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作品名:killer site 作者:chihiro

第4回 次々と起こるお見合い
千尋は時間のあるときにはニュースに目を通した。日本はフランスと違って二十四時間放映しているニュース番組はない。だからネットでできる限りのニュース番組のアプリをとり事件が起きたら着信知らせを取り付けた。
注意してみてみると国内でも実にさまざまなケースが事件として起こっていた。
クラスメート、同僚、家族、恋人どれも偶然かのように見えるが一度出会い系殺人のサイトなどを知ってしまうとみんながみんなそうなのではないかと疑ってしまうのだ。
「千尋さん、あまり根をつめないほうがいいですよ。」見かねた鈴木は千尋に言った。
「え、ああ。私の悪い癖なんです。夢中になるとご飯も睡眠も飛ばしてしまう。休むことも仕事のうちだって何度フランスで言われたか。」
「確かに休みも大事ですよね。何だって国際警察と一緒にいた人が日本で?」
「一緒にいただけで私は警察の資格も免許もありませんでした。素人探偵だったんですよ。恋人と出かけた先々で犯人に顔を覚えられて、よせばいいのに事件に顔を突っ込んで居場所を探すために行動したらいつの間にか彼らと世界中を旅するようになった。こんな私でも情報員として残してくれたんです。さすがに疲れてしまって帰国する決意固めたけれど結局忘れられなくて。恋人が私の腕の中で亡くなってしまったときに生きろって言う言葉が最後だったんです。だから生と死の間が一番生きているって感じがするのではないかなと。」
「千尋さんは生きることにとても正直なんですね。」
「そう?」
「自殺を考える人にその精神を与えたいくらいですよ。」
「私だって自殺を考えたことあったわ。今生きているのは彼のおかげ。だからこのキラーサイトみたいなところに登録して自分に決着をつけようとする人の気持ちをわからないわけではないの。だから何とかしてあげたいって思うの。おせっかい好きなおばさんの心理なのかもしれないわ。」千尋はそういうと悲しく笑った。

そこへ桜子がいつもの顔つきで部屋に入ってきた。
「千尋さん、今キラーサイトを開いているのだったら品川区の赤根百合の検索できるかしら?」
千尋は直ちに検索した。
「えっと彼女が登録したのは今朝ですね。もう実行されてしまったんですか?」
「ええ、こんなにも早いと太刀打ちできないわ。赤根百合はなんとプロフィールに書いてある?」
「人生に疲れました。よろしくお願いします。これだけですね。殺され方は何も書いてません。彼女は十万円を支払ってます。」
「みんな金持ちなんだな。わけがわからないサイトなんかに大金を支払うなんて。」イチローはそういったが桜子の冷たい視線を浴びてそれ以上は言わなかった。
「振込先銀行はどこになっている?」
「シティバンク渋谷支店。振込み先名義はチュイオコーポレーション。」
「やはり外資系バンクね。そのチュイオコーポレーションはどんな会社?」
「ダミー会社です。会社登録はされていません。」
「住所もわからない?」桜子は千尋の浮かない顔を見てがっかり来た。
「今はネットでも取引ができるから住所を限定できるとは限らないわね。渋谷を中心に半径五百メートルの事務所貸しビルを洗って。」
「あの、いいですか?ダミーだったら貸しビルよりも個人でやっている可能性が高いと思います。」千尋は桜子の険しい顔に少しだけ恐れをなして言った。
「個人をどうやって調べるの?何万人っているのよ。一般市民にいたとしてもパソコンのスキルがどのくらいあるのかなどわからない。」
「パソコンがあるからこそわかるんです。IPアドレスは必ずどんなサイトにも出ます。それさえわかれば少なくてもどんなパソコンから発信されているのかはわかると思います。」
桜子はしばらく千尋を見つめながら黙っていた。
「わかったわ。IPアドレスを検索して住所を割り出して頂戴。その間はほかのものたちはシティバンクへの聞き込み、赤根百合の検証を急いで。」
桜子の鶴の一声で一同はいっせいに動き出した。

IPアドレス検証は時間がかからなかった。そしてその住所に千尋は驚いた。みんな出払った後で誰も部屋にはいなかった。千尋はまず桜子に電話を入れた。
「舞浜さん、IPアドレスの住所がわかりました。」
「どこ?」
「シティバンク渋谷支店。」
「何ですって?」
「架空の会社を使って愉快犯みたいなことをしている人間はシティバンクに勤務している。」
「わかったわ。イチロー君がシティバンクに行っているから連絡を取ってみる。あなたはシティバンクの渋谷支店に勤めている銀行員のリストを調べて頂戴。幹部クラスがいいわね。」
「わかりました。」
千尋は何でもビジネスにしてしまう日本のやり方にうんざりしていた。いや、日本だけではない。自分が知らないだけで世界中どんな方法で商売をしようかと考えている人が多いのだ。しかし人の命さえもビジネスにしてしまうとは。この地球はいったいどこに進むのだろうと考えた。銀行員のリストはたいして時間がかからなかった。シティバンク全体だったら大人数だろうが一支店だけだったらたいしたことはない。五人の幹部の名前が浮き彫りにされた。
桑田真一、五十六歳。住所・目黒区田園調布。妻、子供二人。
真田しのぶ、三十三歳。住所・品川区品川。独身。
平岡義之、四十二歳。住所・川崎市中原区新丸子。内縁の妻あり。
柏田隆弘、二十七歳。住所・世田谷区下北沢。独身。
兼田由、六十歳。住所・大田区蒲田。独身。
千尋は五名のファイルを鈴木イチローの携帯にファイルとして送った。

画面を見ながら千尋は加害者としてこのサイトに登録するもののことを考えた。今のままではサイトに問題があるとして加害者を注意して探していない。
(どんな気持ちで加害者はこのサイトに登録するのだろう?)千尋は迷った挙句キラーサイトに未来の被害者として登録することにした。
「生きている意味がわからなくなりました。私が愛した人には愛されない悲しい現実から逃れたい。よろしくお願いします。」
住所を自宅にした千尋はキラーサイトのデーターが入っている仕事場のパソコンでどう変化するのかを見ていた。

そのころシティバンク渋谷支店で鈴木イチローは一番若い柏田隆弘と話し合いをしていた。
千尋からもらったファイルには幹部にキラーサイトの立ち上げ者がいるという。うかつなことは話せなかった。
「貴社に取引先銀行としてお願いする場合はどうするんですかね?」
「規定の書類と申込書に書き込めば誰でもできますよ。」
「その人の支払い能力など調べたりしないんですか?」
「もちろん調べます。それが決まりですから。しかし実際のところ多額の借金をしていなければ簡単に検査は通ります。」
「外資系の銀行だからやはり外資系の顧客が多いのでしょうか?」
「そんなこともありませんよ。今はどんな産業も国外とのつながりは少なからずありますからね。個人客にしてみても旅行などで海外に出向くものが多い。外資系の銀行ではなくても海外部門は避けられないでしょう。これから会議がありますのでもういいですか?」
「あ、お手数かけました。また聞きたいことがあるかもしれませんのでそのときはよろしく。」
イチローはその場は速やかに銀行を出た。警察の仕事は疑うことから始まるが何もかもが灰色すぎてどこから手をつけていいのかわからない雰囲気を柏田から受けた。外に出ると先ほどまで晴れていた東京の空が灰色に変わっていた。イチローは今度の事件みたいだと思った。


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