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作品名:クリスマスに生まれて 作者:chihiro

第4回 最後の晩餐
渋谷警察捜査一課

舞浜桜子は自分のデスクでA4の白紙に書いたものを見つめながらボールペンをもてあましていた。今までの調べでクリスマスイブからクリスマスにかけての夜に渋谷の貸しホールにいた人物の簡単な略歴は手元にある。全員がクリスマス生まれだということも偶然だがほかに共通点があるような気がしたのだ。しかしそれが見つからない。
「舞浜さん、クリスマスということでキリスト教のなにかじゃないんですか?」同じ一課の鈴木一郎が紙を見ながら言った。「自分も名前が有名人と同じだから経験がありますが、なにかと誰かと一緒だとそれに興味が惹かれるものです。」
「イチロー君もイチローのこと調べたの?」
「ええ、もちろんです。だってあれだけ有名になった人ですから。出来るなら違う名前であって欲しかったって思いますよ。女性は結婚して苗字を変えることが出来るけれど男性は一生そのままですからね。いやでも意識します。それと同じように男性でも女性でも誕生日はどうやっても変えることは出来ません。だから意識する。それは一生変わらない。」
「キリストの教えでなにが一番学びやすいのかな?」
「いろいろとありますが有名どころから。たとえば最後の晩餐とか。これは絵画でもあるし、題材に取り上げられているし、それに人数こそ違えど今回の状況は最後の晩餐に似ている。」
「あら、そうなの?」
「最後の晩餐はキリストと十二人の使途が晩餐をしてキリストはそこに裏切りが出ることを知っている。でもそれは避けられない運命としてそれを受け入れる。」
「イチロー君詳しいのね。でも助かったわ。その話からなにかヒントを得たような気がする。どこに事件の鍵が転がっているかわからないから博学じゃないといけないわね。」
「たまたまですよ。現に舞浜さんだってその場でアルファベットに治して関連性を充てたじゃないですか。あれは思い付きですか?」
「あの中には両親が日本人じゃない人もいたからね。ローマ字で名前を書いたらどうなるだろうって思ったの。本当に偶然よ。でもそのおかげで事件の真相に迫ることが出来たわ。まだ完全ではないけど。」
「もし、最後の晩餐通りになるならば使途は十二人のはず。四人足りないわ。」
「そこらへんはあまり深く考えなくてもいいのでは?この企画を思いついた辰夫と春人でしたっけ?見つけられなかったのだと思いますよ。それに自分が考えるには彼らは被害者になる可能性はあるけれど決して加害者側ではないなって思うんです。」
「思い込みは間違った判断を下して捜査の邪魔をするわ。」
「わかってます。でも本当の黒幕は別にいるような気がして。」
「黒幕?彼らのほかにあの場所にいた人間?」
「もしくはそのときの状況を知っている人間。たとえば貸しホールの責任者とか、料理を提供した会社とか。」
「なるほど。その場所にいたからというのは固定観念でそれこそ間違った判断を下しそうね。」
「イチロー君は料理を提供した会社を調べてみてくれる?私は貸しホールの責任者に会いに行くわ。」
「わかりました。」
舞浜桜子は再び一人になるとインターネットで最後の晩餐についてざっと流し目で読んだ。
要約すると鈴木が言っていたことと同じだった。パソコンの時間を見ると桜子は貸しホールの責任者に会うためにパソコンの蓋を閉じた。

問題の渋谷の貸しホールは今では期間限定でピカソの絵画展が開かれていた。桜子はこの偶然を心の中で驚いた。そして貸しホールの主は何か関係があるのではないかと疑った。
貸しホールの主は四十代の男性で眼鏡の奥に計算的なものがあると桜子は見た。
「クリスマスイブにパーティのために借りてきた人について話を聞きたいのですが。」
「おかげさまで立地的な条件からうちのホールはいつも予定が詰まっています。クリスマスイブに借りた人も私ではなく秘書がすべて代行したんですよ。」
「あなたは一切関与しなかったと?」
「一応報告は受けますよ。しかし私が口を出すことはめったにありませんね。」
「依頼の流れはどうなっているんですか?」
「電話、メール、うちにもサイトがあるんでそこで申し込みを書いてもらいます。空きがないときはそこで断りのメールを出してます。空きがあった場合は値段を表示して相手がそれに承諾すれば商談成立。私が関与するのは空きがあった場合に値段を表示する前でしょうかね。」
「複数の申請があった場合は?」
「私が選択します。今回のイブも複数の申請がありました。ま、時期が時期ですから。パーティにしたのは申請の中から一番いいなと思ったからです。」
「パーティ中に中を覗いたりしますか?」
「今回の場合は若いといっても自分の世代ですからね。パーティが始まる前に覗きましたよ。誰とも会話はしませんでしたが。先ほども言ったように同じ世代だったら善も悪もわかっていると思ったからですよ。」
「そうですか。今は絵画なんですね。」
「ああ、一月七日まで絵画展を持ってきたのは個人的です。」
「絵画がお好きなんですか?」
「いや、キリストに興味があるんです。今では仕事が忙しくて教会には行ってませんが、昔はキリスト教徒だったんですよ。」
「そうなんですか。」
「だからこの時期は必ず絵画を持ってきます。すいませんがこれから用事がありましてね。出かけなければならない。」
「あ、わかりました。お時間取らせてありがとうございます。」

桜子は何か物足りないような気がしたがあきらめて事務室を去った。
ちょうどそのころ貸しホールでは春人が最後の晩餐の絵画の前で苦しんでいた。
「救急車を呼べ。人が苦しんでるぞ。」
春人の顔は見る見るうちに真っ白になっていく。
桜子は入り口付近が騒がしいことに何事かと中に入ってみた。
「中が騒がしいようだけれど何かあったんですか?」桜子は受付で尋ねた。
「人が死んだぞ!」そんな叫び声を聞いて受付で警察手帳を見せ中に入った。
最後の晩餐の絵画の前でパーティにいた中の一人である春人が死んでいた。
「これは・・」背筋が寒くなるのを抑えながら桜子は周りにいるものに言った。
「その男性に障らないで。そして誰もここからしばらくでないで。」
「あんたは誰なんだね?」
「私は渋谷警察捜査第一課の舞浜桜子。この事件は私が管理します。」


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