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作品名:いつかきっと 作者:chihiro

第8回 未来は?
「なんかさ、この部屋に来ると落ち着くんだ。きっとコーディの仕方がうまいんだろうね。」高宏はぽつんと置かれたコタツに入って周りを見回した。
「ただ適当においているだけだよ。ってここ最近の部屋の中では一番狭いから自分の思い通りの配置にするってことは無理なんだ。」
「俺の部屋みたいにごちゃごちゃしていないからなんだろうな。この部屋で不足しているなってのはテレビぐらいなもの?テレビって見ないの?」
「ネットですべて見られるから。生中継でスポーツ観戦をさせて揚げられなくてごめんね。」
「いや、自分の部屋じゃないから。さっきの話だけれど、君が体験してきたことには絶対にしない。一人にしないよ。」そういうと高宏は紅茶を置きに来た久美をつかんで抱きしめた。
「ありがとう。本当にうれしい。」
「未来の予想夢とか見るの?」
「ううん、まったく見ない。まるで私は未来に行っては行けないような気がするの。」
「過去に留まっているっていうのか?」
「なんとなくそんな感じがするの。でも過去を振り返るのはやめようと思う。ネットサーフィンをしていたらどこかのサイトで人間は十パーセント前に進みたい気持ちと九十パーセントの過去に戻ってしまう自分がいるんですって。それが心理学って書いてあった。」
「それは一般の人のことだろう?君みたいに前世のことを記憶している人は過去を振り返るって心理学とは違う気がするな。」
「未来がわかれば対処の仕方も違ってくるけれどわからないから。またリピートしてしまうのではないかとそれが不安なの。」
「人の話聞いてない?さっき一人にしないっていったよ。君が見つけてくれたこの出会いを大事にしたいんだ。それに何らかの理由で今世がうまく行かなくても俺たちは絶対に来世でも出会う。だってこれだけあってきたんだもの。俺には過去も未来もわからなくてもこれはわかるし自信を持っていえる。俺たちに時代とか年齢とか関係ないんだ。今思ったことなんだけれどそうやってまただめかもしれないって思っているからだめになるのかもよ。俺が今言ったことを復唱してみて。」
「えっとあなたは私を一人にしない。何らかの理由でうまく行かなくてもそれは終わりじゃない。」
「そうだ。俺のこと信用できなくても自分の心は信用できるだろう?俺を好きだっていう気持ちはゆるぎないものなんだろう?」
久美は頷いた。
「だったらそれを信じればいい。揺るぎない事実なんだから。そろそろ帰るわ。長居しているとずるずると一緒にいたくなる。」
「引き止めてごめんなさい。そしていろいろとありがとう。」

高宏は車の運転席に身を沈めるとひとつ大きなため息をついた。今のところ久美に対しては何の不満もない。自分に会うために長い時間を使って見つけ出して大事にしたいというのも理解できる。自分にとって久美は大事な人なのかもしれない。ただ恋をしたことがない高宏にとって恋がどんなものなのかわからないのだ。確かに久美のことは好きだ。毎日そばにいたいとも思う。長い間の彼女の夢をかなえてやりたいとも思う。男として誇らしいと思う反面、可能性があるのであれば他の女性とも付き合ってみたいと思う。
(きっとそんなことをしたら怒るだろうな。自分という人がいながらどうして他の女性と付き合ってみたいなんて思うのといわれるだろう。)
もういちど高宏は大きなため息をついて車を走り出した。
久美が住んでいる神奈川区から自宅に帰るには高速道路を利用したほうが早いのだがボーっとしていて高速道路を過ぎ去ってしまっていた。仕方がないので一般道路を使って帰宅することにしたのだが桜木町を過ぎたあたりでまるで誰かに操られているような感じで関内駅北口にある伊勢崎モールに立ち寄っていた。伊勢崎モールは一日中車が入れないが歩行者天国になる境界線に簡易椅子と古ぼけたテーブルクロスをかけただけの簡易テーブルの前に紫色のローブを着た女性が座っていた。
高宏は近くに車を止めてその女性に近寄っていった。
「あんたが来るのを待っていたよ。まあ、座りなさい。」
高宏はおとなしく言葉に従った。
「未来はいつだって隠されているんだ。そしてひとつだけではない。どれをとるかは当人次第。」
「俺はどうすればいいかわからない。ある日突然世界が変わった。まだ戸惑っている自分がいる。」
「自分の思うまがままに行動すればいい。あんたの運命、人生なんだから。」
「もし今までと同じように俺があの人から去っていったら彼女はどうなるのだろう?」
「来世以降にあんたを追うさ。今までずっとそうしてきた。」
「俺は彼女のことを愛せないのか?確かに好きだ。でももっと強い大きなものをいまだに感じられないんだ。」
「愛せないのは何故だね?どこが好きなんだね?」
「守ってあげないとって気持ちになる。そんな感情は嫌いだったら出来ないよね?彼女がいうように俺たちは強い絆で結ばれていたらしい。そんなことを聞かされなくても毛嫌いすることはない。でもそれだけなんだ。強い何かが、決定的なものがかけている。俺はすぐにそれに気がついた。何故彼女はそれに気がつかないのかわからない。」
「彼女は自分の周りだけしか見えていない。あんたみたいにもっと遠いところから状況を把握していない。把握できない。過去の体験が一歩下がって全体を見られないようにブロックされている。」
「彼女に諭すべきなんだろうか?」
「好きにすればいい。」
「あなたは誰なんですか?どうして過去も未来も見てきたようにはっきりといえるんですか?」
「私は時の番人だ。占い師みたいにアドバイスは出来るが未来のことを言うことはできないんだよ。まあ、よく考えてみるんだね。」
「俺はとても・・」高宏は一瞬下を見たが再び顔を上げるとそこには誰もいなかった。
三度目の大きなため息をついた。


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