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作品名:ヒサルキゲームの物語 作者:秋兎

第2回 5/26 修正
「……うーむ」
 しかしながら、悲しきかな人間っつうものは好奇心にはそう簡単に打ち勝てないわけで。
 早速家に戻ると、俺は改めてそのゲームソフトに目を向けた。
「こんなゲームあったか?」
 ラベルにはタイトルが記名されてるのが普通なのだが真っ黒に塗り潰されていて読めん。まぁ、先ほど裏側に書かれていた『あるゲームの物語』が本来の名前なのだろう。
 だがそんなタイトル、聞いた覚えがない。ゲーム通を自負するこの俺がだ。
 そして困ったことにこれには説明書というものが付属されていないのだ。丸裸で降ってこられても、これではどう遊べばいいのかわからん。
 このカセットロム自体は、俺の愛用する新型携帯用ゲーム機のものなのだが。
 ふむ。
 しけった病み付きで有名のえびせんをパクつきながら、このゲームについて自作のパソコンで検索してみるが、カスリもしない。
 いや、一つだけあったというならば、それは発売中止となったソフトの一覧に名前が載っていただけであり、それならばこれはなんなのだという話になる。
 しかも空から降ってくるなど、到底ありえないことなのだ。
 だが、現実にそれは俺の手にある。これはいくらかミステリアスではないだろうか?
 それとも、財布の寒い俺への神様からの贈り物だと考えればいくらか納得がいくかもしれない。
 ありがとう神様。そして、次があるならばもっと俺にも分かるゲームを贈ってくれ。
 さて、どうしたものかね。腕を組み思案していると、
「おにーちゃーん! お風呂先入っていいよね? って、寝てるのかな」
 ノックもせずに俺の部屋に入ってきた失礼千万なこいつは我が妹である。
 名はサナ。
 あらかじめ言っておくが、世のあらぬ男性達が描く妹像とは正反対と断言しよう。
 真実の妹というものは、なんと言ったらいいだろうか。
 もし、俺と妹がコタツに入りながらテレビでも見てミカンを食べていたとしよう。
 そいでもって、ちょっと最後の一つを手に取ろうものなら、容赦なくコタツの中から俺の弱点であるくるぶしを狙った蹴りが連打される程ひどいものなのだ。
 きっと二十ヒットはくだらない……。
 我ながらもっと良い例えはなかったものだろうか。
 とにかく、俺が声を大にして言いたいことは、くれぐれも勘違いしないようにしてほしいということだ。そう、身を滅ぼすぞ、君達。
「よーく言うよ。この部屋にドアなんかないじゃん。それにここは、あ・た・しの部屋っ! おにーちゃんは仕方なく隅っこに住まわせてやってるだけなんだからっ。感謝してほしいくらいだもん! ふーんだっ」
 ほらな。
 ちなみに、こいつは茶のショートツインだけが特徴の天才的な凡人ぶりが魅力的なところである。たしか小七ぐらいであっただろうか。
「小七って何だよぅ、あたしは中一! てゆーか、それ褒めてないじゃん!」
 おお、そうか。無事に卒業できたんだな。俺はサナの頭をたまたまあった求人雑誌でポンッと叩き、
「てゆーかぁ、なんて口にするんじゃありません。もっと、おしとやかにしたほうがいいと思うぞ。この際、演技でもいい」
「ほへ?」
 妹は首をひねっていたが、しばらくしてハッと何かに気づいたような表情をした。
「もー! やだなぁ、お兄ちゃまったらぁ。やっぱし、女の子はおしとやかにしないといけないよねっ!」
 おい、ポーズを取るなポーズを。どこを向いてやがる。俺はこっちだ。前を向け。
「……もういい、さっさと風呂へでも何処へでも行ってくれ」
「はーいっ」
 狐みたいなポーズを取り、去っていくサナの後姿を見ながら、なるほどこれが殺意というものかと俺は深く感心した。
 しかし、これほど兄の威厳というものが無いとは悲しいものである……。
「やれやれまったく。これで邪魔者はいなくなったな」
 俺は気を取り直すと、意を決し、カセットをゲーム機に入れてみた。
 すんなり入ったところをみると、やはりこれはこのゲーム機のソフトらしい。
 さてさて。あとは電源を入れるだけなのだが、俺はいつもゲームをする前にやる事があるのだ。
 聞いて驚くな諸君。
 それは、ほとばしるほど熱き煎茶を入れ、手の中の小さな冒険に備えることなのである。
 ズズっと茶をすすることで身も心も熱くなれるのだ。
 そこ、かわいそうな人間を見るような目をしないでくれ。
 やがて、テーブルの上に湯気高々な煎茶がセットされ、
「そんじゃ、早速ぅ!」
 俺は高鳴る胸を押さえながら電源に手を伸ばした。カチッっとな。
「……」
 画面を食い入るように見るが、待てども一向に変化が表れない。 
 一度取り出し、カセットの端子に強く息を吹きかけ再チャレンジを試みる。
 だがそれでも無反応。
「念のためにゲーム機のほうも吹いとくか」
 それからあらゆる手段を持ち入り試してみるがどれも暖簾に腕押し、糠に釘、豆腐にかすがいってなもんだ。例え方がビミョウにずれているのはご愛嬌だ。
「ま、そりゃそうだよなぁ」
 やはり、拾い物などに期待してはいけないのか。
 すっかり意気消沈し、電源を消そうとしたその時、突如暗転した。
 ゲームの画面が?
 いやはや、それが俺の目の前が暗転したのだったからたまらない。


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