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作品名:no title 作者:葦原瑞穂

最終回 no title
時が澱みを作り、風が朽ち果ててゆく

あの腐敗した世界はどこに消えてしまったのだろう

現実の光が人々の心を形造り

闇は、歴史の墓地へと永遠に廃棄されてしまった

街の片隅に沈み、動こうとしない男の影

女は子を産み、子は次の時代を生きるだろう

美しき精神には祝福が与えられ、英雄が時代の幻影を彩る

ある瞬間、母は死に、神は彼の元を去る

世界に取り残された人間は、夜空の星を見上げながら

閉ざされた永遠の中に自らの過去を見るだろう

死は訪れる

それはかつての母の手に似て、優しく、深く彼を包む



永遠に模した今を生き、永遠に近い今を過ごす

神が降りてきたあの時、信じる術を持たなかった

全ての人間は被造物、神に近付くほどに孤独は深くなる

救いなどなく認めざるを得ない

感動に震えた涙こそが偽りであると

人の世の生涯は、明日の死を受け容れるために費やされるのみで

全てを失わなければ救いなど理解できない

ありふれた絶望のために死に急ぐ人々

生前の意識を呼び戻せたなら

虚無の力に打ち克つこともあるいはできたかもしれない

今は無を想う

他に何を感じ得るだろう



死にたくない

幻を見ていたい

全て消えた世界に残り

意識をさまよう

幻を見ていたい


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