小説&まんが投稿
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作品名:春夏秋冬 作者:烏山鉄夫

第2回 記憶 ―平成24年
初春を無事むかえたをよろこびて 一年走るみなもとにせよ

ぬれせんべ会社の危機をすくった手 味かみしめて存続ねがう

とおく見ゆ かすみのなかにつくば山 平野の無事を見守りたまえ

ゆうぜんと流るる水はとねの川 どこにあったか水のでどころ

磯の神みちのくの人に幸あたえ 元気と勇気あたえまわれよ

山の神みちのくのひとに夢あたえ 希望と未来あたえたまわれよ

ぐうたらとすごすぜいたくけうまでと 明日からもどる町のけんそう

どんよりとなまりの色の空もよう 寒さ後押し天のいじわる

空の幕行くあてもなく浮かびたり どこに居るのか日輪の顔

寒さ負けついに着る厚上着かな それでも冷たい外の空気よ

心なし元気のなさが気にかかる 池のかも泳ぐ鯉

寒中撮影するは新婚や 忘れられぬぞけふの思い出

友人の笑顔おがみて酒すすみ つまみもいらぬ馬鹿ばなしかな

友人と久し振りだといいあって 生きていること見せつけてやり

残雪がのこる日かげは凍りつき すべりころばぬ用心ばかり

雪だるま子供のまつり夢のあと おさな心やとけても残る

東屋で散歩の半ばひと休み リンゴジュース身にしみる味

時間ありされどないもの金ばかり 合いたき友に合えぬ淋しさ

風邪をひき一日毛布くるまりて 外の様子を知りもせぬかな

風邪のせい思考回路が止まりけり ただ寝ることにいそしむのみ

熱を出しだるき身体を横たえて 黄泉の世界があたまをよぎる

あたたかき日和に外へ行けぬなり いまだ身体がいうこと聞かぬ

ラジオから聞こえるこえに時忘れ あっという間に半時すぎる

道を行く人の唄いし歌謡曲 気持ちよさげうららかな午後

快復の見込みないまま七日過ぎ 身体の不調いかになるやら

ついに来たやけうの音が届きたり 半年たえしがまん解放

若つばめ本物よりも先に来たり 今年こそはと期待がつのり

神宮に楽しみ二つありまする 売り子のむすめ試合の熱気

羽根のばし空気うましとたばこ吸い けむり追いつつみどりやすらぐ

酒のみて硝子にうつる顔見ゆる 出で湯の地にてほおをあかくす

ゆらゆらと川をまたぐや吊り橋も 紅葉のなかにぶらさがり

いちめんに花の布団がひろがりて 極楽の夢君見せたもう

冬の山雪かぶりつつ仁王立ち 何もいわずにわれを見つめる

箱根路を登山電車がのぼりおり 赤きくるまとあおき山々

静かなり水面に波もたたぬかな ご存知のなき湖畔のけしき

山あいに静かに立つや道祖神 優しき顔でわれにほほえむ

ポストあり誰が使うと見守れば 山の生きもの手紙出すなり

重々し社に願をかけたあと 巫女の姿に心乱れる

駅弁を食べてみたいな汽車の中 ゆれる身体しみる味かな

海の音潮風に乗り耳ひびき なぎさ見えぬが景色よく見え

寝ている間短針まわり八周す 長針よりも動きはしずか

子供らの元気な声がうらやまし 大人は火の子よき喩えなり

雪が降る年に一度のうるう日や 忘れられぬ雪景色かな

雪国を思えばがまんしなくては たまの降雪受けて立つかな

雨の音冬のさむさを倍にする なまり色の空気悪くさせ

冬の雨雪を恐るる気持ちかな 降るだけ降りて早くやまむか

市川に関所ありけり江戸のころ 利根の流れ要塞になり

手児奈の名今も昔も美人さし 浮世はだれぞ真間の麗人

山に行き鮪のさしみくわされる 岩魚に鱒に山菜求む

雨降りのさむさ耐えずに朝寝坊 起きてもさむい寝ててもさむし

まださむし弥生の朝の雨の音 春は来るのか心配になる

雨降りで道に出来たる水たまり 溢れて川の流れに変わる

啓蟄もさむさに負けて虫とばぬ 雨や風のみ乱れ暴れる

時ながれ一年経つか震災も 何ももどらぬ東北の街

春が来るきざしは見えぬ暦のみ 桜の出番くり下げられる

桜花はかなき命うすい色 風に吹かれてしかばねの山

行くと決め上野の桜夢に見る 木の下すわり春をめでる

春の風心地よすぎる柔らかさ 真間の墓地さえのどかに感じ

春分の日和あかるし心気たのしく 虫もとぶなり弘法寺の庭

ねこも寝る彼岸の朝の風景に ほおをゆるませ目も細めたり

甲子園始まる声がせまり来る 白球の熱気に心おどるや

春の日差し障子にうつる影めでながら かぜの音聞くや朝の居間哉

小湊の鉄路を踏むや春の旅 古武士のあゆみたのもし哉

ぽかぽかととことこがたん菜の花が 走る線路はいすみ鉄道

南総に菜の花と梅さかりにて あとは桜が咲くを待つのみ

大原の駅にて休む木陰にて 吹き抜ける風あまきにおい

雨が降る前に来たるやめじろのつがい 気にとまるひまなき逢引哉

弥生の雨つめたく注ぐ金曜日 やけうやめさせ得意顔かな

霧雨が地面を濡らしそわそわす 散歩に行けぬもどかしさかな

苔の上花びらまくや風と雨 落ちた花弁もわけがわからず

ちょろちょろと小川の水も流れゆく われの鯉もが消え失せる哉

青空を写して染まる小川の水面 池は灰色近寄りがたし

夏祭り今年は何度唄えるか 期待ふくらむ開幕前夜

おそろしや春の嵐あばれ者 家にこもりて雨つぶ見つめ

風はげし蚊飛ぶひまなし窓の外 風雨の手柄ほめたたえたし

弘法寺の庭のしだれのうす桃に 足止める人犬猫さえも

しだれ桜風強く吹く真間の庭にて 花咲かせるや春の日差し

桜咲き人が見つめてほほそめて 眺める人も顔赤くなり

乱れ咲く桜の波に人の山 座る目の前花と酒のみ

上野山花見に座るすぐそばを 美人の足が横切りてゆく

花の下父の肩に乗る幼子や けふの思い出忘れまじかな

上野の地大きな桜枝開き 腕を広げて我つつみだく

夕日映え桜の命数えれば 幾度見られし日のしずみかな

上野にて花と美人にみとれしや 時の流れもゆるやかな春

友人作
この桜いま日本を明るくし 幸せになり友と楽しむ

益荒男の色気が足りぬヒトにつき 美人と酒を呑む立場なし

機関車が貨物率いて鹿島まで 頼もしかな先陣を切り

雨に濡れ花もひかるるあじさいに かぜをひくなとつぶやいてみる

かたつむりまだ姿見ぬ梅雨の空 出番なるぞと呼び歩くかな

水無月の晦日間近の晴れの日に 打ち上げたかな紫陽花花火

なつかしき客車の刻む線路の音 偲ぶ心でサハに乗り込む

国鉄の香遠のくさみしさを 今の線路に八ツ当りする

夢も見ずまぐろのごとき図体で 不毛の時間元に戻らぬ

夏なのに布団かぶりて汗をかき 食べる食べるでいたちごっこ哉

水の上氷が浮かぶ様を見て 時間をつぶす我も馬鹿なり

うすさむし避暑地の夏はいかばかり 冷たき風よどこから来たか

雷が鳴るひまもなく涼し哉 蝉の鳴く声張り合いあらず

せみの唄ミンミンゼミとアブラゼミ つくつくぼうしまだ加わらず

せみの唄みんなうまくてこだまする 輪唱みたくあちらこちらで

梨畑夏のかき入れ忙し哉 春の寒さに実おくれる

目を覚まし梨が日差しにみのり出す 甘きからだに涼を求めて

涼やかな風吹く夏の日曜日 部屋で寝そべり天井ながめ

風吹きて髪の毛ゆらす葉月の日 寝床のからだなでてゆくかな

鈴の音夏の夜風を身に受けて ゆられゆられて汗をかく哉

秋の虫唄い始めの庭の声 天女が混じるその輪の中に

秋の虫姿わからぬ草の影 美声の主におひねり渡す

天高く浮かぶ雲の白さかな 女と西で遊んでみたし

虫の音が聞こゆる長夜秋の風 紅葉の下に美人おらぬか

秋の空神輿もおどるわが町や 先ゆくわらべいそいそ歩く

かさかさと風に舞い散る秋の空 淋しさにじむや紅葉の色かな

横川の浮かぶ思い出釜めしに 信越線の味かみしめて

真田家の難攻不落上田城 午後の日差しが落ち葉ふみしめ

城跡の赤と黄色が眩しくて 紅葉か銀杏見分けつかぬや

はいせんは電車か戦どちらかと 問えば答えぬ上田城哉

赤い身に誘惑されし信州で 浮気するよと言いふらすなり

大粒の涙流して顔ぬらし ぬくもりほしい秋嵐かな

結露にてくもるガラスに写る顔 情けなしかなまぬけ顔あり

寒々と雨音聞こゆ冬の夜 恋人もなき涙のごとし

寒き夜師走の声が賑やかに 降誕祭は楽しからずや

年の瀬に冷たき雨が降り注ぎ 嫌な想いで洗い流すや

小雨降る土曜の午後の寒さかな 毛布の中に別世界あり

葉の落ちたはなみずき見て冬を知り 枝にとまりし鳥もおどろく

寒さゆえ雪に変わらむ冬の雨 部屋で吐く息白い霧かな

風に乗り耳に届くは江戸川を 渡る電車の通過音

年末を過ごすつもりの伊豆の宿 湯浴み酒呑み歌を詠みたし

年の暮からすも啼くか忙しく そうじのほこりくしゃみする哉

意志弱し散歩へ行くと胸に秘め 結局出掛けず太ったまま哉

愛うえお書きくけこ哉差しすせそ 何ぬねのより発ちつてと

寒波来て震えがまんし身をひそめ 人のぬくもり求め叶わず

犬吠える君も寒いか冬の空 晴れが恋しきさみしき休み

拍子木を鳴らして歩く冬の月 天まで届け甲高き声よ

枯れた木と氷張りたる霊園に 涙誘いし死者の町かな


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