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作品名:春夏秋冬 作者:烏山鉄夫

第4回 虚脱 ―平成25年 後篇
厚さ故酷使するなり扇風機 されど涼しくならぬわが部屋

様々な出来事ありし一週間 夕日が沈む金曜日かな

江戸川を渡る電車の音知らず 夏の訪れ哀しみが湧く

あまつさえ暑き日々に追い打ちを かけるごときの蝉の声かな

雷の音に負けじと雀鳴く 暑さ覚えぬ彼らの元気

空の海浮かぶ漁船を送り出す 夏の朝日に進み行くかな

夕立の足音来ると教えんと せわしく唄う油蝉の声

雲一つ無き夏空の溌溂さ 茶髪頭のおなごの如し

朝のうち涼しき風が吹き抜けて 油断をすれば暑さに負ける

公園で休む足元鳩来たる 舌打ちしたら首を傾げる

油蝉みんみん蝉と合掌し 道行く人の耳を驚かせ

身延線乗りに行きたしこの夏に 計画立てて夢ばかり見る

日差しありされ涼しき風が吹く 寺の墓地にて花を手向ける

坂登り汗をかきつつ見下ろすは きらきら光る市川の街

四条の末は銚子に続く道 快速電車駆け抜けて行く

今までに黄色の声援御縁なし あびせられしは悲鳴のみなり

制服を汗で濡らすや女学生 夏の盛りに自転車をこぐ

真面目さを眼鏡の奥に控えさせ 優しくほほえみ吾をみつめる

熱帯夜の眠りの浅き苦しさを 彼の人想い気を紛らわせる

甲子園昨夏の屈辱振り払う 初陣飾り笑顔浮かべる

雷に気付かぬふりか蝉が啼く 雨も降らずに暑さ残り

汗を吸い重くなりたる我が服に はね返されし夕方の風

午後九時の時報を聞きて驚きし あと数刻の日曜の夜

寝る前に蚊取線香焚く夜かな 煙と共に過ぎし一日

太陽を浴びて輝く葉月の空 残影打ち消す夕方の風

恋心芽生えた割に遠慮する 後光さしたる天女の姿

身延線ついに貴方を征服す 新型車両軽き足取り

善光寺間もなく来たる決勝線 列車交換で気分鎮める

一両がのんびり走る銚電の 賑わう車内赤字忘れさせ

外川駅優しさのなかに苦労あり 曇天の空哀しみを呼ぶ

涼やかに背中をなでて通り抜け 夏の終わりの淋しさ覚ゆ

虫の音が涼しさ運ぶ我が家にて 過ぎ去る葉月見送る夜かな

赤トンボ夏も終わりと言いふらす 返事するなりシオカラトンボ

道端に名も知れぬ人造りたる 花壇の中は優しき広場

歩く道とんぼの群れが影作り 道を教えし印の如し

何喰わぬ顔色なれど確実に 終わりに向かう夏の空かな

江戸川の水面吹き抜く強き風 嵐が来るやよろこび切れず

鉄橋を渡る電車が来るたびに 振り向きながら歩みを止める

江戸川の眺め変わらぬ土手の上 様変わりせし己の心

強き風夏の思い出吹きとばし 美しき秋迎える合図

秋近し名残りを惜しむ走馬灯 立見をするなり雲の銀幕

雷に起こされし朝雨も止み ぬかよろこびの暑き一日

天気雨構わず歩く格好付け 誰も知らぬが女意識す

人知れず道端に咲く花々に 片恋ばかり意気地なしかな

雷の目覚まし時計けたましく 鬼のさけびに似た音発てる

暗闇を見つめつづけて早五分 孤独さえぎる秋の虫かな

思案する憎しむ人を許さんか 氷もとける一人酒哉

病み上がり人気なき森独り歩き 疲れて浴びる蝉の声かな

静寂の刹那迎えし交差点 人の視線を一身に集め

台風の爪痕残る真間川の 水面と同じわが心かな

秋空に淋しく浮かぶ白雲は 彼の人に似たる清らかさなり

竹林に秋の日差しが降り注ぐ さわやかな風に身をゆらす午後

彼岸花人知れず咲くしおらしさ 思い浮かべし北国美人

中秋の月が浮かびし宵の空 天が送りし長夜の合図

月輪が空に輝く秋の夜に うさぎも笑う楽しき夜更け

思い出を胸に秘めて床につく 楽しき猫の一日の業

笑顔なき濡れる遊具に 佇む姿淋しさ覚ゆ

彼岸花峠の上で秋の日を 浴びてほほえむ妖精の顔

静かなる真間の境内聞こえしは 落ちた枯葉の断末魔かな

晴れの日を夢見る子供訓練を 耐えし姿を見守る日差し

秋雨の目覚まし時計パチパチと 窓をたたいて我を起こすなり

野分来て傘さし歩く美人あり 風に揺れるや長き黒髪

睦まじき恋人同士笑い合う 楽しき時間水を差さんか

鳩が寄り小さき池の水を飲む 我はこれより汗かきに行く

曇天の沈みし心吹きとばす 笑顔振りまくカンナの姿

台風の過ぎ去りし大空に 名残りを載せし白雲浮かぶ

黒猫が日枝の社で昼寝なり 野分の後と誰ぞ知るかな

街角ですれ違いざまの君の顔に 胸高まりてむなしさ残る

ひそやかに稲荷が鎮座路地裏に 近間見出す心の景色

馬が居る裏道歩き驚きて 足止めすれば近寄りし駒

ひたすらに歩け歩けと言い続け 痩せてみせんと心に誓う

猫日和草むらの上寝床にし それ見てわれも眠気催す

雨霧に前照灯が浮かぶなり 提灯下げて歩くがごとし

雨雲に突き刺すごとき摩天楼 淋しき空気押し上げるなり

浅草の仲見世通り華やかな 女学生の声遠くこだます

水たまり野分の雨が着地して 休みひまなく川と流る

強く吹く風は野分の落し物 届けるべしと神が宣う

自衛隊編隊組んで青空を 飛ぶ様似たる渡り鳥かな

曇り空愛しき人を持たぬ身を 憐れむごとき悪き顔色

忍び寄るみもじ色づく気配かな 共に歩むか秋の山道

金閣が白髪の数を増やしつつ 幾年越えし淋しき季節

はらはらと涙をこぼす花水木 悲しむ姿見たくなきかな

航空機着陸できずぐるぐると わが家の上でいらいらと待つ

玄関の三色すみれ風に揺れ 左右に動く顔面白し

銀杏の樹黄色に染めて秋の空 共にまぶしく目を閉じさせる

木枯らしが淋しき音を奏でつつ 寒さのみが心をつつむ

孤独かな秋の夕日が沈みゆく どうして出来ぬ愛しき人よ

暦見て幾許も無きと落涙す 淋しきもみじ秋の彩り

秋の風哀しみの香を運び来る 独り身の襟ただす女なし

紅葉の下に猫ありて擦り寄りし 時を忘れて遊ぶ楽しさ

散歩道日光浴びるもみじの葉 柔らかく光りすき通るかな

松毬道の真ん中に仁王立ち 秋の終わりの置き土産かな

不思議かな通い慣れたる道なれど 木々に色付きさ迷うごとし

制限なし紅葉の隧道徐行して 歩くたび変わる楽しき車窓

雨の音夜更かすための言い訳に 本を読みつつ日付が変わる

冬近く今更何故に嵐の夜 寝床の上で悩み続ける

なつかしき道を歩めば様変わり 浦島太郎の気分を知る

晩秋の風吹く街は淋しくて ここは地獄と見間違えたり

足元で黒猫じゃれる神社かな 祈りの邪魔に怒りも湧かず

秋桜別れを惜しみ花咲かす 道を歩めば足取重し

大空に飛行船が飛ぶ楽しさに 思わず路端車を止める

青空が曇り空へと化けるかな 昔と変わる女の好み

幼な子が手を振る如きかえでかな 風に揺られて我を見送る

土曜日の午後のひととき無為過ごし やるべき業をあまた抱える

息切らす毎度毎度の登り道 坂上の猫会える楽しみ

カラカラと枯れ葉転がる師走かな 風に吹かれて永久の旅立ち

木洩れ日に日輪浮かぶ境内に 落ち葉を運ぶ風が吹くかな

厳粛な聖域一歩踏み出せば 日差し優しき現世に戻る

多忙なる年末控え引き締まる 心反する呑気な態度

同じなる空の下かな彼の人と 師走迎えし忙しき日々

身にしみる寒さに思う彼の人の 優しき笑みの懐かしさかな

哀れなる雑木林と電柱の 背比べ負けて葉の涙落ち

天高く伸びゆく背丈勇ましく 冬の寒さに打ち勝つ樹木

吠える声うるさきなれど人懐こい 犬と仲良くなるそのはじめ

年の瀬が近き合図の拍子木の 淋しく響く我が街の夜

信仰の情熱偲ぶ本願寺 昔の香が風にのるかな

灰色の空にみじみし哀しみを いやして欲しき彼の人に

バスを待つ女学生から受け取りし 艶に応える資格なしかな

電線で休む鳩さえ不安顔 空の機嫌よいかに直るや

天気雨何が哀しく泣くのやら 鈍き男に訳教えしよ

吹く風が悪魔の声に似たるかな 恐れおののく意気地無しなり

あの時の驚き今も忘れまじ 図鑑に載りし月の海かな

へそピアス嫌いな訳を聞かれたら 聖なる腹部邪魔物ゆえと

彼の人の暮らし見守る街灯に 感謝をしつつ家路を急ぐ

寒中を歩いて行きし貯水池に 休むしらさぎこごえる如し

空見上げ天使の梯子舞いおりる 吾街来たるうれしさあふれ


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