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作品名:KAMIKAZE 作者:chihiro

第2回 ある計画
ユーネスの昼飯はマリファナだった。モハメッドはユーネスから一本もらい吸った。
「何か言いたいことだらけだな。言ってみろ。ここだったらある程度のことは話せる。」
「まず、どうしてあなたは時限爆弾を作っている?どうして他の行員はそのことに大騒ぎしない。」
「まあ、俺のやっていることを見ていろといったからなんだろうが、他の奴らだって社会のためにものを作ったりはしていないさ。」
「どういう意味だ?ここは何の工場なんだ。」
「登記は部品工場さ。しかし行員はすべて前科があったり目的があったりする。」
「目的とは?」
「まだいえない。」
「そうか。ギムと話をしていたときにアリの話をしていた。君たちはアリのことについて何か知っているのか?」
「何かとは?」
「何の目的でアリがシリアに行ったのか。アリが何のサイトを見てこれこそが二十一世紀の自由、平等、博愛だと思ったのか。」
「ああ、知ってるよ。」
「教えてくれないか?俺だけ知らないみたいだ。」
「アリから直接聞け。聞いていないということはまだ知らなくてもいいということだ。」
「アリはフランスに帰ってくるのか?」
「もちろんさ。戻ってきたらまた前のようにお前に指示を与えると思う。そのときに知らされると思う。」
「そうか。俺は仲間はずれにされたわけじゃなかったんだ。」
「いや、お前は俺たちのメンバーの一人だ。」
「メンバー?メンバーって誰なんだ?」
「俺、ギム、アリ、他にも増えるかもしれない。」そういうとユーネスは立ち上がり臀部についた埃を払った。それが休憩時間の終わりだと察したモハメッドはユーネスに続いた。

工場に行き始めてから二週間目ぐらいのこと、ユーネスはモハメッドに簡単な時限爆弾を作らせた。
「意外と簡単だろう?こつさえつかめばどんな形でも出来る。原理は変わらない。」
「こんなに作って使い道があるのか?」
「それも今は知らなくていい。時には知らないほうが幸せなこともある。」
「知っているユーネスは不幸なのか?」
「そんなことはない。自分のやっていることは誇りだと思っている。ただ言わないだけだ。」
モハメッドはまるで目の前に多くのピースを置かれ、「今から作れ!」と言われているみたいだった。そしてアリのモハメッドに向けた言葉を思い返してみた。
(あの時、まるで偶然にも素晴らしい思想を持った団体を見つけたといった。でも誰もが知っているところを見るとそれはずいぶん前だったことをあらわしている。ギムやユーネスはその団体にすでに参加しているのだろうか?そして今回はアリの番で俺もその団体に入るためにシリアに行くのだろうか?何故葉っぱだけではいけないのだ。今までだってうまくいっていたじゃないか。)モハメッドは不安だった。知らないということは幸せだとユーネスは言ったけれどモハメッドにとって幸せとは縁遠かった。

アリがシリアに行ってからモハメッドは住むところがなくなってしまったので工場に寝泊りした。確かに他の箇所でもユーネスと似たようなものが無造作に置かれている。作業場の奥の部屋は鍵がかかっていて開かなかった。ユーネスは面倒くさそうに薬品が入っているから鍵を閉めているといっていたがモハメッドは信じられなかった。ここで働いているものは優しくはなかったが冷たくもなかった。ただ余計なことは話さないだけだったのだ。
ギムはここの工場では特別扱いされている人物だった。工場長を見たことはなかったけれど一切の権限をギムに任せているみたいだった。ギムが警察官でこの工場を担当していたので他の警察官や政府関係のものがここに訪れたことがなかった。
(だから俺たちはこういうものを作っていられるのか)モハメッドは感心した。
そんなときに物音がした。モハメッドは一挙に緊張した。寝床を失って雨風をしのげる屋根のついたところだったら路上生活者はどこにでだってやってくることは自分の体験上知っているからだ。モハメッドは作業机の下に隠れることにした。
「モハメッド、俺だギムだ。出て来い。」
モハメッドは安堵した。そして静かに机の下から顔を出した。
「今から俺の家に来い。早くしろ!」
つまずきながらもモハメッドはギムの後をついていった。
車はパトカーだった。仕事の帰りに点検をしていたのだろう。
「助手席に乗れ!」ギムはあごで指図した。
モハメッドは手早くパトカーの助手席に乗る。そしてシートベルトをするときに後方座席に誰かいることに気がついた。少女のような感じがした。うずくまっている。怪我をしているのか興味があったが自分からは質問しても答えがないときはないと散々言われてきているのでギムが車を出すのを横で感じながら空を見ていた。
ギムの家は車でほんの数分のところだった。
「まずはお前が中に入れ。」そういわれたので恐る恐るギムの家の中に入る。そこには疲れ果てた女性がいた。それが誰なのかすぐにわかった。ギムとそっくりだったのだ。
「あんたがモハメッドだね。こっちにきて食べなさい。嫌いなものはない?」
ギムの母親はモハメッドに食事を与えた。一方ギムはまた車に引き返して先ほど後方座席にいた少女を抱いて家の中に入った。そして何も言わずに他の部屋にその少女を寝かせて処置をしていた。
「食べて力をつけないとだめよ。葉っぱをすべてやめろといわないけれど、食べて筋力、体力を作るの。体格がよければ人を圧倒することが出来るでしょう。今のあなたは私でも打ち任せられるような顔をしている。私たちはフランス人でキリスト教徒。おかしいでしょう?そんな人たちがイスラム教徒の世話をするなんて。でもね、どの神を信じようともそれは関係ないこと。」
「母さん、あまりムダ口を言わないでくれ。こいつはまだ何も知らないんだ。」
「わかったわ。じゃあ、私はちょっと奥を見てきましょうかね。」そういうとギムと入れ替わりにおくの部屋にいった。

「あの子はなんですか?」モハメッドはびくびくしながら尋ねた。
「強姦されていたところを助けて拾ってきた。この町の人間はフラストレーションがたまっている。すべてとは言わないが政府がさじを投げたからだ。フランス人としてより一人の人間として恥ずかしいと思う。しかし政府相手に一個人が何かを出来るわけではない。」
「ギムさんも政府に対して悪意を持っているんですか?」
「俺はフランス人だ。そのフランス人が自分の国の管理をしているものたちに愛想を尽かしているんだ。」
「だからある計画なんですか?」
「ああ。」
モハメッドはある計画というのがなんなのかまったく見当がつかなかった。ただギムの笑わない顔を見て事態は深刻だということしかわからなかった。


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