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作品名:クリスマスに生まれて 作者:chihiro

第8回 黒い影

「マジ?いや、本当ですか?」
「仕事の話に冗談なんか言わないわ。双子の片割れがいるのよ。それも四人も!そしてその隠れていた四人はなぜか教会関係者。青山、横浜山手、目黒、田園調布。どの位置からも渋谷には出ようと思えば出られるわ。そして・・」
「そして?」
「パーティにいた隠れた四人の片割れ、チェックが必要ね。それとまるっきり脈絡がない貸しホールの主人。」
「僕は真美さんとリカさんの護衛を終了して捜査に加わるんですか?」
「まだ護衛していて。」
「あ、それと今まで真美さんと話をしていたんですけれど犯人は聖書にこだわっているらしいんです。真美さんが新旧聖書を取り寄せたので護衛かたがた調べたいと思います。」
「そう、わかったわ。ヒントが載っているかもしれない聖書を調べるのも悪くないわね。でも充分注意して。」
「わかりました。」そういうと鈴木は桜子との会話を終了した。
「何かわかったんですか?」真美は目を輝かせて鈴木に聞いた。
「ええ、やはり八人ではなかった。十二人だったということです。そしてあなた方が教会で見たり話をしたりした人もこの事件に係わり合いがある可能性が高いという話です。」
「道理でどこかで見たことがあるような顔だと思っていた。双子だったらどちらかにすれ違っても親しい人でもわからないわね。」リカは興奮気味の口調で言った。
「その人たちの役割って何なんでしょう。最後の晩餐でたとえるならば裏切り者?それをお膳立てしたのは・・」
「ねえ、クリスティーナが殺された後にお膳立てしたのは春人と辰夫だって言ってたわよね。それって間違いなのでは?」リカはそのときを思い出しながら言った。
「真の主催者は違うっていいたいのね。でも彼らを主催者にさせようと仕向ければ無理な話ではないわ。世間はクリスマス一色、さびしい者同士集まって何かイベントをしたい。それは私たちだって考えていたでしょう?貸しホールを借りるにしても料理の注文をするのも彼らが考えたというように仕向ければ。」
「仕向けるって?」
「別に暗示をかけるとかじゃないですよ。何でもビジネス化してしまう、それが可能な日本の現在の社会で少し小耳に挟んであげればほとんどの人は乗ってくると思うんです。春人さんと辰夫さんがどんな人なのかはわかりませんが彼らの目のつくところにそのホール、料理をさらしておけばその通りに動くはず。」
「今のところ料理は何も関係なさそうだ。鑑識の結果、クリスティーナが食べたサーモンのホイップ添えにだけ青酸カリがついていた。」
「それって実は私が食べるはずだったものですよね。なぜ私ではなくクリスティーナになったか・・」
「そのときどんな状況だったか思い出せない?」リカは真美の顔を覗き込むようにして言った。
「うーん、どんなだったかな。場に慣れていなくて一人で心細かったからリカを探しにいったのかも。それでなければリカの好きそうな食べ物があったからそれを伝えにいったのかも。でもその後なぜ探しに行くのをやめてしまったんだろう。」
「それはクリスティーナさんが殺されてホールの雰囲気が違ったからでは?」鈴木は予想していたかの問いかけに即答した。
「そうそう、普通のことを考えている時間などないくらいに周りに緊張感が走ってそれで今まで忘れていたのかも知れません。」
「真美さんが食べ物を取ってからリカさんを探しに行くまでそのお皿は自分の手に持っていたんですか?」
「うーん、それも覚えてない。でも青酸カリはそれしか塗っていなかったんでしょう?だったら私が皿をテーブルに置いてその隙に・・」
「それもつじつまが合わないのでは?だってそもそもなぜクリスティーナがそれを食べなければならなかったの?どうやって誘導されたの?私と同じように携帯にメッセが送られてきたのかしら?そうだとしたら犯人はどうやって私たちの番号を知っているの?」
リカの発言で三人はそれぞれ考えに集中するために沈黙になった。
「犯人探しは警察に任せるとして私は聖書をおさらいするわ。聖書にヒントが書いてある気がするの。」
「私は真美より聖書のこと知らないから手伝うことができないわ。」リカは申し訳なさそうに言った。
「大丈夫よ。まだリカの肩が完治したわけじゃないし窓の近くには寄らないで好きなことをしていて。」
「この家も狙われているってこと?」
真美はうなずいていった。「目的はわからないけれどターゲットを必ず仕留めると思うの。だからこそ今回はチャンスでもある。」
「私を囮にして犯人を捕まえる?私の命が犯人捕獲に役立ってくれれば言うことないわ。」リカははしゃいでいったがどこか影があるように真美は感じた。
「僕が二人を守りますから。非力ですがそれだけは保障します。」
「おしゃべりはそのくらいにして聖書を片付けましょう。どちらも分厚いから今からはじめても遅くないくらいだわ。」
「私はお茶入れたり食事作ったりするわ。」


夕方のラッシュで首都高は混んでいた。イサムは車の中で自分で作った楽曲を聴いていたがラジオに切り替えた。日本のポップとニュースの番組で懐かしい八十年代の日本ポップが流れていた。イサムは営業マンで十八時を過ぎているのにまだ仕事が終わりになったわけではなかった。
(この分だと下を走ったほうが速いかな?)渋滞の首都高を三軒茶屋で乗り捨てて神泉町まで行き旧山手通りに次のアポイントの約束場所がある。車に備え付けている時計を見てイサムは約束の時間に間に合いそうだと思った。
突然天候が変わり雨が降り出した。かすかだが雷も響いている。
(冬に雷って初めてじゃないのか?)
イサムはそう思いながらも車の中にいれば安全だと言い聞かせた。先ほどからラジオの電波が悪くないか起こりそうな予感がしたからだ。
(俺の番じゃない。まだ一人俺の前にいたはずだ。まったく刑事のせいでいらぬ心配をさせやがって・・だから警察は)
イサムはその後の思考を続けることは出来なかった。
車は十字路の脇の電柱に当たってしばらくの間クラクションが当たり一帯に響いた。


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