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作品名:クロード・レヴィに捧げる弾丸 作者:葦原瑞穂

第3回 第二種条件付き人間もどき
 一種は通りそうもないので、二種から受験することにしたのだが、受験資格が女のみとのことで、諦めるに諦め切れない。
 そんなバカな話があるか。
 このご時世、日本の平成の世も末期に男が何で男というだけで試験資格すら得られないのだ?

 市役所に行って、戸籍上の性別を女に書き換えるよう願い出たが、まずは番号札を取ってお待ち下さいなどと言われた。
 だが発券機などどこにもない。
 再び生活課受付の女にクレームを入れると、奥から「課長」などという札を首から下げた某イメクラの受付のホームレス野郎に酷似したへらへら笑いの痩せ中年が現れた。

「あなう――お客さま申し訳ございませんが、役所の方で戸籍を書き換えるというふうなことはできかねませんので、申し訳ありませんがそなう……」

 だったらやれ馬鹿野郎と詰め寄ると、いやですからそのようなことはできかねませんのでご了承ください、などと繰り返すので、だからだったらやれって言ってるんだ馬鹿野郎と日本語文法に忠実に会話をしようと試みるも、残念ながらどこからともなく警備員によるお見送りとあいなった。
 こちらは悪くない。
 少なくとも間違ってはいないが、何となく俺が悪い的な雰囲気に押し流されるというクソ理不尽。

 試験センターに問い合わせるも、午後二時にもかかわらず、「ただ今の時間は昼休みです。後ほどおかけください」とのテープ音声。
 こいつら人間をなめてるのか?
 それともそもそも人間じゃないのか?
 分からないが、願書締め切りが本日消印有効なので、ぐずぐずしてなどいられないのだ。

 頭に来たので、経歴書の性別欄に「女」と書いて、内容証明郵便で送ってやることにした。
 郵便局の中年女に、消印は今日になりますかと聞いたら、「本日消印を押せば今日になりますね〜」などと言いやがった。
 だれがシステムの話をしている?
 もはやおちょくられているのか、本気のキチガイなのかすら判断できなくなったので、この場で押せバカと言って、目の前で消印させた。

 一週間後に受験票が送られてきて愕然とした。
 試験会場が、京浜東北線女性専用車両1‐B席となっていたのだ。

 怒りが爆発し、再び試験センターに電話すると、がさがさと受話器の間近で油紙を丸め潰したような、極めて聞き取りにくい口調のオヤジが出た。

「はい条件付き試験センターです」
「はいじゃねーよバカヤロー、北海道に住んでる人間の試験会場が何で京浜東北線なんだよ殺すぞ?」
「応募要項を正しくお読みください」
「法制局の職員並みに読んだわカス。『会場は居住地最寄りの下記施設となります』って書いてあんだろ。俺んちだったら『根室成人男性の家』じゃねーのかどあほ」
「ではなく、別添注釈をお読みください」
「んだと!?」

 再び要綱を読み返すと、「試験会場は予告なく変更となる場合があります」と書いてある。

「ああそうかい! じゃあ分かった。諦めると思うなよ。受けに行くからな。覚えてろよてめー」

 試験は明日なので、急いで航空会社のHPを開き、羽田行のチケットを探した。

※搭乗資格改定のお知らせ
 日本国国内線における搭乗資格が、平成三十年八月一日をもって改定されました。詳しくは最寄りの国土交通省または、空港事務所までお訊ねください。

※空席情報
女性…127席
男 …(現在取り扱っておりません。)

 女一枚で窓際の席を購入し、コンビニに煙草を買いに行こうと家を出たところで、国家公安転び公妨に出くわした。

「ここは公道です。煙草を買いに行くための利用は禁じられています」

 以来、留置期限が際限なく更新され続けている。


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