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作品名:夢で会いましょう 作者:chihiro

第2回 過去の会話
「やっと目が覚めましたね。」裕子は目を開けるとなじみになった看護婦の目とあった。「先生があなたの症状について説明します。」そういいながらベッドの上座を上げた。
「こんにちは千葉さん。私はあなたの担当医の福岡といいます。あなたの下腹部の痛みは今回が最初ではないですね。いつごろからでしたか?」
「うーん、はっきりと覚えていないですが数年前からでしょうか。生理時の痛みだと思っていたので医者にいくことなくそのままにしていました。」
「あなたのご家族の中でがんになった人はいますか?」
「私の知っている限りではいません。というか両親も兄弟もあまり親しくなかったので。」
「そうですか。」
「私はがんなんですか?子宮がん?」
「家族がいないあなたに隠し事はできませんね。あなたは子宮がんでかなり進行しています。ご結婚は?」
「していません。するつもりもないです。」
「子宮を摘発しないとあなたの命はよくて半年ほどでしょうか?」
「摘発してください。長く生きていたいと思わないけれど子宮がなくてもなんらかまいません。先ほど保険会社に電話してがん保険について担当者と話をしました。」
「わかりました。すぐに手術の準備に入りましょう。日時はスケジュールを見て優先的に行います。」
「ありがとうございます。よろしくお願いします。」
福岡はうなずき裕子の肩をぽんとたたくと病室から去っていった。
一人残された裕子は眠ろうと勤めた。大宮に会いたかったのだ。しかし眠りは訪れなかった。
(大丈夫。彼はずっと寄り添っていられるって言ってくれた。ずっと一緒にいられる。だから怖くなんてない。もともとこの世界に私の居場所なんてなかった。彼の隣だけが私の居場所なんだ。)
眠ることをあきらめた裕子は窓の外に広がる太陽光線や風で揺らぐ木々、空に広がる飛行機雲を見つめていた。
(結婚か。)裕子は福岡との話を思い出していた。(彼にプロポーズされたときにYESといっていたら私の人生は変わっていただろう。彼と結婚していたら今彼に思いを寄せている気持ちは同じだっただろうか?)裕子はすでに答えが出ていた。プロポーズされたときに寝てもさめてもそのことばかり考えてやっと決めた答えがNOだったからだ。(だからこそ今でも彼を思っていられる。もし結婚していたら一緒にずっといられるとは思わない。人間は果たせない夢はいつまでも見るけれど一度それが現実になってしまうとすぐに心変わりをしてしまう動物だということは今までの人生上わかっている。
さわやかな風と心地の良い太陽光線の中でまどろみながら裕子は英三がもうすでにこの世に存在しないことを悟った。そしてそれでもいいと自分に言い聞かせた。

「あなたの今までの人生を知りたいわ。」裕子は自分も含めて英三と話しをするときは時間など関係なく前回の話の終わりから始められることに気がついていた。
「たいしたことないさ。茶のみ友達と親の近くで針灸を営んだけれど親が介護が必要になって数年で針灸もたたんだ。そのうちに友達も体を悪くして親元に帰っていった。俺は健康面に関しては自分で針を打ちながら何とかしのいできたけれど歳には勝てなくて。そんなときに君の事を思い出した。あいつは元気でいるんだろうかってね。何年も同棲していた女のことはすっかりと忘れてしまっていた。」
「うそでも私のことを思い出してくれてうれしいわ。彼女のことじゃなく私を思い出したなんて優越感に浸れるわね。」
「君の彼女に対する気持ちはとっくに気がついていた。だけど男って案外と変なこだわりを持つのが多いから。」
「変化を好まないことも知っているわ。あなたの住んでいる地区じゃないのに私にとって彼女が住んでいる地区は聖地だった。」
「君のことが聞きたい。あれからどんな人生を送ってきたのか。」
「海外にいったわ。いろいろな都市でいろいろな人に出会って楽しもうとした。でもどこにいっても私の居場所じゃない気がしていた。日本で旅行会社にはいってそれなりに恋もした。あの聖地に住んでいる男性にもあったわ。でもうまくいかなかった。うまくいくはずなんてないわよね。ずっとあなたが好きだったんだから。」
「その男とは別れたのか?」
「付き合ってはいなかったわ。私の完全なる片思いだったから。彼はきっと私の心のそこの気持ちに気がついていたのでしょうね。それからは私の周りに男性はいなくなったわ。でも悲しいとは思わない。私ね、今頃になって思うことがあるの。それは一番好きな人とは結ばれないって聞いたことがあるけれどそれは戸籍上の問題であって心は何とでもなれるんだなって。」
「もし俺が君のことをなんとも思わなくてこうして再会することもなかったらどうしてた?」
「それでも私の気持ちは変わらない。片思いもその人と結ばれたいから片思いというのであって自分の気持ちに正直であるならばその人が自分のことを思っていなくても相手にパートナーがいたとしても関係ないと思うの。だって自分の気持ちはひとつしかないもの。誰かから奪うような自己中心の考え方ではなくてすきになったことに感謝するの。」
「いつも思ってた。君の心は広いって。そういう考えは思っていても実際に実行している人は少ない。」
「あなたに鍛えられたからかもしれないな。」そういうと裕子は微笑んだ。「私の経験してきた恋がそうさせているのかもね。」
「プロポーズを受けてたら違っていた?」
「たぶんもっと苦しんでいたでしょうけれどでも結局変わらなかったと思うわ。あのプロポーズはジョーク?それとも本気?」
「今となっては本気。でもその当時はどう考えていたのか忘れたよ。」
「あなたは年齢を重ねて人を思いやる気持ちが出てきたのね。」
「あのころはそうじゃなかった?」
「私にとってはとってもきつかったわ。まるで言葉でなじられているようなそんな気分にさせられた。」
「確かに俺の責任だけれど誰も本気で俺を愛してくれる人はいなかった。君が俺とこだわりをもって会ってくれたのを知っている。バージンの小娘が俺をもてあそんでいた。」
「もてあそんだつもりはないわ。ただ特別でいたかった。毎日女を取り替えている人に覚えてもらうにはそれなりに印象つける必要があったのよ。確かに初めてで何もわからない小娘のやることじゃなかったかも知れないけれどそれでも一生懸命に考えた末の行動だった。」
「君は見事だったよ。だからあの時君は最高の女だったって言ったんだ。」
「頭と心が引きちがれそうだった。」
「女はそういう大事なときに思い切った決断をするよな。男は案外とめそめそしている。」
「あの時は体に錘を抱え込んだ気持ちだったけれど自分で決めたことだからと心に言い聞かせて前に進んだわ。でもそれでよかったのだと今では確信を持っていえる。それはあなたとこうして再会することができたからよ。」
「ああ、そうだな。・・」

突然会話が途切れた。目を開けると白い殺風景な病室に戻っていた。


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