今よりも命知らずなヤツだった。
 娘を喪った妹夫婦の心を救うための方法、すなわち僕の姪と『再会』させる手段を、
 入学したての大学を長期間休学し、妹の看病の合間を縫い、
 世界中を飛び回ってでも見つけ出そうと躍起になっていた。

 資金や移動手段、外国生活に関しては問題無い。
 そうなる以前から、古代遺跡やUMAなどの世界の不思議に興味を持っていたため、
 数年前にパスポートを作り、外国語を勉強し、旅行費を貯めていたのだから。

 そして世界中を回る中で、僕は様々な不思議な噂を耳にした。
 宇宙人。UMA。心霊現象。超能力。その他諸々の、僕好みの不思議な噂を。
 だけど目的は『姪との再会の手段』であったため、死者に関する噂のみに調査対象を絞り、
 それらしい数多くの噂を集中的に集めては、すぐにその場所へと向かった。

 ある時は南米の先住民族から、姪のスピリットを喚び出す手段を教わろうとした。
 ある時は支那国の山奥の寺院に伝わる反魂香の生成法を、住職様に教わろうとした。
 ある時は西蔵国の山奥の寺院に伝わる死者と対話する奥義を、老師様に教わろうとした。
 ある時は英国に吸血鬼、とある南国には人魚が居るという情報を手に入れ、
 その吸血鬼と人魚の事を徹底的に調べ上げた。

 仮に姪をクローン技術で蘇らせた場合に、吸血鬼の不死身に近い性質、
 そして食べると不老不死者になれるという人魚の肉の組成を、
 それぞれ解析し、クローン故の短命さをカバーするためである。
 けれど、どの国の、魂の召喚方法を知っている、
 もしくはその手段を持っている人達はその方法を教えてはくれなかった。

『1度失った命は、どのような手段を用いても蘇りはしない』
『例えその魂を両親に会わせる事が出来ても、それは本当の意味で救う事には繋がらない』

 それが、僕が訪ねた術師達の共通の意見だった。

 そして、奇跡的に発見する事ができた人魚からは、

『私の肉に、そのような効果はありません』
『仮にあったとしても、その方法ではその子を人外にしてしまいます』
『それでは、本当の意味でその子を……そして妹さん達を救済する事にはならないでしょう』

 と言われた。

 冷静に考えれば、どの意見も全くもってその通りだった。

 クローン技術を使って復活させ、そして短命さをカバーするため不死身に近い肉体にした場合。
 その子はもう、人間としての姪などでは、けっしてない。
 故に、もしも人外となってしまった娘のクローン体を妹夫婦に授ければ、
人外の特異性のせいで親子の間に心の壁が生まれ、さらに家庭が崩壊する可能性がある。

 そして姪の魂を、妹夫婦の前にて召喚した場合。
 召喚術を終えた後も、視えずとも自分達の娘が其処に居るという希望が生まれ、
 一時的に2人は救われるかもしれない。

 あくまでも一時的に、である。
 もしも再び、そしてより長く召喚術をおこなわなければ、
 いずれ必ず双方に『会いたい』気持ちが高まり、より長く相手と触れ合おうとするだろう。
 すると最終的には、死者に生者が引っ張られ、死を早めてしまう可能性がある。

 どっちにしろ、絶対にそんな事になってはならない。

 ならば――僕はどうすればいいのだろう。

 どうすれば、輝と憲司を救う事ができるのだろう……。

 とそんな事を思い始めた時だった。
 人魚は、まるで僕の心情を察したかのように、こんな事を言ってきた。

 けれど、いずれ必ず……貴方の前に、本当の意味での救済を可能とする存在が現れます――と。

 それは人魚の、僕に関する最初で最後の予言。
 本当にそうなるかどうか分からない、魔術師でもあった人魚の予言。
 そして予言を聞いて以来、僕はその人魚と、2度と会う事はなかった。
 じつは人魚は、この世界の住民ではなかったのだから。
 この世界とは違う、別の世界の住民なのだから。

 そして後に、この予言は現実のモノとなった……。





 ちなみに吸血鬼については、不死身に近い肉体を解析する事が物理的に不可能だったので諦めた。
 しかし個人的に興味を引く対象だったので、諦めた後も時々その吸血鬼の事を調べる事にした。
 


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