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作品名:ハチマタの運命(KAMIKAZE続編) 作者:chihiro

第1回
ハチマタは施設に一週間でなれた。そして一週間で退屈を覚えた。朝夕のつわり以外は調子がよくお茶を飲んだりお菓子を食べたりして過ごした。同じ境遇の人たちとも少し話をしたがあまり詳しい話をするなとナディアに言われていたので話をすることもなかった。
施設にいる女性たちは世界各国からきているらしく英語もフランス語もアラビア語もほかの言語も聞こえた。誰もがほかの人に興味を持ったりしなかった。自分のことだけで精一杯だったのだ。だからハチマタもそれにならった。だからこそ退屈を覚えたのかもしれない。
施設にはテレビはなかった。世界がどうなっているのかまったく情報が入ってこなかった。子供を生んでテロリストになるべきものたちには世界情勢などまったく必要なかった。
施設の横は医者がいるということだったがかなり大きな病院だった。当然のことながら負傷したものたちが運ばれてくる。それは兵士、一般市民も同じだった。

ある日ハチマタが検診に行ったときのこと、爆弾で被害をこうむった男性が待合室で待っていた。
その男性は付き添い人と一緒に小声で話をしている。
ハチマタは俄然興味がわいてきた。そして彼らの近くに席を見つけて座った。
「この国はもう死んだも同然だ。欧米連合軍は見当違いの場所を狙ってくる。おかげで俺たちが怪我をするという寸法だ。あいつらはテロリストを殺すのではなくイラク市民を殺しているのではないかと時々思うよ。」
「そうだな。俺が聞いた話だと南欧に逃げ出す連中が後と立たないとか。費用はいくらだか忘れたがかなりな値段らしい。」
「費用を払ったとしても生きて南欧に渡る確率はかなり少ない。おまけにある国では難民を受け入れる体制がまったく整っていなくてあちこちの国に振り回される。」
「それでも欧州に渡ってしまえば生きる望みは多大な確率になる。どうだ。乗ってみないか?」
「いくらなんだ?」
「2000ディナール」
「そんなに払えないよ。それは一人当たりの金額だろう?」
「そうだ。だが逃げ出すやつは後を絶たない。」
「みんな金持ちなんだな。家を売ったり家畜を売ったりして得るのか?」
「そうらしい。ただ女性はそんなことをしないでもいけるみたいだ。」
「どういう手を使うんだ?」
「それは決まっているだろう。女の武器を使うのさ。」
「女っていうのは都合のいいようにできているな。でもお前にはあてがあるのか?」
「ああ、難民としての出発は毎週金曜日、モスクに行って残っていればいいそうだ。」
「怪我をしたものでも大丈夫なのか?」
「もちろんさ。そういう企業は金しか興味がない。怪我をしてようとお構いなしだ。」
「さて、そろそろ家に帰るとするか。もちろん送ってくれるだろう?」
「ああ、そのつもりでここまで残ったんだ。」
二人は席を立って出入り口に向かった。二人のうちの一人がハチマタのほうを向いてにやっと笑った。

(2000ディナールか。ユーロにするとどのくらいなんだろう?でもそれは船の話で港まで歩いていかなければならない。こんな体でシリア砂漠を横断できるだろうか?いや、もしフランスに帰れるのであれば帰りたい。私にはどうしてもやらなければならない任務がある。隣の施設にいる女性たちを救うのだ。子供をとられて殺されたりテロリストの予備軍にさせるわけには行かない。いつだったか目にした記事だったけれどテロリストの餌食となったものは保護されると書いてあった。いろいろと聞かれるかもしれないけれど子供を失うこともないし政府が保護するのであれば普通の生活ぐらいはできるはずだ。彼女たちに明るい夢と希望を与えるのだ。世界中のみんなを幸せにすることはできないけれど少なくても今問題を抱えている人の手助けをすれば政府だって動くだろう。アリたちのデモストレーションではなくて正しいやり方でデモを行うのだ。私一人だけではない。難民は後を絶たない。私が途中で倒れたとしても必ず誰かがそれを引き継いでくれる。そこには血を流すことはない。
ハチマタはあふれ出る希望を抱え切れなかった。

施設に帰ったハチマタはさっそくナディアを探した。ナディアは唯一外に出られる女性だ。彼女だったら何かほかの情報も知っているかもしれない。
新しい女性をみんなに紹介しているときだった。
新しい女性はアジア系の女性でびくびくしている。
「ナディア、話がある。」ハチマタは小さな声でつぶやいた。
ナディアはうなずくとアジア系の女性をみんなの輪の中に入れてすぐにハチマタのところにやってきた。
「検査の結果はどうだった?」
「異常なし。でもまだ性別はわからないそうだ。何でもモニターを採るときに性器が隠れてしまっているらしい。」
「そうか。そういうときは生まれてくるまでわからないものだ。ところで話というのは?」
「病院で聞いたうわさだけれど難民のことだ。2000ナディールってユーロでいうとどのくらい?」
「2,5ユーロ。」
「それだけ?もっと高いものだと思っていた。」
「船に乗るつもりか?」
「どうしてもフランスに帰らなければならない。」
「何のためだ?」
「ここにいる施設の女性たちを救うためだ。そして女の子の殺しをやめさせるため。男の子のテロリスト予備軍をなくすため。」
「いいか、よく考えるんだ。私たちがここにいられるのはほかでもないテロ集団のおかげだ。その見返りに男の子を予備軍として練習させている。」
「ナディアはそれでも平気なの?女の子を殺されたんでしょう?男の子をテロにとられたんでしょう?自分の子供をもっとそばにおいておきたいと思わないの?」
「そんなことはとっくに考えたさ。でも裏切られない。私は新しい女性を連れてくることで外出許可をもらっているけれどそれはその日だけだ。」
「夜の外出もだめなの?」
「夜にうろついてみろ、正義軍とかのGPSがだまっちゃいない。攻撃されるだけだ。そうするとどうなる?ここで暮らしているものたちも狙われる。あんたの考えはたぶん正しいのだろう。でも状況を把握しなければならない。それにだ。もし仮にここをうまく抜け出して港に着くまでどうするつもりだ。砂漠があるんだ。普通の人間でさえ砂漠を横断するのは大変なことなんだ。まして妊婦が横断なんて命を落としに行くようなものだ。それに船だってちゃんとした船じゃない。風が吹けば飛ばされるような船でヨーロッパにたどり着けると思うか?指針も何もないんだぞ。馬鹿な考えを今すぐ捨ててここでおとなしくしているんだ。あんたをはじめてみたときこの子だったら大丈夫だと思ったがどうやら私の小門違いだったらしい。」そういうとナディアはホールに行き始めた。そしてくるっと後ろを振り返りハチマタに言った。
「いいか、今後その話を持ち出したら命がないと思え。」それだけ言うとナディアはアジア系の女性に説明をするために中央にいった。


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