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作品名:杜鵑草ー春まだ遠くー 作者:chihiro

第7回 予期せぬ運命
俺は彼女とだけ話をするようになった。つまりスカイプもラインもつかわなくなったのだ。
時々他の人との話はあるサイトのおしゃべりだけ。しかし仕事から帰ってきて食事をして横になりながら録画してある漫画を見ているので当然のことながら他の人との話はおろそかになる。彼女は連絡をする前にメッセ−ジングで俺が起きているかどうかを確かめる。
彼女は俺がすべてのつながりを切ったことで満足しているようだった。彼女が満足していれば俺はうれしかったが彼女に対しての感情は増えたりしなかった。
やはり俺は一人になれすぎてしまって誰かと特に異性と話をしたり付き合ったりすることがなんとなく面倒になってきてしまった。女はそういうところが勘が働くらしく夏に比べて連絡も遠のいていった。
(あの人はどうしているだろうか?元気でやっているのだろうか?まさか俺のために命を落とすなんてことはしないだろうな?)
そんなことを考える日もたまにあった。
あの人は俺にとって特別だった。一夜を過ごしたことも愛を交わしたことも。男は始めての女には特別の感情を持つと言われるがまったくその通りだった。俺は彼女と話しをしていても時々あの人のことを思い出してしまった。
「ねえ、聞いている?もう眠くなったの?」
「うん、ああ。」
「まだ先の話だけれど正月休みにまたどこかにいきたいな。いいでしょう?」
「ああ」
「どうしたの?何か隠していることあるの?」
「ないよ。」
「うそ、言って!」
「過去の話さ。だから関係のないこと。」
「過去の話でもあなたのことだったら何でも知りたいの。」
「君と出会う前にある人と関係を持った。その人は俺のことをすきだったみたいで俺が君と付き合い始めたっていってもそれはあなたの勝手で私があなたを好きなのには関係ないって言われた。」
「それで?」
「それだけだよ。その人とは会っていない。」
「でもまだ心がその人に残っているの?」
「残っていないと思う。ただ時々思い出すんだ。」
「どんなことを思い出すの?その人と関係を結んだこと?」
「いや、他のこと。」
「他のことって何よ。かなり早い時期に他の人とは会わないで。話もしないでって言ったわよね。それを守らなかったってことでしょう?」
「それは悪いと思った。でも俺たちは付き合っているんだからもっと自分に自信を持ってもいいと思うんだ。今だってこうして君だけとしか話をしていない。」
「他の人とは本当に話をしていないの?」
「話はするよ。でもくだらないことさ。アニメのこととか、俺が年上なのにいつもいじめられていたり。からかわれているよ。」
「男って特にあなたは女の感情って鈍感だから。いじめている人があなたに好意を持っているかもしれないじゃない。」
「どうして女ってそういう考えにたどり着くんだ?」
「前にもそういうこと言われたの?」
「ああ。」
「誰に?その人?」
「そう。」
「私のことはどう思っているの?今のあなたの気持ち。正直なところを話して。」
「君の事は好きだよ。離したくないって思っている。」
「本当に?だったら正月休みに一緒に旅行にいけるでしょう?」
「それとこれとは別だろう?」
「別じゃないわよ。私のことを思ってくれるなら、一緒にいたいって思うでしょう?そうじゃなくたってあなたの休みは少ないんだから私のことを一番に考えてくれるのならば二つ返事しか帰ってこないと思うけれど。」
「あまり人ごみの中には行きたくないことは知っているだろう?」
「出かける、イコール人ごみの中とは限らないでしょう?夏休みだってうまく一定ただじゃない。なのにどうして正月休みはうまく行かないって思うの?」
「俺の休みは一日だけだ。連休なんて取れるのは夏と冬だけなんだ。君と付き合うことにしたのは近所で平日でも会えるようにしたかったからだ。だからあえてどこかに行くなんてことはしたくないんだ。ゆっくりと休みたいんだよ。」
「正月休みをすべて私のために使ってほしいなんて頼んでないわ。一泊でもいいのよ。あなたとの思い出を作りたいの。それもだめなの?」
「俺は恋愛経験が少ないから何をどうしていいのかわからない。君を喜ばせたいと思う。でもどうしていいのかわからないんだ。こういうことを言うのは・・」俺は途中で言葉をとめた。初めてだというつもりだったがあの人に言ったことを思い出したのだ。
「こういうことを言うのは何?」
「恥ずかしいって思う。」
「話してくれてうれしいわ。それだけ私を信用してくれているってことだから。」
彼女は満面の笑みを浮かべた。俺はそれを見てさらにバツが悪くなった。
「一泊で近くだったら。」
「うん。また一緒にどこに行って何をするか決めましょう。」
「リクエストがあるんだ。」
「何?」
「遅めに逢ってゆっくりと食事をしてドライブしよう。海かどこかで車の中で過ごして朝日を見る。なんなら羽田空港で富士山を見てもいい。」
「それって誰かとすでに行ったこと?」彼女は怒った顔で言った。
「いや。なんとなく思いついたことだ。そういうプランが気に入らなければ君の気に入るプランでいいよ。」
「大晦日の日にそれをやりましょう。車はどうするの?」
「いつも母が正月用の買い物に行くためにつかうけれどその後はつかわない。だから大丈夫だ。」
「わかったわ。明日も大変な仕事をするあなたを解放してあげる。」
「君はもう寝るの?」
「ううん、たぶんビデオでも借りてきてみるかもね。」
「明日も電話していい?」
「もちろんよ。あなたから電話が来なかったら私のほうから電話するから。」
「わかった。おやすみ。」
「おやすみ。」
俺は自分の馬鹿さ加減にあきれていた。
何故あの人としたことを彼女としようとしたのか、どうして何もかも話してしまったのか。俺の心はいったいどこにあるのか?知りたかった。


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