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作品名:『あたりまえの日常』 作者:まさ

第2回 2 コンタクト
次の日の朝、美香より先に学校に到着した千夏は、席に着き、また少し緊張を感じた。
慣れていない学校での朝に、一人席に座るのは緊張するものだ。

”落ち着け……落ち着け……”と心の中で、何度も一人繰り返していた。

「お〜〜は〜〜よ!!!!!」

後ろから声がした。
この元気な声の主は、美香だとすぐに気付いた。

「あ。おはよう。朝から元気がいいねぇ。美香は。」
と言い、ふと美香を見ると、美香は目を輝かせ、こちらを見ていた。

”え?なに?”と思っていると、

「美香って呼んでくれたぁ〜!!!」

と言って、美香は抱きついてきた。

「あ〜そっか。昨日は一回も名前呼ばなかったもんね。お〜ヨシヨシ。イイコイイコ。」
と言って、美香の頭を撫でた。

「うんうん!」
と、美香は猫の様に千夏の胸で甘えていた。

そんな感じで、朝の時間を過ごし、ホームルームが始まった。
ふと、周りを見渡すと、やはり空席が2つあった。

”今日も来てないんだ。”と思ったが、別に気にはしなかった。

五十嵐は、またあの適当な出席を取り終え、教室を出ようとした。
その時、
”ガラガラガラ”
と、前の扉が開いた。

千夏は、”来た。”と直感で思った。

やはり、来た。扉を開けたのは友喜だった。



五十嵐と目の合った友喜は、昨日と同じように堂々と言った。

「どうも。」

五十嵐は、呆れた様子で、

「君は時間内にこれないのかい?」

と、友喜に言った。
友喜は当然の如く、

「そうだな。今は無理とでも言っておこう。」

と答えた。

”あなたには、無理じゃなくなる日が来るのかい?”
と、千夏は心の中でつっこんだ。

一時、五十嵐と友喜の会話が続き、友喜は席に着いた。

その日の午後、千夏は学校を無事に終え帰宅しようとしていた。
校門を入ってすぐのところに、自転車置き場がある。
学校まで自転車に乗って来る生徒は、そこに自転車をとめることになっている。

その横を通り過ぎる時に、自転車置き場の方から声がした。

「おい。転校生。」

”自分の事だ。”と、すぐに気付き、ふと横をみた。
そこに立っていたのは、友喜だった。

思っていたより早く来たコンタクトに、びっくりしながら千夏は答えた。

「な……なんですか?」

「俺、友喜。よろしく。友喜って呼んでくれ。」
と、友喜は自ら自己紹介をしてきた。

「え……あ……はい。アタシは近藤千夏です。よろしくお願いします。」
と、千夏は何故か敬語で答えた。

「これでジュース買ってきてくれないか?」
と、言いながら握りしめた手を差し出してきた。

”え?おごってくれるの?”と思いながら、思わず手を出してしまった。

友喜から受け取った物を見てみると、
何かの鍵だった。


「チャリはそこにあっから。」
と、言いながら1台の自転車を指差した。

「え?」
千夏は、どういう事かわからなかった。

「いや、だからジュース。もちろん千夏の分も買っていいから。」
と、堂々と千夏に言った。

”いやいやいやいや!パシリですか?!おごってくれるんじゃなかったんですか?!”
と心で思いながら、

「何で私が買ってこなきゃいけないんですか?」
と、友喜に言い返した。

友喜は”ん?”といった表情で、

「硬いことゆ〜なよ。ほら。頼んだぞ。」

と、言いながら、千夏の背中を押し、自転車まで誘導した。
それは、変な自転車だった。レトロ風な自転車と言うべきだろうか。

”ま。ジュースくらいいいか。次からは絡まれないようにしよう。”
と、思いながら自転車の鍵を開けた。

自動販売機の場所も知らないのに、自転車をこぎ始めた。

”あれ?自販機ってどこだ?”と、思い、ふと周りを見渡そうとしたら、

あった。

目の前に。


”ちっか!!!”
と、心の中でつっこんだ。

それは、自転車のあった場所から、10メートルと離れていない場所だった。

そこで、ジュースを適当に買った。
自分の分のジュースも。

もちろん、自分のお金で。

帰りは、友喜の所まで自転車を押して帰った。

自転車をとめ、友喜にジュースを手渡した。

「はい。」

「おう。」
友喜は、当たり前のように受け取った。

”ありがとうとか言えないのかよ。”
千夏は少しいらだちを覚えた。
でも、それも少しの我慢と思い、耐えた。

「千夏は、福岡から来たんだろ?」
友喜が話しかけて来た。

そうだ。何かが引っかかっていた。
”なぜいきなり名前で呼ばれているんだ。”
まずそこだ。
いくら抵抗はないとは言え、それは友人間での話し。
何のコンタクトもなしに、いきなり呼ばれるのはさすがに抵抗がある。
しかも、相手は男だ。

「どうした?」
何かを考えごとをしている千夏に、友喜は話掛けた。

「え。あ。いや。なんでもないです。はい。福岡から来ました。」

”まぁいいや”と、心の中で解決をして、千夏は答えた。

「そうか。福岡ってどういうとこ?いいとこ?」
更に友喜は質問をしてきた。

”そんなに聞いてどうすんだよ。”と、思いながら、
「はい。いい所ですよ。」
と、簡単に答えた。

「そうかそうか。」
と、友喜も簡単に答えた。

続けて、
「何でこっちに来たんだ?答えにくかったら答えなくていい。」
と、聞いてきた。

「別に特別な理由じゃないです。親の転勤でこっちに来ました。」

「そうか。じゃあ今親元から通ってんのか。」

「はい。」

「そうか。」

「はい。」

「家は近いのか?」

「そこそこ。」

「そうか。俺の家も近くだ。兄弟は?」

「いません。」

と、そっけない会話が一時続いた。
気付けば、友喜のジュースはなくなっていた。

缶をグシャっとつぶして、友喜は言った。
「これご馳走さま。俺、財布無くしてさ。金がなかったんだ。今度借りを返す。」

「いえ。結構です。それでは。」

と、言い残し、そそくさと自転車置き場を後にした。
”なんだよ。財布なくしてたのか。そうならそうと言えばいいじゃん。”
と、千夏は少し苛立ちを覚えた。

”アタシ、あいつ苦手だ。”

そう思った。


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