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作品名:ハチマタの運命(KAMIKAZE続編) 作者:chihiro

第8回 イラクへ
「どういうことなのかわかりません。」
「つまりあなたを逃がしたのも今回の爆弾事故も仕組まれたことなの。彼らはきっとあなたが私のもとにいるってことも知っているでしょう。そしてイラクにあなたがまた行くことも計算しているわ。」
「私がまだ決めかけていないのに?」
「あなたの正義感を考えれば決めていないのはおかしなことよ。彼らのこれからの作戦はあなたを受け入れて表向きは逃亡者として罰せられる。その方法は銃ではなく薬ね。この世に存在する薬は一滴で死んでしまうものがあるから。とにかく彼らは今は資金面で最低なの。だから大げさなことはしない。だからこそ今回の計画を実行したのだと思うわ。」
「私はまだわかりません。私の正義感は行けといってます。でも果たして任務を遂行できるかどうか。今までその日暮らしで責任感のあることをしたことがないんです。だから迷ってます。」
「逃げ出した理由をもう一度よく思い出すことね。移民の子だから、テロの子だからそれを断ち切るためではなかったの?人はいつの時代でも過ちを犯すわ。でも間違いを気がついてそれを正す。それが人間だと思う。」
ハチマタは思い出した。そうだった。移民の子は移民、テロの子はテロを断ち切るために脱走したのだ。
「私、イラクに行きます。」ハチマタは力強くアディルに言った。
「わかったわ。さっそく何をやるべきなのか説明するわ。」アディルはそういうとガラス張りになっている本棚を開いてある本を取り出した。「その中に拳銃が入っているわ。あなた使ったことは?」
ハチマタは首を横にふった。
「拳銃は普通ロックがかかっているわ。それをはずすときはこうやって引っ張る。そうしたら弾が入っているかどうか確認してね。狙いを定めてそれを撃つ。後はまたロックする。簡単でしょう?」
「アディルさんの話だと私は薬を打たれるみたいだけれど拳銃だとまずいのでは?」
「もちろんナイフも持ってもらうわ。常に眠るときも肌身離さず持っていること。何があるかわからないから。あなたの運動神経は?」
「悪くないと思います。」
「そうね。妊娠九ヶ月であれだけ歩いたのだから根性もありそうね。希望を持っていれば生につながるわ。」
「私の場合は希望じゃないんです。一番弱虫の男の子供を宿したことで自分が許せなくてだからそんな女性もいると思うんです。その人たちのために何か復讐をしたいと思って。」
「憎しみも生につながる。でもその弱虫は死んだのでしょう?」
「あっけなくベルギー中央駅で。子供にはつみはないけれど許せなかったから砂漠に埋めました。母性愛って私には足りなかったみたいです。」
「好きな人の子供だったらそうならなかったわよ。とにかくナディアには気をつけて。彼女はあなたに真っ先に近づくわ。そして彼女の任務はあなたを殺すことでしょうね。」
「私は何も知らないふりをしていればいいんですね。自分の感情を表さないのは昔からの日常だからそれだけは自信があります。」
「ナディアはあなたがこちら側の人間だということは知っているわ。それでもたぬきになれるかしら?」
「もちろんですよ。人に私の本音を話したことありませんから。」
「わかったわ。今日から二日間、拳銃やナイフの使い方、あなたの運動神経のテストなどハードスケジュールになるわ。」
「できる限りのことをしてみます。」

アディルが言うようにハードスケジュールだった。養生後の体であってはかなり不可能に近かった。そんなハチマタを動かしたのは関係のない人が無駄死をしたやるせない怒りだった。モハメッドをはじめとするKAMIKAZEの任務を果たした人。犠牲になった人、教会から港までの間力尽きたもの、漁船に波を受けて沈んでいったケリーとその子供。戦争がなければどれもありえないことのはずだった。ハチマタは気力だけでハードスケジュールをこなした。
「よくがんばったわね。これで出発前の訓練は終わりよ。イラクについてからの話をするわ。彼らの新しい居場所は教会になったわ。だからどこに行けばいいかわかるわね。」ハチマタはうなずいた。
「次にどこかで行われるテロ事件のためにあなたが施設にいたときよりも男性の数が少なくなっている。つまりセキュリティが甘いってこと。でもナディアとラディックは四六時中目を光らせているわ。言い換えればあなたを待っているのかもしれない。だからいきなりあなたがいって何かをされるということはないわ。あなたは心を入れ替えた。施設に身を寄せたいといえばいい。ここまでいい?」
「問題ないわ。」
「いきなり誰かから強姦されるかもしれない。でもそれも大丈夫ね。あなたが妊娠できないからだだということは言わないほうがいいわ。利用していると思わせておけばいい。」
「いつ私の任務は遂行されるんですか?」
「夜よ。日中にあなたはそこにいるすべての女性に声をかけて。一緒に逃げようと。もうすぐ心と体が安全な場所に案内するからと。決行はアディルとラディックが一緒にいるとき。もしかしたら監視カメラがついているかもしれないけれどそうしたら戦闘開始ね。」
「車は指定どおりに来るのでしょうか?」
「手配済み。」
「何らかの関係でこなかったら?」
「ありえないわ。でもその可能性もあるかもしれないわ。あなたがそれは考えて。」
「私が盾になってでも彼女らを救い出します。」
「あなたも死に急いでいるの?」
「そういうわけではありませんけれどでも死んでも役に立てるならそれはそれでいいと。」
「わかったわ。報酬はそのときはどうするの?」
「福祉団体にでも寄付をしてください。」
「OK。ではチケットを渡すわ。あなたの幸運を祈ってる。」
「ありがとうございます。がんばって今回の任務を成功させます。」
アディルはハチマタにチケットを渡した。キプロスからイラクまで一時間弱だった。
ハチマタはTシャツにジーパンというラフなスタイルでイラク入りすることになった。空港のトイレでブルカに着替える。ブルカはわざとよれよれにしていかにも長時間歩いてたどり着いたようなふりをしなければならない。
ハチマタはアディルの運転でキプロスの空港までいった。
「がんばってね。」
ハチマタはうなずいた。そしてあれほどまでに帰りたかったフランスではなくイラク行きの飛行機にまた乗る羽目になるとは思わなかったと苦笑いをした。
飛行時間が一時間弱となっては何もすることがなかった。しかしフランス語の新聞があったのでハチマタは目を通した。そこには小さい記事だったがアガディールで逮捕されたマリーが刑務所でハンストを起こして死亡したとの記事を見つけた。
(これでやっとギムのところにいけたのね。)ハチマタはマリーの死を悲しくはなかった。
彼女は自分の意思で行動をしたのだ。そして最終的に息子の元へと旅立った。
考えてみればモハメッドも家族の元へ行きたかった。だから任務を引き受けたのだ。
(私は家族のところになんて行きたくない。だからまだ死ぬわけには行かない。)
ハチマタはこぶしを握り締めた。


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