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作品名:友あり遠方へ向かう 作者:烏山鉄夫

第1回
 私は海外旅行には余り興味が無い。外国語を話す自信は無いし、第一飛行機が苦手で、出来る事なら敬遠したくなる。それで居て、外国から伝播して来た文化は平気で享受する図々しいと言うよりも、盗人猛々しい男である。野球と聞くと目の色を変える程好きで、「チアリーダー」が好きである。若い娘が愛嬌に満ちたうす着の衣装を身に付けてくれるだけで感謝せねばならぬ。
 おっと、いけない。話を始めてそうそう脱線したが、つまり国粋主義等と書くと古臭く厳めしい言葉を用いるに値する高尚な人物と言い難いが、日本と言う国をあちこち旅して歩くのがとにかく好きなのである。
 さて、お話は打って変わり、ここで親友N君の事を書き残しておこうと思う。
 彼とは中学二年生の時に同級生として知り合った。と言っても、この段階は顔を合わせれば挨拶をする程度の距離感であったが、高校一年生の時に再び学級が同じになると、一気に交流が深まった。彼のお宅へ遊びに行った事もある。また、今でも年賀状のやり取りを欠かさず、私が燕軍を贔屓にして居るから、毎年優勝を願う一言を書き込んでくれる。或いは大人になり酒の味を覚えると、彼は下戸で付き合い程度に乾杯位しか呑まないけれども、大抵私が酔って妙な人間に拍車が掛かるのに、嫌な顔を見せず懲りもせずに何度も誘ってくれる。
 それなのに、元来私は恥ずかしがりなのでそれを隠さんとして、虚勢と言うべきか、少々態度が大きいので、彼の名前をまともに呼んだ事が無い。いや、必要があれば「君付け」を用いるけれども、二人きりの時には相手の目を見て話すのみである。彼は私を綽名で呼んでくれるのに。こう言う傲慢ささえ受け入れて、そばに居る事を喜んでくれるのである。
 ハタから見れば、私とN君の関係は、何やら主従関係があると思われるだろう。しかし、鎌倉武士の如き、御恩と奉公、或いは江戸方式だとして彼に与えるべき土地も、家禄(金)も無く、強いて言えば呑み代を割り勘にして、一部を負担して居る位である。
 かと言って、彼は小心者であるとか、何か弱みを握られて反抗出来ない訳では無く、むしろ芯の強いなみなみならない意志の持ち主である。
 そんな彼は、社会人になり広島へ転勤が決まり、一人暮らしをする事になった。中学・高校時代の友人達と送別会と称して、と言うのは事あらば酒を呑まんとする面々だからだが、とにかく激励を与えて、わずかな日数しか経過して居らず、いわば女々しい気持ちだが、もう彼と会いたくなり、彼を追い掛けて私も広島行きを決意したのである。


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