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作品名:杜鵑草ー春まだ遠くー 作者:chihiro

第4回 本当の別れ
俺の予想は当たっていた。きっと俺もそれを望んでいたのかもしれない。彼女は「私の知らない間に捨ててもかまわないから。」という条件つきで俺に強引に会った。俺が優柔不断で日時を指定しなかったので彼女は勝手に時間と場所を指定してきた。
何故そんなに一生懸命になれるのだろう。いつも思うことだが彼女は俺よりも十歳も年上なのにとてもエネルギーに満ちている。いつか彼女の本を読んだときにあとがきに「恋する心が自分にエネルギーを与えてくれる。」と書いてあったことを思い出した。
彼女のスカイプのIDはわかっていたけれど彼女の日本での住所や電話番号は知らなかった。スカイプで最後に調べようとしたら障害でスカイプにログインさえも出来ない。彼女はたぶん俺が来るまで絶対に待っているだろう。どういうシーンなのかわからないが俺が彼女にひそかに思いを抱いていたときに「私は赤名リカになる(東京ラブストーリー)」といっていたからだ。漫画でしか見たことがないがリカは情熱の女性で手に入れるまで絶対にあきらめたりしない。彼女を見ていると彼女が赤名リカになってもおかしくないなと思ったからだ。
スカイプがやっと障害が終わって開いてみると最後のメッセージには「来てくれるまで絶対に待っているから。」と書かれてあった。俺はスカイプ経由で連絡をせずに彼女が残してくれた電話番号に電話をした。
「今どこにいるの?」
「新杉田の東口?デパートのほう。」
「うーん、そこだと車が入れなくなるから反対側に出てくれる?そうすれば駐車場もあるから止めることができる。」
「わかった。どのくらいでこられる?」
「十五分ぐらいかかるかな?」
「わかったわ。」
俺はすぐに自分が指定した場所に向かった。すぐに帰るつもりだった。母親が自分の夕食の分も作っていたからだ。もし作っていなかったら彼女と飯でも食べる予定だったのか?だから優柔不断だって言われるのか?」俺はわからなかった。
自分の気持ちを短い時間の中で整理した。
今付き合っている人は確かに好きだ。でも結婚を考えているわけではない。どちらかというと趣味が合うから話をしているという感じだ。彼女はどうなのか?もちろん結婚も考えていない。恋人同士になるなんてことは尻にひかれそうだしつねに自分が彼女よりも十歳も年下であることを意識しなければならない。よって自分の指揮権がなくなってしまう可能性がある。しかし自分のことを思ってクッキーを焼いたり、珍しいものを土産に持ってきたりフランスから何かを送ってもらうことは正直言ってうれしい。その後で親などから問いただされるのは面倒なことは面倒だが。
彼女に合図を送るとすぐに彼女は俺の車に乗ってきた。まるで何度も練習していたみたいな、ドラマのワンシーンみたいな動作だった。
「悪いけれど今日はすぐに帰るよ。家を出るときに俺の食事も用意してあったから。」
「約束のものを渡したらすぐに帰るわ。もちろん送ってもらわなくても大丈夫よ。」
彼女はいつもと違う口調で言った。その口調はまだ俺のことを許さない感じだった。
「これは誕生日のプレゼント。気に入らなかったら姪でも誰にでも上げて頂戴。もちろん捨ててもらってもかまわない。このチョコレートケーキもね。味は保証できないわ。私はあなたにあげたかったから上げただけだけれどその後のことはあなたが好きにすればいい。」
「わかった。」
「それとお願いがあるの。もう優柔不断な人とは話をしたくないからすべての連絡先から私を削除してほしいの。」
「わかった。それには君も削除する必要がある。」
「わかったわ。帰ったらすぐにやる。」
「これで本当に終わりなのか?」
「終わりにさせたいと思ったのはどっちのほうなの?私は自分の気持ちを伝えただけ。あなたが最初から私のことを好きだと思わなかった。それはあなたの気持ちだもの。私には何も出来ないわ。今までこんな私に付き合ってくれてありがとう。」
「ネットでももう付き合いはなしなのか?」
「そういったはずよ。中途半端なことは大嫌いなの。こうでもしなければ私の気持ちに踏ん切りがつかない。」
「わかったよ。これ、少ないけれど交通費として取っておいて。」そういうと俺は彼女に千円を渡した。
「ありがとう。さようなら。」
彼女は車を降りて扉をばたんと閉めると振り向かずに新杉田駅に向かって歩いていった。


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