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作品名:いつかきっと 作者:chihiro

第3回 それぞれの思い
「まず名前から紹介しましょう。俺は布施高宏。独身で親と同居です。気がついたのは一ヶ月ぐらい前からなんですが自分の頭の中にある声が聞こえてきました。「私をずっと覚えていて。」その声の主に心あたりはありませんでしたから初めは気に止めませんでした。頻繁にその声が聞こえるようになり、時々近い未来が見えたんです。たとえば今回、俺は車ばっかりで電車に乗るなんてすごく久しぶりです。自宅は駅からバスに乗らないといけないところですがバスにも乗りません。そんな俺が煙草を買うためにバスに乗って駅でフラッと横浜に行ったのは映像が見えたからなんです。でもおかしいんですよ。普通何かを頭で思い描くときって自分から見た映像じゃないですか。今回の映像は誰かからみた映像でした。大勢の人、スポットライトみたいに一部だけが光っていたこと、確かめてみたくなりました。きっとあなたからみた映像だったのかなと今にしてみれば確信できます。」
「ずっと待っていて。私が誰かに言った言葉です。でもどうやってもその人の姿は見えませんでした。あるとき何かと交信できる占い師がいるときいてその人に質問もしましたが人物像は答えてくれませんでした。ただ近いうちにその人と会えるよだけしか言ってくれませんでした。それが一時間ぐらい前のことです。(久美は腕時計で確かめてから言った。)もしお互いがお互いの最近の悩みの種だったとしてこれからどうすればいいのでしょう。」
「誰のことを言っているのかわかっただけでも悩みはなくなると思います。というかまだ名前を伺っていない。」
「あ、ごめんなさい。及川久美っていいます。今は一人暮らししてます。」
「会ってすぐの得たいの知らない男に一人暮らしをしているとは言わないほうがいい。」高宏はまじめな顔で言った。「大丈夫ですよ。俺はそんなにナンパじゃないから。どちらかというと晩熟で。ってこういうことも最初に言うべきことじゃありませんね。」そういうと笑顔を見せた。「どこか別の場所で夕食にしますか?まだでしょう?」
「あなたの分の夕食が家で待っているのでは?私は出来合いのお弁当でも買ってそれを夕食とします。」
「高カロリーを夕食ですか。気をつけてくださいね。」
「心使いありがとう。一人暮らしなんてそんなものですよ。でも高くついてしまうんで出来るだけ自炊するようにしています。」
「もしよかったら電話番号を交換しませんか?お互い思い人が見つかってその後どんな変化が生まれるのか興味がわいてきました。」
「まるで何かの研究対象みたいな言い方ですね。」
「研究対象かもしれません。あれだけ悩ませたんだからきちんとした結果を出したいなって思いますから。」
高宏がそういっている間久美はレシートの裏に自分の名前と電話番号を書いた。
「これが私の電話番号です。そちらから電話がかかってきたらその番号を入力しようと思います。」
「えっと、実は機械音痴で自分の携帯電話に新規の電話番号を入れたことがないんです。」
それを聞くと久美は頭をかいている高宏の手から携帯電話を取ると自分の番号を入力した。
「はい、これで出来ました。」
「ありがとう。俺の携帯って普通の携帯だけど携帯でのネット検索のやり方がわからなくて。」
「電話は普通に使っているだけなんですか?」
「そうなんです。気の利いたことが出来なくていつも馬鹿にされてますよ。」
「これから覚えれば良いだけの話です。」
「そんなふうに前向きに言ってくれた人って始めてだ。今日あなたに会えたことに感謝しますよ。普段はこんなこと思ったことないんだけれど。」
久美はそのことについては何も言わずにただ微笑んだ。「じゃあ、また。」
「うん、じゃあ、また。」
久美は何度もガッツポーズをしている高宏の後ろ姿を見送った。

(これでもうあの映像は見なくて済む。)高宏はゲームをやりながら久美のことを考えた。
(ぐっすりと眠れることが幸せなことなんだって気がつくために今回のことが会ったのかもしれないな。)高宏は目を閉じて暗い闇に引き込まれた。

(これからどうなるのだろう。今まではその誰かと会うことが重要事項だったけれど、出会いが終わって連絡して・・)久美はそこまで考えると携帯電話を取り出した。まだ高宏からの連絡はない。
「さて、何もやることがないから眠るかな。」久美はわざと声にだして言った。
眠ることでこれからの指針を見られるかもしれないと思ったからだった。

数時間後
高宏は目を開くと時計を見た。時間は二時四十二分をさしている。トイレにいって戻ってきても質のよい眠りだったらしく再び眠りがやってくるのには時間がかかりそうだった。
携帯電話を持って電話帳を開く、数時間前に入れたばかりの名前が他の電話帳よりもより鮮やかに輝いているように見えた。
(この街のどこかであの人が眠っている。未来を指針するような夢は見ているだろうか?連絡先を教えてくれたけれど連絡して何を言えばいい?俺たちにどんな共通点があるんだろう?名前を教えあっただけで本当はまだ何も知らない。依然として彼女は俺にとって謎の女性だ。何故俺たちはつながっているのか。いつからのものなのか?これから二人に何が起ころうとしているのか?考えはじめたらきりがない。ああ、早く連絡をとってもいい時間帯になればいいのに。一秒がとても長く思える。カーテンの隙間から窓の外を眺め静まり返っている夜を感じた。

「どうして?確かに人の心は代わるものだけれどあなたと私に限っては変わらないと信じていたのに。だから昔からのイメージを出会う前から感じていたのではないの?お願いだから私から希望を取り上げないで!」久美は上体を起こして胸の高鳴りを沈めようと努力した。
(出会ったばかりだというのにどうして私は悲しい夢ばかり見るのだろう?夢占いでこういう場合はうまくいくというのかしら?)そう思いながら久美は自分の携帯電話を取って電話帳を眺めたがすぐに彼の電話番号は聞かなかったのだと気がついた。
(彼は電話をくれるのかしら?それとも私に合わせてくれただけ?だからこんなに哀しい夢を見るの?)携帯電話の時間が午前二時四十九分をさしている。今までは電話番号を知らなかった。でもちゃんと自分の思いが通じてこうして今日出会うことが出来た。だったらまた念じればいい。連絡がほしいと、あなたと何らかの方法でつながっていたいと意思表示をすればいいのだ。久美は自分の思いのままに念じた。


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