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作品名:孤児(ダルジュロス) 作者:葦原瑞穂

第5回 虚無からの抽出
あの朝 神の見えた日
人が人として生きるなんて
全て誰かが創り上げたこと
思い込み 与えられ
やがて天から言葉が下る

この不安に目を通し
安らかな陸の孤島で愛を夢見る
そこで見た人型を愛する
あれとセックスしたとき
もう大丈夫だと思った

無限の神威の残滓は消え
傷と血による恐怖もなくなる
もう戻る必要もない
鉄柵の向こうに芝生が広がる
だが川は流れていない

吊るされて揺れるリビドーに
完全なるエロスが肉迫する
拘束の中の優位と劣位
あれの鋭い瞳から否定は失せた
こうして全ては定め通りに

次の無抵抗者に強制する
純粋さを世間に晒し
やがて敗者の前で勝利を得る
あれが立ち去ろうとした時も
瞳は不透明で無感情だった

意識が実際へと上昇するとき
事実は虚空の闇へ沈む
忘れる為に一つの偉大な世界を創り
誰もかれもが所有物と堕す
忘却が絶望の諸形態を総括する

純粋性の象徴は家に帰り
この世が薄闇に閉ざされる
全ての登場人物が去ってゆき
あらゆる事象が一つの記号となる
イデアは失われ 神だけが見える

光に引き戻され
世界は内界に廃棄される
そして幻すら存在しない
重力だけが生として残り
虚的非在唯無残覚夢限望漠


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