時が澱みを作り、風が朽ち果ててゆく
あの腐敗した世界はどこに消えてしまったのだろう
現実の光が人々の心を形造り
闇は、歴史の墓地へと永遠に廃棄されてしまった
街の片隅に沈み、動こうとしない男の影
女は子を産み、子は次の時代を生きるだろう
美しき精神には祝福が与えられ、英雄が時代の幻影を彩る
ある瞬間、母は死に、神は彼の元を去る
世界に取り残された人間は、夜空の星を見上げながら
閉ざされた永遠の中に自らの過去を見るだろう
死は訪れる
それはかつての母の手に似て、優しく、深く彼を包む
永遠に模した今を生き、永遠に近い今を過ごす
神が降りてきたあの時、信じる術を持たなかった
全ての人間は被造物、神に近付くほどに孤独は深くなる
救いなどなく認めざるを得ない
感動に震えた涙こそが偽りであると
人の世の生涯は、明日の死を受け容れるために費やされるのみで
全てを失わなければ救いなど理解できない
ありふれた絶望のために死に急ぐ人々
生前の意識を呼び戻せたなら
虚無の力に打ち克つこともあるいはできたかもしれない
今は無を想う
他に何を感じ得るだろう
死にたくない
幻を見ていたい
全て消えた世界に残り
意識をさまよう
幻を見ていたい
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