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作品名:いつかきっと 作者:chihiro

第1回 メッセージ
「どれだけ離れていてもどんなにあえなくても気持ちが変わらないからここにいるの。だから待っていてもいいんだよね。」
及川久美は目をかっと見開いた。心臓の高鳴りが収まると目だけ動かして周りを見渡す。見慣れた風景だ。自分は自宅の自分の部屋のベッドの中にいてちゃんと今を生きている。
久美はゆっくりと上体を起こすとベッド脇においてあるペットボトルを取り水を一口飲んで深呼吸した。
久美はいつごろからかこの手の夢ともメッセージともつかないものを見るようになっていた。
その背景は広い草原の中であったり、戦争をしている街中のひとつの道路であったりさまざまだ。
言葉から言って誰かに自分はいつまでも待っているからといっているが相手の姿はそのメッセージには現れない。自分の姿さえもそのときどんな格好をしているのかさえも現れない。
今では慣れっこになってしまってそのままにしがちだが夢を、メッセージを受け取ったころは一日中そのことばかり気になってインターネットで検索したものだ。といっても何の手がかりを元に検索すればいいのかわからなかった。夢で検索しても書かれてあることと自分が体験した夢とはかけ離れていて納得できなかったのだ。
久美は現実に戻り時計を見た。出勤時間が刻一刻と迫っている。急いでキッチンでお湯を沸かすとコーヒーを用意してバナナをほおばった。

久美が通勤に使っている根岸線は学校がたくさんあり女子学生が毎日のようにキャーキャーと騒いでいる。横浜から石川町までのほんの十分ぐらいのことなのだが当然周りの通勤客は通勤電車のストレスとしてあきらめかけている。
久美もその一人でその日は特に耳にすべての会話が聞こえてきた。
「・・でさ、友達がそこにいったわけよ。で占ってもらったらしいんだけれどそれからというもの何かと交信するようになっちゃって。もともと変な子だったけれどより一層不思議な子になったんだ。でね、昨日その子から言われたのよ。見知らぬ人と交信したことある?ってね。もちろんその子が言っているのは出会いサイトでの話しじゃなくて電話もネットも何も使わないで脳だけで交信するの。ここまで理解するのにマジで時間がかかったわ。」
「ふーん、案外いい加減なことを言っているんじゃないの?」
「私も最初はそう思った。でも確かに占ってもらったところって存在しているんだよね。伊勢崎町モールにあるんだけれど、そこまで連れて行ってもらって占ってみたらって言われたけれどなんか怖いからやめちゃった。」
「やめて正解だったよ。第一たまたまその子が交信できるって言っても他の人も同じように交信できるわけじゃないんでしょう?」
「そこなんだよ。彼女いわく誰でも交信できる人がいるらしいんだけれど、その交信にも強い、弱いがあるらしい。」
「ふーん、あ、そろそろ駅だよ。今日ってしょっぱなから小テストなんだよね。やばいよ。」
「そうそう、何にもしてないんだよね。」
そういうと女生徒は駅に降りていった。
(伊勢崎町モールで占いか。すぐに見つかるかしら?)

久美は珍しく残業を断った。伊勢崎町モールで占いにあってみたかったのだ。第三者に言わせれば馬鹿みたいな出来事でも久美にとっては今一番重要なことだ。これが解決しない限り他のことは集中して出来ないと、そして何もなくても何かあってもこれっきりで終わりにしたいものだと勇んでいた。
ほんの数分の女子高生の会話で占い師を見つけるのは困難かもしれないと思っていたがモールに入ったとたん目がそこに集中でもするかのようにいとも簡単に見つけることが出来た。
「あんたが来るのを待っていたよ。」ベールに包まれた女性は小さいけれど力強く久美にいった。「さあ、そこに座って。」
久美は言われるままに今にも壊れそうな椅子に座った。
「私、占いに来たわけじゃないんです。私は人づてにあなたが何かと交信できると聞いてとても興味を持ちました。実は・・」
「すべてお見通しだから何も言わなくていい。あんたが知りたいのは「どれだけ離れていてもどんなにあえなくても気持ちが変わらないからここにいるの。だから待っていてもいいんだよね。」誰が誰にそういうことを言っているのかということなんだろう?」
久美はびっくりするほど驚いた。まるで自分の思想の中を隠しカメラで見られているような気がしたのだった。久美は何も言わずにベールの女性を見つめていた。女性は目をつぶり本当に何者かと交信しているみたいにぶつぶつつぶやいている。
「近いうちにあんたにそのメッセージの重要人物が現れるだろう。どんな人なのかはわからない。時代を超えて人の姿が代わっているからだ。しかしあんたにもその相手にもはっきりとお互いが求めていたものだとすぐにわかる。だからあんたは黙って受け入れればいい。」
「近いうちっていつですか?受け入れればいいって相手のいいなりになればいいってこと?」
「相手がリードをしてくれるってことさ。近いうちは近いうちだ。誰にもいつその日がくるかなんてわかりはせぬよ。」
「その人は誰にのほうなんですか?誰がのほうなんですか?」
「それも相手が話し出す。あんたは黙って聞いていればいい。これ以上他人が口を挟める状況じゃない。」
「何故こんなふうになったのかもその人の会話の中に答えがあるっていうんですか?」
女性は頷いた。「あんたの変化が始まるときだ。さあ、それに向かって準備をしなさい。」そういうと女性は久美を邪険にして追い払った。
仕方がなく久美は駅に向かって歩き始めたがもう一度確かめてみようと振り返りその女性を探した。しかし今までそこにいたはずの女性はいつの間にか姿を消していた。占うために必要な道具、テーブルや椅子などもなくなっていた。
(私を待っていた?必要な人の前にしか姿を現さないの?彼女は一体誰なんだろう?)
久美は自分の中から寒気を覚え縮こまると駅に向かって歩き始めた。
(今日、今夜解決したかったけれど考えてみれば解決できるわけなかったのよね。)沈んだ気持ちで根岸線に乗り夜の横浜を電車の車窓から眺めていた。
「あんたの変化が始まるときだ。」これはいったいどういった意味なんだろう?
横浜駅で東横線に乗り換えるためにホームに出た久美はその何かをキャッチした。きょろきょろと見回すが誰も怪しい人などいない。自分の行動のほうが帰って一番怪しい。向かいのホーム・京浜急行電鉄に光が見えた久美は電車がホームから発車するまで待っていた。
久美はその人しかすでに見えなかった。そして肩を震わせて目に涙をいっぱいためた。


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