小説&まんが投稿
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:ヒサルキゲームの物語 作者:秋兎

第6回 case.1 相原アキラの場合4
 結局のところ、それは俺が危惧したとおりの結果になったと言えよう。天国か地獄かどちらかと聞かれたならば即答で地獄だと答えるね。さすがはジョーカー、死神が俺をせせら笑ってるぜ。
 何故、ここまで俺が暗澹たる気持ちに浸っているのかと言うと、それは忌々しいカードについて発した先生の一言にあった。いいか、一言だぞ? 皆の衆、落ち着いて聞いてくれたまえ。
「わからないわ……」
 意義あり。
 深柳の血の植物や、ヒサキの炎のパンチ(だったよな?)など、どこぞのゲームにでも出てきそうな能力を仲間A、B達はもらったというのにこの扱いはなんだ?
 これならばいっその事、君は主役なんだから剣一本で戦うのよん。頑張れ九州男児どどんがどんっ! とでも言われた方が遥かにマシだ。
 むしろ、そうであって欲しい。実際もってこれでは明らかに俺は戦いを傍観する立場に回る羽目になりそうである。
 みんなあいつは強敵だぞ、くれぐれも死なないように頑張ってくれ。俺は洗剤が切れそうだからマツキヨに行ってくるぜ。今日はポイントが二倍だしな。ああそれと、あんま服汚すなよな。この前のシミ、中々落ちなかったんだぜ。
 これはシャレにならん……。
 こんな炊事兼洗濯係りなんてあまりにリアルな妄想は慎むべきだったと頭を垂らすと、
「このケースは初めてなのよ。でもね、もしかしたらアキラ君へ何かしらの能力が渡ったのかもしれないの。そうだとしても、それがどんな力か私には知る術もないわ。ごめんなさいね……」
 そんな申し訳なさそうな顔をされては、さすがに二の句が継げない。
 ま、剣一筋で頑張る健気な勇者はその手のゲームじゃよく居るしな。
 だがそれでもさすがに――炎やらツタやら眩いばかりの非現実的な能力を目の当たりにすると相当にヘコむぜ。
 今になって気付かされるね。魔法の使えない理不尽な主人公の気持ちというものを。
「先生、そんな気にしないでください。剣さえあれば俺は十分です」
 ほんと言うと、俺の心の中は涙で大洪水です。
 そんな俺の気など知る由もなく、いや、知っていたとしても全力で無視をかますだろうヒサキは目を輝かせて、
「ねぇ! 次のコースって何!?」
 それに続いて、しばらく俯いていた深柳も顔をあげた。
「確か、それも僕達の力になるものだと言いましたね」
 先生の柔和な顔が俺たちを見渡す。
「……そうよ」
 若干、表情が険しくなると、
「私は小さな火を灯したに過ぎない。その大きな風である者たちを与えられた力で捕らえ、火をおおいに燃え上がらせる事を私は望みます。最初の試練、カガミの森へと向かいなさい」
「おおお」
 と、二人。
 あくまでゲームらしい内容に、俺はついさっきの落胆も忘れたね。まずは森のダンジョン……王道も王道だが、そういうストレートなゲーム好きだぜ。それから徐々にレベルを上げ、ついには難関とも呼ばれる未知の洞窟に進み、そこには男のロマン、そう――ドラゴンなんかもいたりして。くーっ! たまらねぇぜ。
 よし、それでは早速、初陣といこうではないか。
 森の場所? んなもん何処にあるのかなんぞ知らん。だが、道なき道をただ突き進むのみ!
「よーし、おめぇら。俺に続けぇ!」
 脇に置いてあった剣をどっこいせとばかりに肩に担ぎ、意気揚々と立ち上がろうとすると、深柳がジトっと横目で睨む。
「まさかその格好で行く気ではないだろうな……」
 冷静なツッコミに俺はしばし硬直した。さすがに短パン一丁はまずかったか。
 そしてやはり後ろから、
「バカなんだから」
 と当然のようにまた言われるわけである。


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 小説&まんが投稿屋 トップページ
アクセス: 50375