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作品名:ハチマタの運命(KAMIKAZE続編) 作者:chihiro

第3回 ハチマタの決意
ぬれていた両腿の付け根はすぐに乾いた。しかし開いてしまった子宮は閉じることなく、けりまるでハチマタの体内からすべてを吐き出すような気分だった。しかしハチマタは何も言わなかった。そして誰もハチマタの体をいたわるものはいなかった。自分のことで精一杯だったのだ。体力が朽ち果ててその場で倒れるものもいた。しかし誰も足を止めたりしなかった。それが難民としての運命なのだと誰もがわかっていた。
難民一向の一日は日差しが強くなる正午から午後五時にかけて休息の時間としてほかの時間は可能な限り歩いた。しかし港はまだ遠かった。潮のにおいがまったくしなかった。時々複数の男性が地図を元に自分の居場所と港を確認するが一向に現れてくれない。はじめは三十人ほどいた難民たちも途中でリタイアして今では半分の十五人ぐらいに減っていた。女性で残っているのはハチマタとケリーと呼ばれているものだけだった。ケリーは乳飲み子を連れている。ストレスで母乳が出ないときもあるが普段からそうだったのか母乳の代わりになるものを即席で作っては子供に飲ませていた。
「ケリーはその子を愛しているのね。」
「ハチマタはなぜ子供を捨てた?」
「私は強姦されたの。すきでもなんでもなかったわ。その強姦した相手は私の仲間をみんな殺した。結局数ヵ月後には死んでしまったけれど、もし彼がみんなに話を持ちかけなければ今頃は私はここにいなかったし、子供を身ごもることもなかった。そしてきっとその仲間とは会うこともなかった。あなたの子供のことを話して。」
「私は小さいころから病気だった。十歳まで生きられないのではないかといわれていた。でも何もなく今でも生きている。妊娠がわかったときにとても信じられない思いだった。しかし医者をはじめとするものたちは私に負担がかかりすぎるから生むことを禁じた。信じられないって思った。人は私の人生をコントロールする。十歳まで生きられない。子供を生んではだめだ。だから私はそれをひとつずつ打破してきた。あんたたちの言ったことはまったくうそなんだよってね。」
「ケリーは強いのね。だから難民として参加したの?」
「ヨーロッパだったらどこの国でもいい。それは今よりも明るい自分らしい人生が待っていると思っているからだ。ハチマタは?」
「私は任務があるの。戦争に関してとても疑問に思っていることがある。テロリストは悪い。だから殺す。でも殺してしまったらテロリストと同じじゃない。どんぱちやるよりもやることがたくさんあるはずだわ。私はある施設にいた。そこにはテロリストの予備軍を作るために集められた女性がいた。彼女らはその施設内では自由だけれど本当は自由じゃない。六歳までは子供と要られるけれど男の子は予備軍として訓練されるわ。そして女の子はその餌食にされるの。親は何もいえない。私はフランスに行ってそういう自由を奪われた女性たちを保護してほしい。それを頼みに行くの。」
「偉大な夢だね。でもそこまでに行くにはあまりにも今の現状は遠すぎる。」
「確かにそうね。でも難民として命を落としたとしても別にかまわないとも思っているの。先ほどフランスに帰って政府に頼むっていったけれどフランスに帰っても仲間はいない。理由を話せば保護はされるでしょう。でもコントロールもされる。自由な刑務者になるかもしれない。何もかもわからないわ。ただ悪を倒すのに血を流す必要はないと思う。だって何の罪もないものも血を流すのよ。テロリストや正義軍に入った人は死を覚悟するわ。でも平民は死を覚悟していない。そんなの不公平でしょう?」
「ハチマタの思いはわかった。でもまずは自分の体を癒すべきだ。私の母は助産婦として多くの子供をこの世に送り出してきた。私も長女でよく手伝ったよ。だから助産婦の立場として言わせてもらうが膣を閉めないと大変なことになる。私はハチマタに生きていてほしい。そして力のない人を助けてほしい。だから今からあなたの膣を閉めることをしないといけない。ちゃんとした病院のようにはできない。道具もない。でもやるだけのことはやってみたいんだ。あなたの話を聞いて助けたいって思った。」
「時間はどのくらいかかるの?」
「ほんの一時間あれば十分だ。今は休息の時間だ。この時間に何とかしたい。力強く歩いてほしいんだ。よれよれと今にも倒れんばかりの歩き方ではなくね。」
「ありがとう。あなたに話をしてよかったわ。でもこの話は本当はご法度なの。」
「わかっているさ。誰にも口外はしない。」
ケリーはハチマタを寝かせると両足を開かせて膣を縫い始めた。麻酔なしで針や糸が入っているところを感じるのは不快そのものだったがケリーを信じるしかなかった。
「終わったよ。一週間後には自然とふさがっていると思う。そのときには糸を切らないといけないけれど。」
「ありがとう。」
「それにブランケット、私は子供と一緒に使うから一枚つかっていい。」
「何から何までありがとう。ケリーは私にとって天使だな。」
「天使だなんて大げさだ。さあ、そろそろ休息の終わりの時間だ。また夢に向かって歩こう。」
「そうだね。」
ハチマタは歩き始めた。休息前と後では体の重さが数段にも違った。腰に力が入り足が勝手に動く。うれしくてスキップをしたい気分だった。ハチマタは今まさに自由を感じていた。誰の言いなりにもならない、自分の夢や希望に向かって一歩一歩前進している感じだった。
(この思いを彼らにも味わいさせてあげたかった。)
ハチマタは俺たち流のデモストレーションと歌っていたものたちをしのんだ。モハメッドは自分が命を落とすのはかまわないが誰かが犠牲になることを避けて誰もいない工具店に突っ込んだ。不幸にも近くを歩いていたものが負傷したが何の罪もない人をまき沿いにすることはなかった。
(モハメッドはやさしい子だった。彼と愛を交わしていたらきっと先ほどのようなことは考えたくもなかっただろう。ユーネスの気持ちもわかっていた。でもユーネスはどちらかというとギムに頭が上がらずイエスマンになるしかなかった。それでも自分の体をまるで切り身みたいにすることはなかったのに。新聞を読んだ限りでは彼は花火のように散った。文字を通してしか伝わらなかったけれど花火のように散ったのは自分の心を表したからだったとハチマタは解釈したのだ。
ギムはまるでロボットになったようだった。心を切り離す。その心はたぶんマリーの元にでも行っていたのだろう。マリーはアリとコンタクトを取ったということで警察に連行されたと書いてあったけれどその後どうなったのだろう?裁判にかけられて刑務所に入ることになっていなければいいが。どちらにしてもマリーもギムの後をすぐに追うだろう。彼女はやろうと思ったらできる人だ。
一番許せないのがアリだ。私を強姦したくせにみんなに任せて自分だけブリュッセルに逃げた。結果的にはブリュッセル中央駅で警察の手によって裁かれたけれどなぜみんなと一緒に死ななかった?それが許せない。主犯のくせに一人だけ逃げるなんて。子供を見たときにアリの生き写しを見た。だから速攻で決めたのだ。生き埋めにしなければならない。もうあのころの自分ではないのだということを。そしてテロリストの予備軍を増やしてはいけないと。アリの計画を最後に破ったのはハチマタだった。


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