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作品名:いつかきっと 作者:chihiro

第7回 手作りのチョコレート
久美は今まで手作りのチョコレートを作ったことがない。そもそもバレンタインデーなんかは久美にとって無縁でどうしてもその時期にチョコレートが食べたいときはビターチョコレートを買って一人で食べる。バレンタインデーに高価なチョコレートを買ったり自分で作って好きな人に渡すなどということは思いもつかなかった。そんな久美がチョコレートを作ろうと思い始めた。インターネットで検索できるバレンタインデー用のチョコつくりはたくさんあって初心者の久美は材料もかからず手軽に出来て失敗のないものを選んだ。
「男のハートを射止めるのにはまずは胃袋から。」というつもりはまったくなかった。「思いを形に。」の心境だった。
チョコレートつくりは楽しかった。自分の気持ちを入れてレシピにしたがって形にしていく。「どんな顔をして食べてくれるだろう。」「渡した後の彼の反応はどうなんだろう?」そんなことを作業中に考えられる。そして自分の彼に対する気持ちに気づく。
自分を向上させてくれた、やる気にさせてくれた彼への感謝と彼だからこんな気持ちになれた自分への思いと共に完成させた。
「うん、甘くもなく苦くもなく大人のチョコレートって感じだな。」久美は味見をすると自己評価を下した。時計を見るとデートまであと一時間と迫っている。すごいスピードでシャワーを浴びてこの日のために買った服を着て鏡を見る。「うん、完璧。久美ちゃん、がんばろう。」久美は自分で自分にエールを送った。

「今どこらへんかな?待ちきれなくて早く来すぎた。なんなら迎えに行きたい。」
久美が根岸線に乗っていると高宏からのショートメールが届いた。
「今は関内。石川町まで来られる?」
「OK、すぐに行くよ。北口のほうで待っていて。中華街の近くの出口。」
「はい。インターの近くね。」

(普段着なのにどうして彼はこんなにも素敵に見えるんだろう。きっと私が色眼鏡をかけてしまっているからかもしれない。)
道路の端にウィンカーをつけて車から上体を出して手招きする彼に久美は一瞬見とれていた。
「今日の君は輝いて見えるね。」車に久美が乗り込むと開口一番高宏は言った。
「そう?あなたと会えたことがとってもうれしいから。」
「どうしてそんなにかざりっけがなく素直に自分の気持ちを言うことができるの?」
「他にとりえもなく自分自身に自信がない私だけれどこれだけははっきりといえるから。」
「そういってもらうと何かくすぐったいな。俺そういう経験ないから。」
「だったら一緒にそういう経験をしていこうよ。」
「君のその前向きな発言とても気持ちがいい。」
「お互いにほめるのはこれでおしまい。はい、これ、チョコレート。人生初めての手作りだから味は本当に保証できない。甘くもなく苦くもない味だけれどお口に合うかどうか。」
「ありがとう。うれしいよ。俺、本命チョコをもらったことってなかったんだ。いつだって義理チョコ。姪からもらうチョコはご機嫌取りのチョコだから味がしなくて。」そういって高宏は小さく笑った。
「私もバレンタインデーなんて無関係の人だったの。みんながやるから私もっていうのが嫌いでね。でも今回はみんながどうのこうのじゃなくて私の気持ちを形にしたかった。それだけ。」
「ご飯食べに行こう。その後でご馳走になるよ。中華街の近くだからまたチャイナタウンに行く?」
「ラーメン食べに?」
「ラーメン食べたいの?本当に君は飾らない。フランス料理とかイタリア料理とかありそうなものなのに。」
「気取ったって味なんかわからないもの。私は庶民代表ですから。」そういって久美は笑った。

「ああ、久しぶりにおいしいラーメン食べて幸せ。」車に戻った久美は座席につくと伸びをした。
「石川町の近くにイタリア庭園があるんだけれどそこで話をしない?それともファミレスにいく?」
「自然な場所のほうがいいな。きっとあなたは煙草がすえなくてイライラしちゃうだろうけれど。」
「煙草だったら車の中ですうから大丈夫さ。俺だって仕事しているときは煙草は吸わないよ。すえる場所にいるからたくさん吸っているみたいに見えるけれど。」
「今の時代喫煙家にとってとても生き辛いじゃない。でもやめようと思わないんだよな。たとえ食料よりも煙草代のほうが高くついたとしても。」
「それ、わかるな。俺は食料なんて親が買っているから負担はないけれど煙草だけでも相当な金額を毎月落としているって計算上ではなるもの。」
「私みたいな手巻きの煙草にすれば安く済むわよ。」
「毎回巻くのが面倒だ。日本人は面倒くさがりやだから。」
「それも知ってる。でも面倒とお金とはかりにかけてやはりお金が大事という考えに達したときに普通の煙草から手巻き煙草に変更出来ると思うわ。私も最初は手巻きが下手で作った煙草の中に葉がなくて吸った気分にならない時もあったわ。今でも時々そうなんだけれど。」
「君は何でも試しているんだね。」
「可能性があるならば試さないと。やらなかったら自分にあっているのか否かわからないじゃない。」
「そういうところが素敵だと思う。ところでもう夢には悩まされていない?」
「最近の話だけれど三つの時代の映像を見たわ。どの時代も同じというのはないけれど共通点は家族とか近いもの。でも最後には必ずあなたがいなくなるの。」久美はそういうと少し悲しい顔をした。
「今世は俺がいなくなることはしないように努力する。」
「ううん、私のせいかもしれないから。でもね、その時々の時代であなたと出会えて近くにいてもらってとても感謝していることを学んだと思うんだ。私はあなたと会って感謝することを任務としているのではないかって思うようになった。」
「俺のほうこそ君と出会えて感謝しないといけないのかな。まだ一ヶ月もたっていないのに実に多くのことを経験させて貰った。」高宏は真剣な目で久美を見つめた。
久美は怖くなった。そして「ねえ、私が作ったチョコレート、味見してくれる?」


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