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作品名:ハチマタの運命(KAMIKAZE続編) 作者:chihiro

第9回 潜入
空港でぼろぼろになったブルカに着替えて出るのは人の目を引いた。教会は町に入ればどこにいてもわかる場所にあるが空港から町まで十一キロメートルもある。炎天下のなか黒のブルカを身につけて歩くのはある意味できついものだった。療養中に白くなった肌も黄金色に焼けた。車の通るときに起こる風や自然の埃などで疲れきりおなかをすかせたみすぼらしい難民を演じることができた。
時間はわからなかったが太陽は真上にある。到着したのが十一時ちょっとすぎだったので一時間歩いたことになる。夜の九時までに到着して中にいるかわいそうな施設の女性たちを説得させなければいけない。時間はあるようでハチマタにはあまり時間は残されていなかった。
ブルカを身に着けた女性が一人でいることに警察はハチマタの行動を見張っていた。真昼でも女性の一人歩きはご法度なのだ。ハチマタは英語で説明した。
「私は難民です。道に迷いました。施設に行きたいのですが・・」
警察はハチマタを上から下へ下から上へと舐めるように見定めた後こういった。「ここのとおりをまっすぐ行くと町に出る。大きな建物が見えてくるからそれが教会だ。」
「ありがとうございます。」
それから二時間後、ハチマタはやっと町に入ることができた。空腹で脱水症状のような気がしたが空腹を満たす食べ物も水分も取らなかった。
教会の前についたとき力尽きて倒れてしまった。

一時間後再び目を覚ますとそこにはナディアの顔が飛び込んできた。
「気がついたのね。よかったわ。あなたが脱走したときから心配していたのよ。」
「ありがとう・・」
(意識を失っている間に薬を打つこともできたのにそれをやらなかったのはナディア、あなたの計算ミスよ。)ハチマタは心の中で思った。
「おきられる?まずはスープを飲みましょう。あなたどのくらい外にさまよっていたの?」
「わかりません。時計を持っていないから。」
「とにかくこれを飲んで。」そういってスープをハチマタに渡した。
ハチマタはここに毒薬が入っているかもしれないと慎重だった。
「よく教会がわかったわね。施設は爆発されたの。病院も今ではなし。多くの人が爆発によって殺されたわ。彼らは私たちが教会に移動したとわかっているけれど教会を破壊することはできない。モスクではなく教会にしたのはそういう意味からでもあるの。」
「ナディアの子供は?」ハチマタはナディアのおなかを見てへっこんでいることを気がついた。
「爆発で殺されたわ。そういうあなたは?」
「脱走して分娩が始まって死産でした。砂漠のどこかで埋まっています。」
「そう、大変な目にあったのね。でもまだあなたは若いからこれからでも妊娠はできるわ。さっそく誰かあなたの好みのタイプを紹介しましょうか?」
「六歳以上の男子はどうなったんですか?」
「全滅したわ。だから今妊娠しているものだけが頼りなの。今は妊娠中に女の子だとわかるとすぐに墜児させられるわ。そういう薬を発見したから。」
「そんなものを打って母体に影響って出ないんですか?」
「出ているかもしれないわね。でも六年と十ヶ月も待っていられないほど人が足りないのよ。あなたが出て行ってから静かにすごせる日はないといっていいくらい。」
「どこか他の町や国ではだめなんでしょうか?」
「移動できる手段がないの。欧米軍のレーザーは少しでも動くものが見つかったらその何秒後かに攻撃してくるから。」
「罪のない人を殺しているんですね。」
「そうよ。彼らは正義という名前でそれを堂々とやっているわ。そんなの不公平だと思わない?」
「彼らは平民じゃないから平民の考えを理解しない。どこまでいっても平行線ですよ。歩みよることはできない。」
「そうね。」
「だからといって罪のない人が虫けらのように殺されてしまうのは反対です。だから何とかしないといけない。」
「個人で何かをやるのは難しいわ。」
「いろいろなデモストレーションのやり方があるでしょう。私の仲間はテロリストという形でデモをしました。結局それは声に届かなかったと思います。だってそれ以来我々はテロリストと戦争をしていると政府は言っているわけですから。人質にとられた人のことを考えない。とにかくテロリストに勝つことが最優先だと考えている。それは間違っています。人命救助が最優先にするべきです。戦争をするのではなくなぜ話し合いをしないんですか?テロリストにも言い分があります。だから自分流のやり方で態度を示している。それが戦争という名前になるなら絶対に無理です。」
「で、あなたにはいい考えがあるのかしら?」ナディアは私はすべて知っているのだよという顔つきで笑って質問した。
「率直にいうとありません。」
「そう、じゃあなぜここに舞い戻ってきたの?脱獄者は殺されるって言わなかったかしら?」
「聞きました。私の命はほしくありません。単刀直入にナディアが話をするのであれば私も単刀直入にここに来た目的を話します。罪のない妊婦を解放してほしいのです。」
「そんなことができるわけないじゃない。私の先ほどの話を聞いていなかったの?今は人員が足りないのよ。今では妊婦だって仕事をさせようと思えばできるわ。」
「仕事って何ですか?」
「テロリストとなること。たとえば橋に時限爆弾をセットしたり、ナイフで狂ったように人を刺したり。専門的な知識など要らないわ。」
「教会にいたのではそういうこともできないですよね。解放するのですか?」
「そうね。悪くない話だわ。あなたが指揮を執るってことどうかしら?何しろ私たちの間で大変評判よかったアリの子供を宿した女性ですもの。砂漠に産み落としたというのもテロの素質はあるわ。」
「報酬は?」
「あら、報酬なんて要求するの?あなたの願いをかなえてあげるって言っているのよ。それが報酬にはならないの?考えてみることね。夜の九時まで時間はあまりないわよ。九時にみんなをバスに乗せて移動させる。そしてどこでもいいわ。ロンドンあたりにしようかしら?時限爆弾セットと人を刺す。それをあなたの指揮の元でやらせるわ。他の女性はどこかで待機してもらってまた連絡する。そうしたらあなたを殺すのはやめてあげる。お得な取引でしょう?あなたが今からここにいる女性を口説いてもどれだけの人が承諾するかわからないわ。でも私が言えば全員が承諾するわ。それは時間の短縮を意味している。私にはあなたたちが用意するバスを何らかの形で来なくさせることもできるのよ。明らかに分の良い答えはわかっているわよね?それをはずすのはあなたらしくないわ。」
ハチマタは蝦夷をかんだ。明らかにナディアが正解だ。
「わかったわ。その条件を飲みましょう。」


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