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作品名:ハチマタの運命(KAMIKAZE続編) 作者:chihiro

第11回 アイドルのコンサート
アンドリューの屋敷はネットが自由に使える。とはいってもパソコンなど触ったことある人は限られていて電源のつけ方さえも知らない人のほうが多い。そんな中ハチマタはアンドリューの部屋にあるパソコンで調べ物をしていた。ファイルには鍵がかかっていて番号が振られているので何のことだかわからない。だから他の方法で検索しなければならなかった。
ハチマタは「マンチャスター、三月十六日」と入力して検索した。出てきた答えは世界的アイドルのコンサートだった。
ハチマタはすぐにこのコンサートで被害を出さないようにするにはどうすればいいのかを考えた。
パリの三角劇場みたいに誰かがライフルをもって当たりかまわず乱射するのだろうか?それとも手りゅう弾か何かで転がして恐怖のどん底に突き落とすのだろうか?何もわからなかった。アンドリューは明日のお楽しみとしか言わない。誰がその任務を言い渡されたのかさえもわからない。ハチマタは途方にくれた。
地図を見てみるとコンサート会場となる近くにモスクがある。果たして彼らはモスクも狙うのだろうか?テロリストはアラーの神のことを口にして自爆を遂げているがイスラム教とはまったく関係がないことを気がついていた。誰も金曜日にはお祈りしない。朝夕の祈りさえもしない。ハチマタはこれまで多くのイスラム教と出会ってきた。いいイスラム教信者、悪いイスラム教信者。悪いイスラム教信者でもモスクには近づかない。彼らは近づいて破壊するつもりだろうか?心がこじれてしまったテロリストたちには何でもありのような気がした。
「なんだ、もう正解を見つけたのか。」
後ろを振り向くとアンドリューが立っていてこちらを笑いながら見ている。
「正解ってやはりコンサートを狙うのね。モスクもなの?」
「君の想像どうりさ。」
「誰が任務につくの?」
「そんなこと教えられるわけないじゃないか。君は罪のないものを救い出すという任務に尽きたがっている。だから俺たちの任務を遂行しても何とか止めるべきだということも百も承知だ。ナディアの考えは君に事故現場を見せることで自分がいかに非力であるかを思い知らされることにある。大きな団体の前には個人など非力なのだ。そして彼女は君がこちら側の人間に百パーセント入ることを願っている。君を買っているんだよ。ナディアがここまで誰かにほれるのは珍しい。私にはできないわ。」
「君は妊娠できないことを言っているのか?それだったら知っているぜ。敵を受け入れるということは相手の情報を把握することだ。残念ながら俺には女性は興味ないんでね。」
「だったらどうして私とあなたを組ませたの?」
「ナディアを知ってもらうこと。そして俺のコミュニケーション力で君を口説き落とすこと。とにかく明日は早い。任務に負かされたものはすでに出発している。」
「なぜ車で行くの?車種が同じだったら怪しいって思われないの?」
「残念ながら俺が乗っているものは一日に何万台と生産されているものだ。そして近づかない。だからわからないのさ。警察も一般市民も事件のことが一生懸命でそこにある車のことなどどうでもいいからだ。車ではなくもし列車で行ったとしたら俺の顔は知れている。それはまずいことになるんだ。」
「テロの仲間として?」
「そういうことだ。さあ、もう寝なさい。事故は夜行われるがロンドン橋のように終わったあとではなく初めから余興を見たいだろう?」アンドリューは大笑いしながら階段を下りていった。
ハチマタはどうすればいいのか考えた。しかし任務者はすでにこの屋敷にはいない。どこで夜を明かすのかもわからないとなっては探しようがない。
そんなところへアディルから電話が入った。
「任務は?」
「私たちは今ロンドンにいます。ある意味では成功ですが一味にとらわれて監視を任されました。もちろん私がアディルのもとで働いていることを知っています。」
「敵もやるわね。」
「明日マンチェスターでコンサートがあります。その近くにモスクもあります。そこが狙われます。私は見ることで個人はいかに非力を思い知らされるためらしいです。もしアディルのほうからマンチェスターの事故を止めてくれたらいいのですが。」
「了解。で、今回任務をする人はどういう人?」
「それがわからないのです。施設にいた人たちなんです。テロリストは見ているだけ。一般人に事件を起こさせています。」
「そして死亡させる?」
「そのとおりです。施設に入っていた人は自由を選んでよかったと思わせて死を選択させます。警察も犯行が一般人であるということでテロリストメンバーから探すことを苦労しているみたいです。イギリスに拠点を移したことによってヨーロッパのあちこちでこれからテロ事件が多くなるとも言ってました。」
「そこにいる人たちはどういう国の人なの?」
「イギリス人、フランス人、スペイン人、アジア人もいます。」
「マンチェスターのあと、必ずどこかに移動すると思うわ。それがわかり次第連絡を頂戴。それが次回の事件現場になると思うから。あなたはそれを私に連絡してくれるだけでいいわ。あなたもとらわれの身となったんですもの。何もかも一人ではできない。」
「わかりました。わかり次第連絡します。」
「簡単なメッセージだけでいいわ。パリだったらPARIS、マンチェスターだったらMANCH。どうせきかれているとかあなたの行動は彼らに筒抜けになっていると思うから。」
「わかりました。」
電話を切って後ろを振り向くとナディアが聞いていた。
「ダブルミッションも楽じゃないわね。」ナディアはそれだけ言うと階下に下りていった。

翌日ほとんど眠れないままでいたハチマタは遅い朝食をとっていた。一緒に行くはずのアンドリューが姿を見せていないのだ。ロンドンに足止めを食っていては助けられることができない。ナディアを見かけたのでアンドリューのことについて聞いてみた。
「アンドリュー?もう昨日からいないわよ。あなたは今日はロンドンでゆっくりしていて。」
「私は監視しなくていいんですか?」
「その必要がないからあなたはここにいるの。」
どうやらハチマタがアディルと連絡を取ったときに計画を変更したみたいだ。
ハチマタは部屋に戻るとパソコンにアクセスした。ロンドンからマンチェスターまでどんな方法で逝かれるのか探した。しかしお金を持たされていないハチマタにとってどれも不可能だ。ロンドンまで行くのさえもままならない。アディルが行動を起こして事故を最小限に食い止めてもらうしかない。待つことも仕事なのだ。
リビングにはマンチェスターに行ったもの以外がそろっていた。皆同じ境遇だったのだ。ロンドンから離れている。屋敷は広いが庭を散歩するには寒すぎる。三月の中旬だったが真冬並みの気温だった。
ハチマタがココアを飲んでいると一組のカップルが近づいてきた。アジア人だった。
「私たちはフィリッピン人です。ロンドンに来てから考えました。イラクから出たのはとてもうれしいけれどそれは実は母国でのKAMIKAZEをさせるってことなのではないかと。ロンドン橋のカップルはイギリス人でした。ここにはマンチェスターから参加したものがいない。スペイン、フランス、イタリア、ロンドンからすぐにいける場所にある。そして私たちフィリッピン。アジアはモスクとはあまり係わり合いがない。でもフィリッピンを拠点としてアジアに事件を起こすことができる。これからオリンピックや国際大会が目じり押しだ。あなたの母国はどこですか?」
「私が生まれた国はモロッコ。でも気がついたときにはフランスにいた。だから両国が母国よ。」
「あなたは途中抜け出した。施設を抜け出すことは死を意味する。それなのにあなたは生きている。
それは何かをさせるためなんですか?」
「そんなことを聞いたけれど本当のところは何もわからないわ。」
「今日の事件はいつごろ起こるのでしょう?」
「夜。マンチェスターで国際的なスターのコンサートがあるの。その近くにモスクもあるわ。今日は金曜日。モスクにもたくさんの人が集まるわ。でもその考えは他の人には言わないほうがいいわ。特にナディアやラディックに聞かれたらただではすまないと思うから。」
「この屋敷には盗聴器がたくさんありますよ。彼らはどこに隠れているか知らないけれどいなくても始終俺たちを見張っています。施設は外に出られなかったけれどここも似たようなものですよ。ただいきなり爆撃されるってことがないだけで。」
「そうね。それは私も気がついていた。でも今日のことはニュースでしか知ることができないから昼寝でもして夜に備えましょう。」

ハチマタはベッドに横たわって先ほどの話を思い返していた。施設にいたときのストレス、トラウマからこのまま自由にしてくれるはずがないことはみんな知っている。そして次々と人がいなくなり最後の任務につかせられる。
「この時間に横になっているなんて珍しいね。」
アンドリューだった。
「ナディアからマンチェスターに一人でいったって聞いたけれど。」
「俺の仕事は終わった。だから帰ってきた。ナディアとラディックはまだ現地にいる。これが終わったらフランスに渡る。うれしいだろう?」
「パリに滞在するの?」
「いや、南仏だ。残念だったな。どちらにしても君の仲間はもういない。さてそろそろ時間だ。ゆっくりと俺たちの成果を見てほしい。」そういうとアンドリューはテレビをつけた。
そこにはモスクが爆発したと報道があった。そして近くのコンサートホールにもその被害が及んだということだ。死者はあわせて五十人以上を超す大惨事になった。
「君のボスのアディルは何もできないで見ているしかなかったってことだね。どれだけ悔しい思いをしているだろう。」
「被害者の中にここにいた人もいるの?」
「もちろんさ。彼らは元難民でアラブ人だった。もちろんモスクに祈りにいったよ。そこで木っ端微塵になったのさ。その被害が回りに及んだ。女性はモスクに入れない。だからコンサートホールでコンサートの終わりを待って手りゅう弾を投げた。その女性は腕力がない。落ちたところは自分の近く。こちらも木っ端微塵だ。まあ、一緒に死ぬことはなかったけれど同じような死に方をしたのだから彼らにとっては幸せなのだろう。」
「なぜ幸せなものですか。生きていればもっといろいろなことができるわ。」
「それは君の考えであってそう考えない人間も要るってことだ。」


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